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魔女には記憶がない  作者:
第4章
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竜の籠と氷花の調べ 05

 


 少し驚いてラスを見たが、羽織っていたナイトガウンを脱ぐとブレンダに手渡す。いつも通り無表情ではあるが、怒っているわけではないので、大人しく暖かなガウンを受け取った。


「着陸場は一応外だ。着ておけ」

「ありがとう。ラスは寒くない?」

「まぁ、寒いのは慣れてる」


 もらった大きいガウンを羽織ると、元々羽織っていたストールはマフラーの様にラスが首に巻いてくれた。本人はカジュアルな服で少し寒そうに見える。薄着だと身体のラインがよくわかり、かなりガタイが良く見えた。旅を通して彼の過保護な性格を知ってきていたブレンダは、素直にお礼を言ってニコリと笑うと、だいぶ上にいるディエゴに続いて螺旋階段を登る。

 階段の上にも扉があり、ドラゴンが出入りできそうな小さい扉がいつくかついていた。外に出ると丸い着陸場がある広場に出る。風見鶏が幾つか設置されており、カラカラと音を立てて回っていた。冬の夜の寒さはお昼とは違いもはや痛いくらいだ。ティバルトはドラゴンを下ろして、ディエゴに家までの詳細を聞いている。

 ラスはブレンダの後から出てくると、ブレンダの横に立ち、腕を組んで2人の様子を見守っている。やはり薄着すぎるのか少し寒そうにしている事が気になり、巻いてもらったストールを外してラスのクビに巻いきつけた。断ろうとするラスを無視し、無理矢理巻くと、彼の腕に自身の腕を通す。ラスはギョッとしてブレンダを見た。


「寒いわ。くっついてればお互い暖かいでしょ」

「……」


 ラスは相変わらず驚いた表情をしていたが、特になにも言わずにそのままディエゴ達の方を見る。テクラードはディエゴの家を理解したのか、仕舞い込んでいた羽を広げると風に乗って飛びだす。


「それでは、気をつけて向かうんですよ」


 ティバルトはテクラードに手を振ると、ギャァとひと鳴きして雪の暗闇の中へと消えて行った。どうやら無事に手紙は出せたようだ。しばらく見送っていたが、寒さでくっついているブレンダ達を見たティバルトは、またヘラリと笑うと中に入る事にした。


 ***


「これで僕も晴れて仲間だね」


 ディエゴが小さく微笑みながらビーフシチューを頬張っている。ティバルトの奥さんが料理を準備して待っていてくれていて、ブレンダ達はありがたくいただいていた。室内に入ったからかラスは静かにブレンダの腕を離し彼女を席に着かせると、そそくさとティバルトの近くの席について地図を広げていた。彼は体温が高くとても暖かかったので、暖かさが離れた事に少し残念に思いつつご飯をいただく事にした。

 用意されていたビーフシチューは、煮込まれた野菜と分厚いお肉がほろほろとしていてとても美味しい。ティバルトとラスは、テーブルの地図を覗き込み明日のルートを話あっていた。


「ラスは口数が少ないから、ディエゴがいてくれて嬉しいな」

「僕もそんなに多くはないけど。世間話はある程度できるかも」


 モグモグとお肉を頬張るディエゴはご機嫌そうだ。初めて街の外に1人で出たからなのか、何をするにも楽しそうである。テーブルの向かいには、赤毛の優しそうな雰囲気のミアという女性が嬉しそうにディエゴを見ていた。ティバルトの奥さんで、ミディアムの髪がふわふわとしていて可愛らしい。


「ミアさん。お食事までご用意いただいて、ありがとうございます」

「全然!ゆっくりしてってね。夫と2人でこの辺鄙なところにいると変わり映えがなくて……お客さんなんてあまり来ないから嬉しいわ」

「シチュー美味しいでふ」


 モゴモゴとビーフシチューを口に入れながら答えたディエゴに、ニコニコしながらミアはおかわりはいるかと彼に聞いていた。もうほぼ平らげていたディエゴは大きく頷くとミアは嬉しそうにおかわりをよそって持ってくる。


「はー、子供って可愛い。私も早く欲しいんだけど中々ねぇ。まぁ2人の時間も楽しいのだけれど」


 頬に手を当てて優しい表情でディエゴを見るミアの笑顔はどことなくティバルトに似ている。夫婦は似ると言うか、2人とも話し方や表情がそっくりで、ブレンダもつられて笑顔になった。ミアはブレンダの方を見ると、視線が耳に移ったのが分かる。


「あら、素敵なピアスね。もしかして魔法石?」

「そ、そうです。とても大事なもので」


 そっと耳に触れると石がぶつかり合う音が聞こえる。ミアの切れ長の目が嬉しそうに細まった。


「私も結婚指輪にも魔法石が入ってるわ。つけてるだけですごく安心するわよね」

「そうですね。……このピアス、外すと凄く不安になってしまって。そのような物なんでしょうか?」


 ミアの薬指には赤色の石がはめられている。同じ様に魔法石のアクセサリーを身につけている人を初めてみたブレンダは、恐る恐る質問してみた。ミアは少し不思議そうな顔をしていたが、またニコリと笑った。


「魔法石は身につけている時間が長ければ長いほど、身体の一部として馴染む石って聞くわね。私もずっと身につけてるから外すと何だかソワソワするのよ。面白いわよね」

「身につけている時間ですか」


 またブレンダは耳のピアスに触れた。ミアは外すとソワソワすると言っていたが、ブレンダはこのピアスを外すと、身が引き裂かれるほどの寂しさを感じていた。もしかしたら幼い頃から身につけている物なのかもしれない。ミアは思ったよりも、魔法石について知識がある様で、ブレンダは続けて質問する事にした。


「私も詳しいってほどじゃ無いんだけどね。そうねぇ、じゃあそこに立って貰える?ある程度使い方がわかった方が役に立つわよね」


 ミアとブレンダはダイニングの横に向かい合うように立った。ラス達も2人が何か始めた事が気になるのか、視線を彼女達に向けている。ミアはにっこりと笑うとブレンダの両手をとる。彼女の手はとても安心する暖かさで少し緊張していたブレンダをホッとさせた。



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