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魔女には記憶がない  作者:
第2章
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雪の町で調べごと 04

 


「待って!ブレンダ、やっぱりピアスは手放すべきじゃないと思うの。一番思入れが強いんだし大切に持っておくべきよ。他に代わりになるものがあればそれにすればいいじゃない。まだ時間はあるんだし査定は無料なんだから!」


 息巻くルアーナにブレンダは目を瞬かせ、ミゲルはとても嫌そうな顔をしてピアスを持っていた。無理矢理ブレンダをカウンターチェアに座らせると荷物を出せと詰め寄って来る。立ち上がっていたミゲルも席につかせルアーナはブレンダの荷物を物色し始めた。


「困った時は頼れる人に頼って良いんだからね。しばらく私の家にいればお金なんてすぐ必要なわけじゃないんだし、今ブレンダにとって一番大切なものをこずるいミゲルに預けるなんてダメよ!」

「おい、どさくさに紛れて俺を貶すな」

「うーん、短刀にスキットルボトル、謎の木の実、お薬……はダメか。あ、あとは指輪もあったわね!」


 カウンターに荷物を並べるルアーナに驚いていたブレンダだったが彼女の気遣いに気持ちが温かくなった。昨晩、ピアスが大切な物かもしれないと話していたのを気にしてくれたのだろうか。ブレンダは小さく笑うとチェアに座りなおし、首から指輪を外してカウンターに置いた。ミゲルもピアスを名残惜しそうに置くと、ルアーナの指示通り大人しく椅子に座りなおす。


「ルアーナ、ありがとう。確かにちょっと焦りすぎてたかも。できれば他のも見てほしいわ」

「ミゲル、ケチろうとしたりなんかしたらすぐ分かるからね。ちゃんと見てよ」


 ブレンダの笑顔にルアーナは微笑み返すと、いつもの強気な表情でミゲルに忠告している。彼は大きくため息を吐き、また、面倒くさそうにブレンダの私物たちを一つ一つ査定し始めた。一通り見てくれたが、やはり価値がありそうなのはピアスと指輪だった。スキットルボトルもデザインがここら辺では珍しく引き取ってもらえそうだったが、ミゲルでも蓋を開けることができず引き取り不可となってしまった。


「手が悴んでたから開けれないと思ってたんだけど、そういう訳じゃないのね」

「でも中身はたっぷり入ってるわよ。錆びてるようにも見えないし。この若草とお花のデザイン可愛いのに。紋様みたいなのもオシャレだし」

「不良品なんじゃねぇのか?それよりどうすんだ。変な実も引き取れんし。短刀もデザインはいいが使い込まれてるし、そんなにいい価格はつけられない。やっぱりピアスが無難では?」


 よほどピアスが名残惜しいのかミゲルは口を尖らせ膨よかなお肉がついた顎をのカウンターに乗せていた。ルアーナはだらしのない彼の頭をペシッと一発叩いた後、頬に手を当てて悩み始め、彼は未だ寝癖のついた頭を痛そうに抑え、恨めしそうにルアーナを睨んでいた。


「うーん、あとは指輪か。かと言ってもこれも大切なものそうよね」

「そうね。何か手がかりになりそうだし」

「指輪はピアスの次に高価に買い取れるぞ。綺麗な状態だしこれも十分価値のある魔法石だ。だが名前が彫られているからなぁ……まぁもし店に出すとなったら加工して消せばいいんだけど」


 全て査定し終わってるミゲルは暇になったのか、カウンターに隠していたジャーキーを取り出し堂々と食べ始めていた。呆れたように彼を見つめるルアーナをチラリとブレンダは見ると気まずそうに口を開く。


「あの……ちなみに魔法石って一体どんな石なの?」

「え、おいおい。なんも知らんのにこんな価値のあるピアスを能天気につけてたのか!」

「ミゲル、あんた失礼よ。時間外営業しててもお客さんなんだから丁重に扱いなさいよね!まったく。私が教えてあげる。普通の宝石と違って何かしらの力がある石のことよ。私も普段使わないから詳しくはないんだけど」


 どうやら魔法石は身につける人に何か効果を与える石のようだ。種類によって違いはあるが、アクセサリーには守護の力や幸運の力などがかけられていることが多く、武器には戦闘や狩猟が有効に働くような石がつけられることが多いらしい。生活でも役に立つ魔法石があるが、魔力がないと調整が難しいらしくあまり一般的には利用はされないようだ。


「使う本人の魔力によって効果に違いが出るらしいが、なんせ一般人の連中は魔力がほとんどない奴が多いから効果があればラッキー程度の気休めだな。だがいい魔法石は違う!魔力を持たない者でも持ってるだけで効果は絶大だ。このピアスの魔法石は上等だからな!きっといい効果の魔法石に違いないぞ」

「でも私達ではどんな効果があるか調べられないじゃない。石の種類と色を見てざっくり判断するくらいでしょ。知り合いに魔導師でもいるの?」


 わははと上機嫌に笑うミゲルのジャーキーをルアーナがカウンターに肘をつきながらさりげなく摘んでいる。魔導師とは名前的に魔法を扱える人のことだろうかと思いながら、なんだかんだ仲が良い2人の話を黙って聞いていた。


「んなもん、つてなら探せばいくらでもあるぜ!首都に行けばちゃんと調べられるしな」

「うーん、でも私からしたら宝石も魔法石も同じかな。あ、でも魔法石の方が綺麗なのよ?光がなくても石の中が動いてるように見えるの。よーく見て見ると炎みたいに揺らめいてたり、雪解け水みたいにキラキラしてたり!」


 楽しそうに話すルアーナの言葉に興味が湧きカウンターにあるのピアスを覗いてみた。集中してじっくり見てみるとたしかにゆっくりと動いて見える。星が夜空に煌めくような光がエメラルドの中で揺らめいており、ずっと見ていると引き込まれそうだった。

 そっと手に持つとまた心が安らぐような心地になる。ざわついていた心が静かな草原のように落ち着いていくのがブレンダにはわかった。改めてピアスの心強さを感じたブレンダは改めて自分の荷物を確認する。

 指輪は唯一誰かとの繋がりを感じることが出来るものだと思っていたが、記憶がないためピアスの方が手放しがたいというのが本心だ。もしかしたらただ魔法石の力が自分の感情に影響を及ぼしているだけかもしれない。ブレンダは手に持ったピアスとカウンターに並べられている指輪を見比べ意を決したように2人を見た。



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