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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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僕史上最大の危機

散歩していつも行っている喫茶店で珈琲を飲んで…帰る。今日もそんな変わらない日だと思っていた。そう…思っていた。しかし今日その場には、大学から帰宅する最中の琴葉が居て…恐らくゼミで出来た友達数人と店に入って行くところを見てしまった。それだけなら知らんぷりして店に入る事も出来ただろう…しかし琴葉はライブハウスから大学へ向かう際忘れ物をしていた。それは財布だ。僕はそれに気付いていて琴葉に届けようとした。確かに届けることは出来たが…アレはちょっと僕自身どうかと思う渡し方になってしまった。

「何が「財布忘れんなよ…たわけが。」だ。あ〜!自分で自分を殴りたい。多分…嫌われただろうなぁ…。」

そんな言葉を吐き落胆しながら僕はベッドに、飛び込んだ。うつ伏せになった後少しうなだれてから仰向けにして天井に吊り下げている蛍光灯に手を翳す。

「前も似たような事あったなぁ…なんでこう自分が思った事を素直に言えんのだろう…どうしてぶっきらぼうになっちぃまうんだろうなぁ…。」

そんな言葉の後に僕は中学二年の時を懐かしんだ。似たような経験をした…あの日を思い出すかのように。


中学二年の時。それは琴葉と祐介が付き合ったときだった。実はこの頃…僕も琴葉の事が好きで祐介が、一緒に帰れないとなった時は二人で遠回りしながら帰ったもんだ。そんな中二の梅雨が来る前琴葉からこんな質問をされた。

「ねぇ?廻?廻ってさ好きな人とか居るの?」

そう言い無邪気に笑う琴葉を見て僕は無言を貫いた。どうしてかって?本人の前でそれを言うのが恥ずかしいからだった。理由は簡単なものだなと…今では思う。

「……さぁな。」

そうやって冷たく返す僕を琴葉はどう捉えていたのだろう。今でもなんであんな事言ってしまったんだろうと後悔している。だってその二日後に祐介からこんな相談をされたのだから。

「なぁ廻?俺好きな人出来たわ。」

祐介が言ったその好きな人は…琴葉の事で僕はその言葉にも冷たく言葉を返していたのを今でも覚えている。

「ふーん…まぁ…幸せになれよ。」

そう言った翌週…本当に二人は付き合った。あの頃は何も思わなかったが…今となれば少し後悔が残る。何故あの時素直に言えなかったのかを…。


天井を見上げそんな懐かしい思い出に浸りながら僕は薄暗くなった空を映す窓に目を向けた。そうして僕は一つこんな弱音を僕しかいない自室で零す。

「…僕史上最大の危機ってヤツだな…今の状況は。」

そうしてスボンのポケットの中から携帯を取り出し…ある人物にメールを送った。普段はガサツでどうしようもない奴だが…こういう時に頼りになるヤツに…僕はメールを送り終わると携帯を閉じて腕を伸ばした後またうつ伏せになった。そうして何分たっただろうか。一階から重苦しい扉が開く音が聞こえ…同時に聞き覚えのある声が聞こえる。

「廻〜?どこにいる〜?」

そう僕が呼んだ人物は裕二だ。アイツはガサツだがこういう人生相談等では頼りになる。僕は一階の玄関付近に居るであろう裕二に聞こえそうな声でこう叫ぶ。

「二階にいるぞーっ。」

そう大きな声で僕が言うと階段を上がり近ずいてくる足音が聞こた。その足音は僕の部屋の前で止まり…部屋に入るためのドアが開く甲高い音が響き渡る。ドアが開かれ部屋の前に立っていた裕二は、今の僕の体勢を見て困惑を隠しきれてなかった。

「廻いきなり呼んで…ってなにしてんの?」

僕がベットに埋めた顔を上げ裕二に視線を合わせると僕は一つ愚痴を零すかのようにこんな言葉を口にした。

「聞いてくれ裕二…今僕は僕史上最大の危機に瀕しているんだ。そこで…お前の案を聞きたくて…」

そう言うと裕二は笑いながら僕のその言葉にツッコミを入れる。その裕二のツッコミは皮肉を言ってるようだったが…同時に察しが着いたのかこんな事を聞いてきた。

「おいおい…お前史上最大の危機は二ヶ月前から始まってんだろうが…それと…その様子じゃ琴葉ちゃん関係か?え?」

裕二がそう聞くと僕は顔をベットに埋め…長いため息をついた後首を縦に振った。その様子を見た裕二はまるで呆れたように息を吐いた後言葉を続ける。

「あれか?何か伝えようとして前に立ったのは良いが…どう伝えれば良いか分からずぶっきらぼうになっちまったのか?」

その言葉にも僕は首を縦に振り小さくため息をつく。それを見た裕二の声が少しだけ近くなり…ベッドにうつ伏せになったまま顔を埋めている僕の横が少しへこんだ。

「はぁー…あのなぁ廻…お前何時まで琴葉ちゃん待たせるつもりだよ。このままじゃ何も言えないまま終わっちまうぜ?全く…不器用過ぎるにも程がある!」

そう言い裕二は僕の体勢を無理矢理仰向けにしてから僕にこんな言葉をぶつけた。

「良いか廻。勇気出してみろよ!俺らがまだ学生っていうガキだった時のようによ!バンドやろうって言った言い出しっぺはおめぇだろうが!な?だからほら早く言え!言っちまえ!」

その裕二の言葉に僕は待ったをかけるかのように反論する。これが反論なのかな微妙だが…。

「…それとこれとじゃやり方違う。人に愛を伝えるにはそれより数倍の勇気ってもんが必要なんだよ。僕にはそれが足りない…だからアイラブユーが言えない…」

そう言った直後裕二は、根拠の無いことを僕に言う。まるでその後の言葉を遮るように。

「同じだよ…どれもこれもよ。」

そう裕二が言った刹那インターホンがピンポーンと誰かが来た合図を僕らに知らせる。僕らは顔を合わせ疑問符を浮かべた。

「誰か来たのか?恭太郎?」

そう言い二人で一階まで降りていき玄関へ向かった。僕がゆっくりと玄関を開けると…そこには意外な集団がいた。

「え?なんで居るんだ?」

僕は驚きのあまり素っ頓狂な声を上げその場で固まった。だって…そこに居たのは…。

「あっ…廻?暇してるー?…えへへ…ごめん…。」

琴葉と愉快な仲間達だったのだから。

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