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魔女には記憶がない  作者:
第4章
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竜の籠と氷花の調べ 04



 ブレンダは暖かい湯に浸かって高い天井をぼんやりと眺めていた。まさかこの旅の間に湯に浸かれるとは思っておらず、凍えた体がじんわりと暖まる感覚にホッと息を吐く。

 砦に入った後、ティバルトはすぐに湯に入ることを勧めてくれた。ブレンダ達は皆凍え切っていたのでありがたく使わせてもらっている。一行を雪まみれにしたラオネンはというと、基本自由にさせているらしく、お礼の餌をたらふく食べると夜の闇の中へ飛び立っていった。明日以降は引き続き徒歩で採取の旅を続けることになりそうだ。

 今日はラーミンの根を手に入れた。5つ必要な素材のうち2つ目だ。思ったよりは順調だと思う。ラスが言うにはまだ簡単な素材の2つらしいので、明日以降はもっと過酷になるのはずだ。チラリと右腕の傷を確認したが相変わらず青緑色に変色していたが、傷口は若干塞がっているようだった。


 十分身体が温まったので風呂から上がり廊下にでた。廊下は外ほどではないが、石造りの建物のためかひんやりとしている。昔からある建物を再利用しているらしく、所々修復したような形跡があったが、重厚な作りの建物が珍しくキョロキョロと見回していた。先ほど案内された客間へと向かうため廊下を進んでいたが、階段前を通る際に何かバタバタと暴れるような音が聞こえ階段上へと目を向ける。階段は暗かったが、ぼんやりと木の両開きの扉があるのが見える。じっと見つめていると、またバタバタと音が聞こえた。


  (......だれかいるのかしら。)


 ブレンダは好奇心からゆっくりと長い階段を登っていった。扉の前に立つと隙間から冷たい空気が流れ出ていることに気づく。肩にかけていたストールを体に巻き直し、扉に耳を当てると息を殺し耳を攲てた。すると、キュルキュル、バタバタと複数のいろんな音が聞こえてきた。どうやら生き物がいるようだ。ここまで好奇心で来たが、流石に人の家を勝手に散策するのはどうだろうと、腕を組み扉の前で悩んでいれば、肩にポンと何かが触れる。


「ひゃ!」

「あ、すみません!驚かせましたか?」


 ブレンダは飛び上がり慌てて振り向けば、ヘラリと笑ったティバルトが立っていた。ブレンダは人が後ろに立っていることに気づいておらず、早くなった鼓動を落ち着かせるために胸に手を当てて彼を見やる。


「す、すみません。この扉から物音がして気になって」

「あは、結構音が響きますもんね。気になってしまうのもわかります」


 またふにゃっと笑うティバルトにブレンダも苦笑いをする。彼は暖かそうな格好をして重そうな箱を持っていた。これから外でも出るのだろうかと不思議な顔をしていれば、ふと後ろにまた人がいることに気づいた。一歩横にずれて顔を覗けば、ディエコが手紙を持って立っており、その後ろにはラスがいた。彼らは風呂上がりでラフな格好をしており、ラスは素顔がよく見えて爽やかな感じだ。


「あれ、2人とも、もうお風呂は出たのね」

「ちょうどいいですね。ブレンダさんも一緒にいらっしゃってください」

「え、あの、どちらに?」


 すこし困惑しながら質問すると、ティバルトは大きい扉をチラリと見てニコリと笑う。ラスがずいっと彼とブレンダの間に入ってきたと思えば重い扉をゆっくりと開けた。中は小さな部屋になっており、幾つもの四角い引き出しが壁に配置されていた。その奥にまた扉がありラスが持っていた鍵で開けている。


「ここの引き出しには配達予定の手紙や荷物をしまっているんですよ」

「手紙?あ、そういえばラスが手紙を出せって」

「手紙はさっき書いたよ」


 風呂上がりで血色の良くなった顔と少しボサボサの髪のディエゴが、分厚めの手紙をブレンダに見せる。男子組は先に風呂から出た後、ブレンダを待っている間に書いたようだ。少し笑って乾き切っていない鳶色の髪の毛をサラリと撫でると、ディエゴは嬉しいような恥ずかしいような複雑な表情をする。

 ラスが鍵をあけて扉を開く。ギャアギャアと何かが鳴き叫ぶ声が聞こえ、ブレンダは慎重に近づいた。扉の先は丸い部屋で真ん中には螺旋階段があった。壁側には幾つもの扉やカゴが配置されており、そこには紫色の毛をもつ何かが蠢いていた。いくつかの扉の隙間からは、トカゲのような金色の瞳がこちらの様子を窺っている。部屋の奥には暖炉があり、パチパチと音を立てて部屋を暖かくしてくれていた。


「テクラードですよ。どの子に運んでもらいましょうか」

「今すぐ飛んでくれそうな元気そうな奴はいるか」

「それだとこの子とかですかね」


 ティバルトは持っていた重そうな箱を机に置くと、暖炉横に設置されていたカゴにいるドラゴンの背中を撫でた。ピョコと頭をあげたドラゴンは、金色の垂れ目の瞳をティバルトへ向けるとカゴからのそのそと体を出し、小さな羽を羽ばたかせ近くの机へと着陸する。ドラゴンは濃い紫の毛と水色の背びれが生えており、額には長さの違う黄土色の角が2本生えていた。角の横には耳が生えており時々ぴこぴこと動かし、ティバルトが置いた箱に近づくとガリガリと引っ掻いている。


「わぁ……この子が手紙を運んでくれるの?」

「そうですよ。あれ、初めて見ますか?うちの国では主流の生き物ですけどね」


 ティバルトは持ってきた箱を開けると、干し肉を取り出し机の上のドラゴンに与えている。他のドラゴンがご飯に気付き、ジタバタし始めたのでみんなで手分けして干し肉を配った。ドラゴン達はトカゲのような顔をしており懸命に干し肉を齧る姿が可愛らしい。机のドラゴンが干し肉を平らげると、ティバルトが持っできた箱付きベルトを背中に取り付ける。ディエゴの持っていた手紙を受け取ると箱に入れて、ドラゴンを小脇にかかえた。


「螺旋階段の上に着陸場があるので上にいきましょうか」


 大人しく小脇に抱えられているドラゴンを連れて螺旋階段を上がる彼にディエゴが続いた。ドラゴンはかなり尾が長く、引き摺らないようにディエゴが尻尾を持っている。ブレンダは20匹以上居そうなドラゴンが干し肉を噛んでいる音を聞きながら階段を登ろうとしたが、ラスが手を出して引き止めてきた。



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