分かりやすい奴ら
誰もが寝静まった様な夜。俺達は兄貴が経営するライブハウスで練習を始めていたが…どうも恭太郎と小夏ちゃんの様子がおかしかった。何故かは知らないが今日の二人はかなりミスが目立つ。ただミスってるだけならまだ気にならないが…ほぼ同じタイミングでミスっているのだ。
「あー…すまん。間違えた。」
恭太郎がミスをすると続くように小夏ちゃんもミスをする。それが今日の練習の風景だった。
「…すいません…ミスりました。」
これは何かあったな…そう確信を得た時俺は廻の元へ駆け寄りこんな提案を小声で言った。
「なぁ?廻。あれの時間にしねぇか?」
小さな声で俺が廻に提案すると廻は、一呼吸置いて大きな声でこんな事を言っていた。
「よし!休憩入れるぞ!各々寝るなり珈琲飲むなり好きにしてくれ。」
そう言った直後皆それぞれ休息の時間に入ろうとするが…俺は恭太郎を呼び止めていた。理由なんて簡単なもんで…一つ確認したかった事があったからだ。
「恭太郎っ!俺と珈琲でも飲みに行こうぜ?」
そう言いながら俺は恭太郎の肩に腕を掛けながらそんな提案をしていた。それに対して恭太郎はびっくりしながら俺のその提案に対する答えを返した。最もその喋り方は何かを秘密にしている様な喋り方だったが…。
「なんだよ!?今日ミスが多い理由か?絶対言わないからなっ!絶っっっ対言わないからなっ!」
珍しくそう言って騒ぐ恭太郎をなだめながら…俺はベランダの方へ足を進めた。
「はいはい…聞かないでおいてやるからよ…一緒にコーヒーでも飲もうや。」
そう言いベランダへ向かう途中すれ違った廻に俺は恭太郎に聞こえない声でこう言った。
「廻…小夏ちゃん頼むぜ?」
それに廻も俺と同じく恭太郎に聞こえない程小さな声で俺の頼み事を聞き入れていた。
「ああ…やってみる。」
そんなこんなで…俺は今恭太郎とベランダで休憩時間をとっていた。俺は恭太郎にこんなことを言ってみる。
「いやぁ〜にしても…恭太郎今日お前どこ行ってたんだよ?お前が昼ぐらいに家から出るところ…見ちゃったんだよねぇ〜。」
俺がそう聞くと恭太郎は少し慌てながらもこんな言葉で、その質問に対する答えを俺に言った。
「と…図書館!そう!図書館にいっ…行ってたんだ!」
そう言った恭太郎を見て俺は悪魔のような笑みを浮かべながら…その言葉を否定した。だって…こんなに焦って話す恭太郎は珍しいから…。
「俺は違うと思うけどなぁ!…んで一人で行ったのか?」
俺がそう言った後恭太郎に質問を投げかける。でもその答え方も落ち着きが無いのを見て俺はすぐ嘘を言っている事が分かっていた。
「も…もちろん一人で行ったに決まってるじゃないか!何言ってんるんだよ…裕二。」
そうシラをきる恭太郎を見て俺は決定的な質問を恭太郎に言った。まぁ…その後恭太郎が見せた反応は傑作と言って良い程笑えたが…。
「ふーん…んで北山河川公園は楽しかったのか?ソフトクリームなんてもん誰かと一緒に食ってよ?」
缶コーヒーを口に含みながら俺が、そう言うとまるでバツの悪そうな反応を恭太郎が見せた。
「…なっ!?」
その一言だけ発した恭太郎をよそに俺は自分の予想した事を…まるで独り言のように言った。その時…恭太郎はもう黙り込んでしまい…認めざるを得ない状況だったようにも見えた。
「あらかた…小夏ちゃんあたりを連れて行ったんだろいなぁ?今日廻を迎えに行った時琴葉ちゃんは廻にべったりだったからよぉ…それに…お前さんのカバンの中…ソフトクリームの紙と一緒に入ってるハンカチ…ありゃ小夏ちゃんのだろ?あの子このバンドに加入した日につかってたからなぁ!だから今日小夏ちゃんと北山河川公園に行っていた…ちげぇか?ん?」
その後しばらくお互い無言が続いたが…一分経とうとした時に恭太郎がまるで観念したかのように言葉を吐き出す。
「はぁー…全く…裕二には隠し事は通用しないな…やっぱり…そうだよ…今日僕は北山河川公園に行っていた。しかも君の予想通り…侑李とね…。」
そう言った恭太郎に俺は笑いながらこんな質問をした。だって…今日の恭太郎はいつも以上におかしかったからだ。
「…ぷっ!ははははははっ!さては恭太郎…お前小夏ちゃんの事好きなんだな?」
俺の口から出た質問に恭太郎はため息をついた後重い口で…俺の質問に対する答えを吐き出した。
「はぁー…そうだよ。いつ頃だったかな…廻が帰ってくる二日前からだった気がする。僕が侑李と出会った日は今でも覚えているよ。彼女が僕を変えてくれた…そう言っても過言ではないそう思うと…侑李の事が頭から離れなくなった。ふふっ…そんな話を君にしても意味が無いけどさ…裕二。」
そう言った恭太郎に俺はこんな事を言った。その言葉は廻にも言った言葉で…まさか恭太郎にほぼ同じような言葉を言うとは思わなかった。
「馬鹿野郎…言えよ。言っちまえよ!恭太郎やった後悔よりやらない後悔の方がでけぇ世の中なんだぜ?言っちまえよ。」
俺がそう言った後恭太郎は少し笑いながらこんな言葉を口にする。それは俺に対する皮肉を言った様なものだったが…言っている事は正しいのだろう。
「夕月と自分みたいな結末にはなって欲しくないからか?」
そう言った恭太郎はその言葉に続きを付け足した。まるで何か覚悟が出来たかのように…。
「大丈夫…遅かれ早かれ…いつか侑李にこの思いを伝えようとしてるからさ…。」
そう言いベランダを、後にする恭太郎の背中を見て俺は笑いながらこんな言葉を綴った。
「…ったく…二人揃って…分かりやすい奴らだな。」




