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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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はじめの一歩は外出先で

家に帰るなり僕は身支度を始めていた。理由はバイトだから…では無い。今日は初めて侑李と遊ぶ事にした。初めて誘ったが…侑李は、二つ返事で僕の誘いに乗ってくれたのだ。

「さて…一昨日バイト先の後輩に買わされた服を着てくか…それとも…今まで通りの服装で行くか…。」

僕がこうやって準備を進めていく中でも時間は刻一刻と過ぎていく…悩んでも仕方ないことで悩むのは辞めたいので…僕は一昨日買ったばかりの服を着ていくことにした。

「…似合ってると良いな…。」

そう言葉を零しショルダーバッグを肩にかけて僕は家を飛び出した。楽しみにしていたのか…僕の声は何時もより明るいトーンだった気がする。

「行ってくる。」

そうして家を出た後一人真っ直ぐ駅へ向かう。僕らが集合場所にしたのは…侑李が酷い目にあう前に立ち寄った駅のバスターミナルだった。

「まさか自分からあそこを集合場所にするとは…まぁ…お互い近い位置といったらになってしまうからな…。」

僕はそうぶつくさと呟きながら目的地へ向かった。


駅の前の広場に到着すると僕の後ろから元気な声で僕を呼ぶ声が聞こえた。

「恭君ー!」

そんな声が聞こえる方へ視線を向けると…ベージュのコートに…まるで雪の様な白いマフラーを首にかけている少女らしき人影が僕に近づいてきた。僕はその人物の元へ少し近づいてお互いの距離が近くなったところで声をかける。

「さっきぶりだね…その…一晩中起きてたけど…大丈夫かい?」

僕がそう侑李に聞くと…彼女は太陽の様にはにかんで僕の質問に答えを返した。

「え?何言ってんですか?若いから大丈夫に決まってるじゃないですかぁ〜もう…。」

そんな会話をした後僕らはバスに乗り目的地へ向かった。今回二人で行く場所は…水族館だ。でもただの水族館では無い…なんでも淡水魚…所謂川や湖で生きる魚や生物を展示してる場所に向かう。

「えへへ…楽しみです。海水生物の水族館ならお姉ちゃんと一緒に行った事あるんですけど…」

バスに乗り込んだ直後侑李が僕に放った言葉に僕は、予想を立てながら…その言葉の続きを言った。

「淡水生物の水族館は初めてかい?」

その言葉の後侑李は首を縦に小さく振る。僕はそれを見逃す訳もなく…一つ頼りになりそうな言葉を侑李に言った。

「あ…じゃあ安心して欲しい事がある。その…僕ここに何回…いや…何十回と来てるからエスコートは任せてくれ。」

なんだろう今日は何時にもましてなんでも出来る…そんな気がしてきた。侑李が車窓を眺めている後ろ姿を見て僕はそう勝手に思い込んでいた。

「エエ…エスコート!?恭君ったら!私はどっかのお偉いさんの娘じゃ無いんですからね!そんな堅くならくても…」

そう言った侑李に僕はすました顔で言ってみせる。電柱や低い雑居ビルの影が車窓に当たる太陽光を塞いではひょっこりと出てくるかのような…まるで切れ掛けの蛍光灯の様になっている窓の景色を背景に…。

「そんなマジにならないでくれよ…僕のカッコ付けにさ。」

そうして僕らは笑い合った。電柱や低い雑居ビルを通り越す…道中の中で…くすくすと。


目的地に着く頃には昼下がりと言っても良い時間帯になっていた。それでも僕は侑李とこの場所に行くのを楽しみにしていた為時間なんてどうでも良かった。

「もう二時か…ま!この時間を楽しもう。」

僕はそう言い侑李の手を取ってバスから降りた。よくよく考えたら無意識に侑李のと手を握っていた事に…僕は恥ずかしくなった。

「あっ…その…ごめん…無意識に手握ってたね…。」

頬を赤くして僕が言った言葉に対し侑李も恥ずかしがりながら…こんな言葉を呟いていた。

「べ…別に…き…気にしてない…ですよ?」

そう言って僕の視線を逸らす侑李を見ていると…何処か微笑ましい…そんな事を思いながら僕らは水族館の建物へ歩いて向かった。受付に行きチケット等を買っていると侑李が僕の事を呼び…子供みたいにはしゃいでいた。そんな侑李の、愛くるしさに僕はつい微笑んでしまっていた。

