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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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昼光の中で眠る君の顔

皆が練習を終え帰宅した後僕は一人で朝食をとっていた。こういきなり一人になるのはどこか寂しさを感じる。

「おいおい…死ぬ覚悟で今の活動してるのに…大丈夫か僕?」

苦笑いを零しながらそんな言葉を言い…一人トーストを口に含んでいた。仕事を辞めた…いやクビになってから何処も行かなくなったので余計家に一人で居る事に違和感を感じている。朝食を食べ終えた後家で出来る事として…僕は生前整理をしていた。要らないものは明日売りに行くとして…残しておきたいものは自室のクローゼットの中へ放り込んで行く…。

「さて…あらかた終わったな。後は…」

そう言いながら僕は今使っているエレキギターに視線を向けた。恐らく今の僕の事を考えるとそのうち弾けなくなる…それどころかその後弾く事も無くなるだろう。

「うちのメンバーでエレキやれる人間は居ないし…宝の持ち腐れだなこりゃ…」

苦笑いを浮かべながら僕はそんな言葉を一人の自室で言い放った。そんな僕の言葉に返ってききたのは…街の方から聞こえる車の走行音だけでそれ以外の音は無かった。

「どーすっかな…これ…」

そう言いながら僕が頭を抱えたその時だった。僕の家の、インターホンが鳴り響いた。こんな時に誰なんだろうと玄関に向かい…ドアを開くとそこに居たのはさっき練習が終わり…家に帰ったはずの琴葉だった。

「おいおい…忘れ物か?琴葉。」

僕がそう聞くと琴葉は、首を横に振りながらこんな事を言ってきた。いつもならうっとしく思えるその答えは…今になってはちょっと嬉しかった。

「忘れ物?違う違う!ただまた来たくなっただけ!…駄目だった?」

そんな言葉を口にした琴葉はいつも以上に笑っていた。そんな笑顔を見たのは何時ぶりだろうか…懐かしさと共に僕は琴葉を家に入れた。

「んな事ねぇよ。ほら…早く入れって。」

そうしてリビングに着くなり琴葉は、何に驚いたのか…一つ叫び声をあげながら僕にこんな質問をする。

「あーーっ!廻!?ちょっと!またトースト一枚しか食べてないでしょ!?」

その声を聞くなり僕はあーあまた始まった…と心の中で呟いた。でも不思議と悪い気はしない…だって今僕は寂しさを払拭している様なものだったから。

「あー…悪ぃ。つい何時もの癖でな。」

笑いながらそう返すと琴葉は、頬を少し膨らませた後僕にこんな小言を言いながらキッチンへ向かった。

「もう!そういう食生活してるから…貧血気味なんだよ!」

琴葉が何か作っている間に僕はリビングの片付けをしていた…いや生前整理と言った方が正しいか…僕は一つ箱から写真を整理する。そうして一つの写真を取り出し…調理を終え…こちらに近ずいてきた琴葉にこんな事を言って写真を渡していた。

「なぁ琴葉…この写真…お前にやるよ。」

そう言い写真を渡すと琴葉は、驚きながらもこんな事を質問してきた。

「えっ?でもこの写真…大分古いよ?」

そんな事を言った琴葉に僕はダイニングテーブルの方へ振り向きながらその質問の答えを言った。

「お前に渡しとけば…その写真も喜ぶだろうからさ。」

その言葉の後琴葉が作った朝食…の追加注文の様に作られた品を僕は食べながら微笑んでいた。だって…こんなにリビングが綺麗に見えたのは…久しぶりだったのだから…。


琴葉が作った物を食べ終え…僕は自室の整理整頓をしていた。いわゆる 生前整理 というものだ。気が付けば余命宣告をされてからもう二ヶ月は経とうとしている今日…しておかないと他に迷惑をかけてしまうから。本来なら一人でやる事なのだろう…でも今僕の自室には僕の好きな人を部屋に入れていた。唯一の救いはまだ彼女はその事を知らない事。やはり裕二や恭太郎に 琴葉には言うな と言っておいていたのが正解だった。

「特になんも無いのに…もしかして大掃除?」

笑いながらそんな事を言う琴葉に僕は作業を進めながらこんな言葉を返す。

「もう少しで十二月に入るだろ?大晦日に全部やるなんて天変地異が起きない限り無理だからな?この量は。」

そう言い琴葉の事を気にせず僕は生前整理を進めて行く…ある程度進んだ後僕は琴葉の方を見ながら一つ提案するつもりだった。

「よし!ある程度は進んだな。なぁ琴葉?お前今日大学の授業休講なんだろ?なら一緒に昼でも…琴葉?」

僕のベッドの上でぐったりとしている琴葉を目にし…僕はベッドに近づく…すると琴葉から聞こえてくるものは…寝息だった。

「…全く…何処で寝てんだか。」

僕はそう呟き…琴葉の隣に座り込んだ。そうして僕も目を擦りこんな言葉を言っていた。

「そのままゆっくりしてけよ…可愛いベーシストさん。」


あれから一時間は経過した頃だろう…どうやら僕は寝てしまっていたらしい。ちなみに…起きた理由は琴葉が僕の膝に倒れてきたからだ。

「おいおい…寝相悪いぞ…まぁ百も承知だが。」

そう言い琴葉をベッドに乗せた。その時の琴葉の寝顔は昼の光に照らされて綺麗に見えた。その後僕は買い出しに行く準備をして家を出た。

「行ってくる。」

その言葉だけを残して家を出た。

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