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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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隠していた事と旅行券

練習が終わり…僕は自室のベッドの上で黄昏ていた。一人夕焼けで紅く染まった部屋の中からバルコニーを見つめながらこんな言葉を零す。

「あーあ…まさか自分の過去の行いがあんな形で露呈するなんてな…。」

今日の昼休み僕は琴葉が、裕二や恭太郎…小夏に僕の中学時代の話をしていた事を知っている。いや…たまたま自室に居たら聞こえていただけだが…。

「ほんと…上手く隠せないな…隠していたかった事って。」

僕はそう言い裕二から貰った旅行券を見ていた。もし琴葉に僕の命が後僅かという事が知られてしまったら…その時僕はなんて言えば良いんだろう?そんな考えがこの旅行券を見ている時に思い浮かぶ。そんな中でふとある事を思い出してついつい鼻で笑って昔を懐かしむ。

「そういえばあの時もそうだったな…。」


あれは中学二年生の時だった。この時琴葉と祐介は付き合っていて…僕はそんな二人に着いて行くだけだった。でもあの二人はそれをなんとも思っていなくて…僕含め三人の時はただ「幼なじみ」という括りに戻ってたりした。そんな三人で昼休みを過ごしていた時だった。

「うおい…あんな場所に可愛い子ちゃんが昼休み過ごしてるぜ?俺らに気があるのかなぁ?」

とそんな言葉が聞こえた後複数人の声でその言葉を肯定する声が聞こえた。僕は琴葉と祐介にこんな言葉をかけて二人にこの場から離れるように促した。

「あっそういえば…吉本先生がお前らの事呼んでたぞ。今のうちに行ってきたら?」

その言葉に従って二人はこの場を離れていく…僕は声が聞こえた方向を睨みつけ声に凄みを効かせこの言葉を吐き捨てた。

「おい…そこでコソコソと何してる?隠れてないで出て来いよ。」

すると柄の悪い生徒…恐らく十人程だろうかそれぐらいの人数の男子生徒が僕の目の前に現れる。しかし…皆表情は険しいものだった。すると…その中の一人リーダー格なんだろう…こんな自己紹介をして僕に無理のある事を聞いて来た。

「おう…俺っちは里中 庸四郎ってんだ。んで?あの可愛い子ちゃんの彼氏はおめぇか?だったら俺に寄越しな…ありゃ俺が狙ってんだ。」

どうやらその生徒は琴葉が狙いらしい。僕はそれを聞いて鼻で笑った。だって…どう考えても琴葉が、こいつの事を好きになる…筈が無いと分かっていたからだ。

「…フッ…え?何?アンタ…あの女子生徒狙ってんの?へぇ〜…俺はあの女子生徒がお前を好きになるはずが無いと思ってるけどね?後…俺彼氏じゃないから。」

そう言うとそのリーダー格は声を荒らげ…僕の胸倉を掴んできた。まぁ…それぐらい単純なんだろうと当時は思っていた。

「ああっ!?てめぇ!今なんつった!?誰に減らず口叩いとんじゃこのヒョロガリッ!ぶん殴っぞ!」

そいつは唾を僕に飛ばしながらも…そんな言葉を叫んでいた。それに対し…僕はそんな言葉を嘲笑うかのようにこう言ってみせた。

「ふーん…やれるもんならやってみな。」

そう言われ湯沸かし器の様に赤くなった里中は僕に拳を向けて来た…だがそれが僕に届くことは無かった。その前に昼休みを終える予鈴がなったからだ。

「んだとてめぇ…ちっ…覚えていやがれっ!」

僕はその背中に冷たい言葉を言い放つ。まるで氷柱で出来たナイフのように。

「里中 庸四郎ね…なんだろうとも琴葉と祐介に手を出してみろ…俺がお前を許さない。」

その後の事は…今日昼休みに琴葉が語った内容だ。人を傷つけた過去だったからこそ…僕はこの事をひた隠しにしていんだ。


夕日を見ながら…当時の事を思い出し僕は、鼻で笑っていた。言わないでおこうとした過去が…いつの間にか…いや僕が無意識に出していた素性で、恭太郎と裕二にバレていたのだから笑うしかない。

「…笑っちぃまうよ…上手く隠してたつもりだったんだがな。」

そう言い終えると…僕の部屋のドアが「ガチャ」と音を立て開かれ…そのドアの前に琴葉が立っていた。

「おう…片付け終わったか。」

僕がそう言うと琴葉は小さく笑い声を出した後僕の言葉を返すように返事をする。

「うん!終わらせてきたよ。夕日なんか眺めちゃってどうしたの?」

返事と同時に来た質問に僕は、微笑みながら答えていた。自分が今思っている事を。

「ん?あ〜…無意識に出てくる素性ほど怖いものは無いなぁ…って思ってたんだ。別に大した事じゃないさ。」

そんな僕の言葉に琴葉は戸惑いながらもこんな反応を示す。いや…それしか出来ないだろうとは予想していた。

「ふーん?そうなんだぁ?」

そう言った後琴葉は、僕の部屋の中へ足を踏み入れる。「ミシッ…ミシッ…」と聞こえてくる床が軋む音は段々と僕に近ずいて行った。

「ふふっ…廻の背中暖かい。」

そう言いながら僕の後ろに座り…琴葉は僕の背中を触る。普段なら僕はこの時点で「やめてくれ」なんて言葉を言っていたが…それが何故か出てこなかった。

「あれ?何時もなら背中触られるの嫌がるのに…今日はやけに静かなんだね。」

そんな事を聞いてきた琴葉に僕は、微笑みながらこう答えを返す。その答えが自分でも前までとは少し変わった…と自覚する様なものだった。

「ん?あー…そうだな。別にお前なら良いかな…って。」

僕のその答えに琴葉は嬉しかったのか…僕にもたれ掛かる。正直言うと…ダル絡みみたいな感じだったが…よく男子が好きな子にちょっかいをかける…それと同じだと思えば可愛く見えた。

「え?あれぇ?あれれぇ?あの廻がこんなにマイルドな性格になってるなんて…何か変なものでも食べた?」

そう言い茶化して来る琴葉に僕は照れながらも声を荒らげ…否定した。

「うるせっ!んなもん食ってたら即で病院行ってるわっ!」

最もその言葉さえも…意味を示してくれなかったが…。全くバンドメンバーに招待して加盟してから何時もこうだ。

「うそうそ〜ちょっとからかってみたかっただけ。そんなマジになんないでよ。」

そう言った後琴葉は立ち上がり僕に家に帰ることを告げる。皆早く帰ると言うのに…コイツだけは何時もココに残って僕と他愛ない時間を過ごしているのだ。

「んじゃ!私もそろそろ帰るね。大学の課題やんなきゃだし。また明日!」

僕はその元気な声に微笑みながら言葉を返す。こんな何気ない一時がいつまで続くか分からない時でコイツの前では笑って居たい…そう思いながら。

「おう。また明日な。」

そうして僕は琴葉を見送った。その後僕はベッドにまた座り…ため息をついた。だが…その時裕二から貰った旅行券を見てこんな言葉が絞り出てきていた。

「ふっ…ふふっ…あ〜…旅行券…予約期間過ぎてんじゃねぇか。はははっ…あいつ…。」

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