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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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一方的な頼み事

練習が終わり…道具も片付け終わった後僕らは裕二の家で泊まることになった。まぁもう二時になっているあたりそうなるのも仕方ない。僕はステージにまだ琴葉と小夏が居ることを確認し…恭太郎にこんな言葉をかける。

「なぁ裕二…恭太郎…ちょっと良いか?」

僕はそう言い二人を呼び止め…琴葉と小夏が見えないところ…ベランダに二人を集めるようにした。あの二人にはもう一つ頼みたい事が出来てしまったから…僕ら三人だけの秘密事が…。


そうして僕はベランダで二人を待った。今から二人に頼むものは一方的で…釣り合わない頼み事なのは分かっている。果たしてあの二人が引き受けてくれかどうか…。

「…来たな。」

僕がそんな言葉を言った直後…ベランダの扉がさーっ…と音を立て開かれる。その後裕二と恭太郎はそれぞれ僕の元へ近付きながらこんな事を言ってきた。

「よう!んで…俺たち呼んでなんか話す事でもあるのかよ?」

裕二がそう言った後恭太郎も頷きながらほぼ同じような事を僕に言った。

「廻が僕らだけを呼んだんだ…琴葉君や侑李には内緒にしたい事なんだろう。」

恭太郎のその言葉は正解で…僕は今から二人に頼み事をする。それも一方的なものだ。恐らく他人からすれば 釣り合わない なんて言葉を投げかけられるだろう。だけど…こんな事を頼めるのは…この二人しか居ない。

「僕の余命の事なんだが…小夏にも秘密にしておいてくれないか?」

僕がそう言葉を吐き出すと…恭太郎が真っ先に反応する。そりゃそうだ。小夏と一番居る事が多く…このバンドに小夏を誘ったのも…恭太郎なのだから。

「ちょっと待ってくれ!?侑李には言っても良いんじゃないのか?なんで侑李にも内緒にしておくんだ?」

その言葉に僕は首を横に振って一つ言葉を絞り出す。こんな残酷な事が言えた口で言い訳みたいな逃避行を口にした。

「小夏が僕の事を知ったらどうすると思う?多分だけど…今のバンド活動を止めさせるはずだ…だからだよ。」

そう言った後恭太郎はこんな事を僕に追求する。まるで記者会見の取材をするジャーナリストみたいに。

「なぜそう言い切れるんだい?」

僕はその言葉に景色を眺めながら答えを出す。その答えに二人は黙る事しかできなかったらしい…返答を口から出した後辺りは無音が支配していった。

「そうだな…たった一年だけだったけど…先輩って奴の勘…かな?」

冬の風が吹く中恭太郎が、その無音で支配していたこの空間を断ち切る様に言葉を放った。

「そうか…ま!善処するよ…だけど…もし途中で気づかれてしまっても…僕を責めないでくれよ?」

そう言い恭太郎はその場を後にする。僕はその背中を黙って見届ける事しか出来なかった。


その後ベランダに居たのは僕と裕二の二人だけとなった。僕はそんな中今日一番長いため息を吐きながら裕二に質問をした。

「はぁぁぁぁぁぁぁ〜…なぁ裕二?恭太郎のヤツ言うと思うか?」

僕のそんな質問に裕二は小馬鹿にするように笑い…質問を質問で返してきた。でも言ってる事は何となく分かっている。

「おいおい…俺らがそんな事すると思うか?こんな所まで来たのに?考えてもみろよ廻…その答えは一番お前が分かってるはずだぜ?」

そう言われた後僕は思い返した。そいえば TheApplehuman の初期メンバー…つまるところ僕や裕二…恭太郎や祐介…よく思い出したらこのメンバー間での秘密事なんて多かったはずだ。そう考えると恭太郎が言うわけないかとつい頭の中で自己解決する。そうして出てきたのは乾いた笑みだけだった。

「…フフッ…。」

静かな笑い声をあげると裕二も静かに笑い…僕にこんな事を聞く。いや聞いてきて当然なのだろう。だって…僕は裕二の質問に何も答えを返していないのだから…。

「何笑ってんだよ?俺…おかしな事でも言ったか?」

そんな裕二の言葉に僕は…笑い…窓から見える街の景色を目に入れながら質問の答えを返していた。

「ん?あー…悪ぃ…考えてたら…ちょっと笑えてきてさ…そうだな…お前らが言うわけないもんな。」

そんな僕の言葉に裕二は、僕の横に立ち手を差し出し少年漫画にでも出てきそうなキャラクターみたいな言葉を僕に言い放つ。

「おいおい…俺ら友達だろ?友達の秘密事を言うわけねぇじゃねぇか。全く廻ってヤツは偶に何かを忘れるよなぁ!」

僕はその言葉に笑い続けながらも答えを口から絞り出す。その時携帯のアラームが午前三時を僕たちに知らせていた。

「ハハッ…すまないな。色々考えてると頭から抜けてくもんでね。」

そう言い僕は夜中三時の空を見上げた。とても綺麗な…そんな夜空を…

「にしてもよ…廻…おめぇは俺らに一方的な頼み事するよなぁ…ま!今のおめぇだった仕方ねぇか!一緒に頑張ろうぜ!」

確かに裕二や恭太郎には無茶で一方的な頼み事をしているのは自分でも分かっている。でも…それでも付いてきてくれるこの二人に感謝しなければならないと思った。

「なぁ…裕二…ホントありがとう。今後もよろしくな。」

僕がそう呟いた直後聞こえていたのか裕二は一つ言葉を放つ。

「言ってんのバレバレなんだよ。ったく…あたぼうよ。おめぇ無しのTheApplehumanはホントのTheApplehumanじゃねぇからな!」

その夜の僕らは…星のように輝いていた。宝石の様に綺麗に。

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