「ねぇねぇ!恭君!あのテレビに映ってる魚初めて見るけど…どこの国の魚なんです?」

侑李がそう言い指を指すテレビには大きな鯰の仲間が優雅に泳いでる映像が映し出されていた。僕はその映像を一瞬見てから手元の方へ目線を向け…侑李を楽しませるような答えを繰り出した。

「この生き物の名前はこれから分かるよ…答えはその時までの…お楽しみで。」

そう言いチケットを買い終わると僕らは水族館の入口の中へ消えた。建物内は非常に暗く…館内放送は鳥のさえずりと川のせせらぎ…この施設がどういう施設なのかを説明する声の三つだけが僕らの耳へと入っていく…これから僕達は水族館を楽しむ…それが僕のはじめの一歩で…その一歩は外出先で進む事になった。そうして順路に沿って僕らは施設内を見渡した。日本固有の生物のブースが終わって僕らは海外の生物のブースへ移動したその直後だった。

「わぁ!見てくださいよ!恭君!ロビーのテレビに映ってたヤツですよ!」

そう言い子供みたいにはしゃぐ侑李の背後に大型な魚影が通る。僕は、その水槽にいる生き物が書かれてるプレートを指差し苦笑いを浮かべる。そのネームプレートに書かれた生物の名前を侑李がゆっくり読み上げた。

「メコン…オオ…ナマズ…?三メートル!?…私達丸飲みにされちゃいますね…。」

そう侑李が言った後僕らはその水槽の前で笑いあった。人目を気にせず…確かに…なんて言葉を掛け合いながら笑っていた。


水族館を堪能し終わる頃には日が東に傾いていた。僕は水族館の近くにある子供が遊ぶ様な公園のベンチで寛いでいた。今侑李が小腹満たしの為にソフトクリームを買いに行った所だ。本当なら僕が行くべきなのだが…何故か侑李は頑なに 自分が買いに行きたい と言って僕はベンチに座っていた…おっとどうやら無事に買えたようだと思い僕は侑李の居る方へ視線を向ける。そこにはソフトクリームを両手に僕の方へ向かってくる侑李の姿があった。そして…

「はい!買ってきました!」

そう言い僕は渡されたソフトクリームを手に持ち侑李に感謝を伝えていた。

「本来なら一番来た此処に来た回数が多い僕が行くべきなんだが…すまない。」

そう言った直後僕はその渡された物を口に含む…侑李はそんな僕の言葉にこんな言葉を返しながら買ってきたソフトクリームを口へ含んだ。

「いえいえ!今日ほんと恭君が誘ってくれなかったら…私ずっと…ずっーと暇な一日を過ごす事になっていたので!」

ソフトクリームを食べながら僕が思った事はそんな事でこの子は誰かの為に動けるんだな…と感心していた。そんな事を考えながら食べ終え僕ら二人が立ったその時だった。

「よいしょっと…うわぁあ!?あ!ちょっ!まっ!」

侑李が勢いつけて立とうとし倒れそうになっていた。このまま手で支えようと行動に出るが…このままじゃ間に合わない。そう考えた僕は…バッグを背中から下ろして侑李の側へ急いで向かっていた。

「一か八かだ!間に合え!」

ずざっ…そんな何かが砂地を引きずる音が聞こえ…僕は起き上がる。そうして僕が、心配したのは侑李を受け止める為にクッション代わりにしたバッグではなく…侑李本人だった。

「侑李?大丈夫かい?」

しかし侑李からの反応は無い。それどころか意識はあるが頬を赤く染めた侑李が驚いていたのが分かったぐらいだ。

「あ…あ…」

そう言葉を零しかける侑李に何があったのか問おうとするが…僕今の状態を見てすぐに理解した。何故なら…今の僕の体制は僕が侑李を押し倒した様なものになっていたからだった。

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