表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
76/91

僕らができる事

プチライブみたいな物も終わり…僕はエレキボードを片付ける。その横では魂が抜けたかのような顔をする廻が、ギターをケースにしまおうとしていた。その廻の手はどこかフラついていて…危なかっしいたらあらしない。そんな廻に僕は近付き…ギターを支えてる手を掴んでいた。

「君がギターを掴む手が弱いだなんて…相当だな。何かあったのかい?」

僕がそう聞いた後廻は我に返った様に僕の方へ視線を向ける。そうして胸を撫で下ろす様な声で僕に言葉を返した。

「ん!?ああ…すまない。少し考え事をしてただけだ。」

そう言ってギターをしまう廻を見て僕は、誰にも聞こえない小さな声でこう呟きその場を後にする。

「……そうか。」

そう言った後僕はベランダへ歩を進め…一人ため息をつきシルクハットを深く被る。しかしベランダに居たのは僕だけでは無いようで…いつも聞いている友人の声が聞こえた。

「お前が外に出てため息かよ…中学ん時を思い出すなぁ…?」

その声のする方へ視線を送るとそこには裕二が缶コーラを持ちながら僕に混じり気の無い笑みを見せる。

「悩み事かぁ?なんなら相談乗るぜ?相棒。」

そう言ってくる裕二僕は先程見た廻の行動の変化や特徴を裕二に話していた。廻には悪いが…裕二だけには言っておいた方が良いと…直感で感じた。

「さっきのプチライブ…みたいな事が終わって琴葉君が帰ってからずっとあんな感じだ…絶対なにかあったんだと思うんだ。僕らには言えない何かが…さ。」

僕がそう言うと裕二は苦笑いを浮かべ何かを隠すような言葉を口にする。全く…裕二は嘘が下手なのは知っているが…何かを隠す事も下手だった事を忘れかけているところだった。

「ん?あー…ど…どうだろうなぁ?俺は知らんからなぁ!アイツ本当頼れる時に頼んねぇからよ!分かんねぇ…」

裕二がそう言いかけているのを遮るかのように…僕は言葉を放つ。だって中学の時から一緒だった親友の事を知らない訳が無い。

「どおせ…琴葉君に対する恋心…だろ?ほんと裕二は嘘が下手で隠し事も下手だなぁ…そこがいつまでも変わってない。」

僕がニコッと笑みを浮かべ言った言葉に…裕二は沈黙するしか出来なかった。そうして…もう僕に隠す事が出来ないと悟ったのか…笑顔で重苦しい言葉を僕に投げかける。

「…ああ…った…くなぁんでお前はすぐに分かっちゃうもんかねぇ〜…?もしかして…エスパーだったりして!?」

そう言った裕二僕はため息をこぼし…裕二の隠し事が、すぐに分かる理由を言っていた。周りからすればドン引きされるのは予想できるが…裕二とは中学の時からの仲だ。高校と今でもこうやって…会っているのに分からないはずが無い。

「当たり前だ。何年友達をやってると思ってるんだい?僕らはデコボココンビだろ?」

僕がそう言った後裕二は、苦笑いを浮かべ僕の出した答えに肯定するような言葉を放った。それと同時に…こんな質問が裕二の口から飛んできた。

「…ははっ…だな…なぁ恭太郎?俺達が今廻にしてやれる事はなんなんだろうなぁ?琴葉ちゃんとの恋路の応援か?それとも…俺ら「TheApplehuman」の成功か?さっきの廻と琴葉ちゃん見てるとよぉ…思っちまうんだ…もし廻が病気で残り僅かな時間じゃ無かったらアイツは恋バナなんてぜってぇしねぇだろうなぁ…って。バンド活動も…思い詰めることも無いだろうなぁってさ。今の俺らにできる事ってなんだろうな…。」

裕二はそう言い夜空を見上げる。そんな裕二を見た後僕も空を見上げ…十二月に入った透き通った夜空を、目に映しながらこんな事を裕二に言っていた。

「今の僕らにできることなんてたかが知れてる。見守るだけで良い。だってそうじゃないか?僕らは「遠江 廻」って言う人の目撃者であって…当事者じゃないんだ。僕らが廻の事で思い詰める事なんて無いよ。ただ…終わりの瞬間が来るその時まで…僕らは見守っていれば良い…ただそれだけだよ。」

僕がそう言った後裕二は、笑って僕の言葉に返事を返していた。

「…ああ…そうだな…俺らは当事者であって当事者じゃ無いもんな。」


それから三十分もしない内に僕は、帰路についていた。いつも通り隣には侑李がいたが…こうやって夜中二人で帰るのも悪くないと今は思えている。

「こうやって二人で夜の道を歩いてると…恭君に助けて貰った時を思い出します。あの時はほんとありがとうございました!」

そう言い笑みを浮かべる彼女に僕も笑ってこんな言葉を返していた。何故かそれと同時に鼓動も早くなったが…。

「アハハ…僕はやらなきゃ…って思った事を行動に移しただけだよ。別に褒められる事は何一つしちゃいないさ。」

僕のその言葉に侑李は疑惑の目を、持ちかける。全く信じて欲しいものだと思ったが…その直後に、侑李が言った言葉の口調で別に気にする必要なんて無いな…と確信した。

「えぇ〜?ホントかなぁ〜?…フフッ!」

僕もその言葉に笑って返す事しか出来ない程何も言えなかった。そんな僕をよそに侑李は言われて嬉しい事を言っていた。

「なんか…恭君と一緒に帰ってると楽しいんです。まるで広い世界を見てる気がして…これって何なんでしょうかね?」

そんな言葉に僕は少し考え込んで…返事と同時にこんな質問をしていた。

「そうか…ありがとうな…なぁ侑李?もし僕が侑李にしてあげられる事があったとしたら…どんな事になると思う?」

僕のその質問に侑李は僕の前に出てきて可愛げに笑い…僕のその言葉に答えを返した。

「そんなの一つだけに決まってるじゃないですか!…私の傍で笑顔で会話することです!エヘッ!」

そう言って少し小走りになる侑李を見て僕は、思った。結局僕らができる事なんてたかが知れてる…なら本当に廻が…僕ら「TheApplehuman」がどんな結末を辿るのかこの目で見届けようじゃないか…。

「僕らは目撃者であって…当事者なのだから…。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