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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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何かを望んで

廻との話し合いが終わり…私は急いで家に帰宅した後…その日に着て行く服を選んでいた。親や周りには気付かれないように…素早く自室に籠り私はコーディネートを選ぶ。

「う〜ん…これも悪くないなぁ〜…あっでも廻とならコレでも良いかもっ!…あー!…悩むなぁ〜」

そう悩みながら当日のコーディネートと持っていく物をある程度準備していると…部屋のドアが軽く叩かれる音が響く。

「入ってるよぉ〜」

そう返事をすると…部屋ドアが「キィー…」と高い音を立て開かれる。まぁ…ノックした人が誰なのかは想像が付いていたが…。

「今日はウキウキした様な表情で帰ってきたね…琴。何かあった?」

そう言い入ってきた母に私は今日あった事を話す。それは廻から旅行に誘われた…という事だった。

「え?あ〜…今日さ廻に「旅行行かないか?」って誘われてさぁ〜嬉しくて…嬉し過ぎて即で行こうって返事しちゃった!だって…廻と居ると…楽しいし安心するもん!」

そう言うと母は微笑みを見せながら私にこう言葉をかける。

「そう…なんか琴が男の子となんかするってなった時にそんな表情を私に見せるの…何時ぶりなんだろうって…祐介君の事はまだ忘れてないと思う…いや忘れられない…か。でも前に進んでる琴を多分空から見守ってると思うから…精一杯楽しみな。じゃお母さん夕食作ってくる。」

そう言い母は私の部屋を後にする。その言葉に私が返事を返そうとした時…母はもう部屋の中には居なかった。

「…うん…精一杯楽しむよ。今って時を…。」

そう言うと…ふと思い出すのは中学二年生の夏だった。


あれは中学二年生の夏休み。私は祐との何気ない会話を思い出す。

「なぁ夏休みだな!どういう夏休みを過ごしたい?」

「え?そうだなぁ…皆でワイワイ出来る夏休み…って言うのかな?そういうのにしたいねぇ〜」

そんな他愛ない会話…そんな中で祐は少し真剣な顔でこう呟いた事を今でも覚えている。

「ワイワイ…か。」

そんな呟きは小さな声であったため…私は上手く聞き取ることが出来ずにいた。

「へ?今なんか言った?」

「ん?あー!なんでもない!大丈夫だから琴葉は気にすんなって!」

そう言って満面の笑みを見せる祐。でもあの時聞いた呟きを思うとなると…真剣な顔になるのも分かる気がした。だって夏休みの前に廻が…暴力沙汰を起こした罪を被り…停学処分となったのだから。

「さてと!んじゃ…廻も誘って色んな事やるか!」

そう言った祐は明るく私の前で振舞っている。そうしてこんな一言を続けて言った。

「アイツも居ないと…ワイワイ出来ないからなっ!精一杯…夏休みってのを満喫しようぜっ!」

その時恐らく私は、のほほんとしていただけなのだろう。だが…今思えば…親が地元だと有名なギタリストで…公演も多くて…不器用で…そんな廻だったから祐は廻の事を気にかけたのだろう。彼の中にあった「寂しい」という気持ちに。


そんな思い出にふけながら私は静かに笑いこんな言葉を零す。

「今を精一杯楽しむ…それだけを望んでるんだ。」

そう言い今できる準備だけ取り掛かっていた。私の今があるのは…廻ももちろんだが…1番は祐のおかげ。もし…もしまだ祐が生きていて…何処かで暮らしているのならば…会ってお礼を言いたい。けど…現実は…違う。だから私は祐の事を思って精一杯今を楽しんでいるのだ。

「…まだ全部が全部楽しめてる訳じゃない…だけど…もしホントに空から見守っているなら…今の私に…廻事を想っている私に力を貸してね。…祐。」


そうしてその日の夜。私はバルコニーから星を眺めた。十二月だというその星空は、凄く輝いて光る一等星だけが輝いている。

「綺麗…。」

「不思議だよな。星空って。」

私が思っている事を口にして呟くと…右隣から声が聞こえた。私は即座に声のした方へ首を向けると…そこには廻が、私と同じ様にバルコニーから星を眺めていた。

「廻!?え?星空見てたの!?なんか奇遇…」

私が慌ててそんな言葉を零すと…廻は呆れたように声を出す。

「おいおい…僕がどんな人間か君なら分かるだろ?何時だって星空を眺めてるんだぜ?もちろん…夜だけだけど…。」

そう言い…廻はまた視線を星がまばらに輝く夜空に向けた。何時もならそれだけなのだが…今日の廻は、どこか人が違うかのようにこんな言葉を口にした。

「なんで…この星空ってさ…限られた星…一等星しか残らないんだろうな。その星その星に歴史があって…何かがあって…生まれ…消えて…そんな奥深い事があって出来たのに…なんで一等星しか夜空に残らないんだろうな。」

私はその言葉に曖昧な反応しか出来なくて…いつの間にか言葉が何処か泳いでいるような状態になっていた。

「え…えーっと…な…なんでだろうねぇー…うーんと…」

そんな感じの私を見て廻はため息の様な息を吐き…笑いながら私にこんな言葉を返す。

「無理に答えようとしなくても良いよ…独り言みたいなもんだから…でも時よりホントにこんな事を思うんだ。なんで世の中ってのは…人を選ぶんだろう…ってさ。誰しも輝いてるのに。僕は誰しもが輝ける…そんな場所を望むね。」

そう言い廻は…目を閉じた。もしかして…寝ようとしてる?そう思うと私は心配で声をかけることにする。

「えっ!?ちょっと廻!?ここで寝ないでよ!?風邪ひくから!」

そう言うと…廻はいつもの様に私の言葉に対して否定的な回答をして目を開けた。

「違うからな?まだ寝なないからな?全く…少し目を閉じただけで…これだよ。」

その回答に安堵し…私は自室に戻り寝ることにする。廻に寝る前に言っていた言葉を発して…。

「えっと…おやすみ。また明日ね…廻。」

「…おう。」

その会話が終わりベッドに潜り込むと…何処からか歌が聞こえた。それはTHE BLUE HEARTSの「星をください」だった。声の大きさ…優しさ…それですぐに廻が歌っていると…すぐに分かった。

「星が見えますか。星が見えますか。ああ 星が そこから星が見えますか。いくら見上げても。僕には見えません。ああ 星が 今日の僕には見えません。願いをかける星さえ見えず。そんな気持ちなんです。」

私は後どれだけ廻の優しい歌声を聞く事が出来るのだろう…いつか…近い内に失ってしまう存在だからこそ…今のうのうと生きているのが嫌になってしまう。だから私は廻の事を思いたい。これからも…ずっと。それが今私が望んでるものなのだ。

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