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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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夢と涙

どうやらいつの間に私は眠ってしまっていたようだ。重い瞼を開けると…そこは懐かしい空間が広がっていた。

「琴葉?琴葉ー琴葉ってば!」

その言葉に私は反応し…声の聞こえる方へ視線を向ける。そこに居る人物を見て私は困惑する。

「え?…なん…なん…で…」

私は声を震えて泣きそうになった。だってそこに居たのは…もう会えないと思った人物だったからだった。

「なんで…居る…の?…祐…介。」

そうそこに居たのは…死んでしまってもう会えないと思っていた私の恋人…石川 祐介 だった。私はその再開に嬉しそうに抱きつこうとしたが…。遠いような近い距離から私達を呼ぶ声が聞こえる。

「おーい!琴葉。祐介ー。」

私達は二人で声の聞こえる方向へ目線を向ける。その直後…祐介は私の顔を見てこんな事を言った。

「ほら…休憩時間になったし!下に行こう。廻が待ってる。」

そんな言葉を言い私達は廻の元へ向かった。廻が居るであろうリビングに向かう途中懐かしい様な…最近見かけた様な気がした。そんな中祐介はこんな質問を私にしてきていた。

「なぁ?琴葉?今日ってアレ持ってきた?俺すんげぇ楽しみにしてた。」

笑いながら私にそんな質問をしてくる祐介。私は祐介が求めているのがすぐに分かった。よく作ってたもんな…と心の中で呟きながら私は、その質問の答えを返していた。

「えへへ…作ってあるよ…何時もの様にアーモンド砕いて入れあるから…祐も廻もガツガツ食べれるはずだよー。」

そんな答えを私は祐介に言っていた。その直後祐介は子供のように喜んでいた。そんな祐介を見るのを私も嬉しくて…いつも以上に微笑みを浮かべていた。

「やった!琴葉の作るアップルパイ…美味いんだよなぁ…やっぱ自慢の彼女だよ…お前はさ。」

そう言い祐介は私の頭に手を置き左右に動かす。その時私の乱れた髪が、草原に生えてる風に靡かれた草を連想させた。そうしてリビングに着くと…そこには廻が珈琲を入れて私達が来るのを待っていた。

「全く…来るのが遅い!裕二や恭太郎を待たせちゃ拙いだろ?」

そんな事を言う廻の顔付きを見て私は思った。何時もの暗い顔つきはどこへ行ったのか…私は廻へ無意識にこんな質問を聞いていた。

「…ねぇ…廻?二ヶ月前に倒れたりとかした?お医者さんに「もう長くない」って言われたりしなかった?」

そう聞くと廻は、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を見せながら私の質問に答えを出す。

「ん?琴葉…お前何言ってんだ?馬鹿な冗談は辞めてくれ。なんも無いぞ僕は。」

その言葉に私は少しだけ安心する。多分今までの…祐介が自殺だなんて夢だったんだと…。だとしたら最悪な夢だなと心の中で呟いた。

「なぁ廻?今日どんだけ練習する?」

祐介がそんな事を聞くと廻は、落ち着いた雰囲気を醸し出しながら祐介の質問に答えを返した。

「ん?あー…まぁ…ざっと後二時間位だな。」

そう言いアップルパイと珈琲を二階の練習部屋へ持っていこうとする廻…私と祐介はそれを手伝っていた。


廻の宣言通りというべきか…その日の練習終わりは夕焼け空だった。私は空き部屋から顔を覗かせると…祐介が声をあげる。

「コラっ!何覗いてんだ!…ただいま。」

そう言い私の所へ笑顔で駆け寄る彼が可愛く見えた…それと同時に何処か懐かしく…何処か切なく感じてしまう。

「…うん…おかえり。」

私は笑って祐介に言った言葉…しかし上手く笑えてなかったのか…祐介は私に問う。今の私には精一杯の笑顔に…。

「…なぁ琴葉?今日の昼からお前変だぜ?いつも通りに笑ってくれや…って何かあったから笑えないんだよな…どうしたんだよ?」

そんな祐介の問いかけに私はことの事情を全て吐き出した。昼寝をしていた時に、祐介が自殺して…廻が病気になって残りわずかな命しか無いとなった…そんな夢を…

「夢なのは分かってるよ…でも何処か現実味があって…怖かった…。」

小さな声でそんな事を零す私を見て祐介は私の前に移動し…私の頬に手を添える。そして…笑いながらこんな言葉を私に向け言っていた。

「んなに言ってんだよー…たとえ天変地異が起きたとしても…そんな事起きねぇって!安心しろよ琴葉。」

その時の彼の笑顔は昔のままだった。でも…本当にこれは現実なのだろうか。そう思っていると…祐介は私を抱きしめ…耳元でこんな事を呟いた。

「ありがとな…好きでいてくれて。」

その言葉を聞いた瞬間…また私の視界は真っ黒の闇に染まっていった。


そうして私は瞳を開ける。そこには廻の部屋の天井が映し出されていた。私は身体を起こし…窓と時計を見てこう呟く。

「お昼なんだ…じゃあ…あれは夢?」

そう呟くと同時に辺りを見渡す。何故なら部屋の掃除をしていた廻が居なくなっていたからだ。

「廻?廻!?どこにいるの!?」

そう言い私はリビングへ向かった。廊下に出ると冬の肌寒さが季節を感じさせ…私は震えてしまった。一階から聞こえて来る僅かな声と足音を頼りに私は足を進め…一分も経たないうちにリビングに到着した。

「………あれは…夢だったんだよ。」

そう言い残しドアを開けると…そこにはドアが開き私が突っ立て居ることに驚いている廻の姿があった。

「うお!?って琴葉…起きたのか?お前寝てたぞ。」

そう言った廻に私は、近付き…いつの間にか廻を抱いていた。そんな私を見て何か感ずいたのか…廻は私にこんな提案をする。

「どうしたんだ…なぁ?ソファに座って落ち着こう?何があったかは知らんが…。」

そんな廻の提案に私は首を小さく縦に振る。そうして廻に連れられ私はソファに座った。隣のスペースに廻が腰を下ろすと…私の顔を見つめこう質問する。

「どうしたんだ?何か悪い夢でも見たのか?」

私はそんな廻の質問に答えを返す事を躊躇った。でもそれでも…ほんのひと握りの勇気を振り絞り…震える唇を動かした。

「ううん…何処か寂しくて…何処か暖かくて…懐かしい…そんな…夢…だった…よ。」

そう言った私の目は熱くなり…何か湿ったものが頬を伝って…手の平に落ちた。私が先程見た夢を語った時に出たものそれは…涙だった。

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