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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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愛を伝える歌を

授業を終え…私は一人で帰路についていた。何時もならある程度友達とカフェに行ったりしているのだが…今日はバンドの練習があるとなるとそんな事やっていられない。

「よし!家に帰ったらソロでも良いから練習しよ!まだ時間あるし。」

そう言いバス停で待っていると…見知った人物が私の隣に立っていた。その人はシルクハットを深く被っていたのですぐに誰か分かったのだ。

「あれ?…まさか…恭太郎さんですか?」

私がそう声をかけると隣のシルクハットを被った人はビクッと肩を震わせ私の方を見た。その顔を見ると…やっぱり恭太郎さんで恭太郎さんは私だと分かったのかこんな言葉を言っていた。

「ああ…琴葉君か。学校帰りかい?」

その落ち着いた声で発せられた言葉に私は、微笑みを浮かべながらその言葉に返答を返した。

「はい!その後自主練習でもしようかなと。」

そう言った直後私の住む地域を通るバスに乗り込んだ。どうやら恭太郎さんもこのバスに乗るらしい。乗る前に恭太郎さんはこんな事を小さな声で呟いていた。

「アイツ…荷物を増やしやがって…」


そうしてバスに揺られ三十分。目的地に着いた私はバスを降りた。しかしそれと同時に恭太郎さんも降りた為私は手荷物で両手を塞いでいる彼を助けることになった。

「琴葉君…すまないな…この荷物運びに手伝って貰って。」

そんな事を言ってきた恭太郎さんを見て私は自信満々に、こんな言葉を口にする。

「いえいえ!任せてください!私こう見えて力持ちなんで!」

そんな軽口を叩くと恭太郎さんは、ある場所で足を止める。そして…こんな提案を私にしてきていた。

「ちょっとすまない…寄り道してもいいかい?この量の荷物を持ちながらだと…冬でも暑いや。」

私はその提案に首を縦に振りながらこう答えた。その提案をしてきた恭太郎さんを見つめながら…。

「良いですね!どこ行くんです?」

そう言った後私達は、五分ぐらい住宅地を歩き続けた。そして…恭太郎さんが言った言葉が到着した合図になる。

「着いた…。」

そう言って恭太郎さんが向いてる場所に視線を向けると…そこには昨日廻と行った喫茶店だった。あまりにも意外な場所だったので私は困惑を隠せない。

「え?ここって…」

そんな素っ頓狂な声で発せられた私の言葉に恭太郎さんは、頭に疑問符を浮かべた様な表情でこんな事を聞いてきた。いや…むしろこんな反応をされるとなると…疑問符を浮かべてしまうのも仕方ないのかもしれない。

「ん?…来たことあるのか?」

恭太郎さんの口から出た言葉に少し慌てながらも答えを返した。その答えに恭太郎さんは納得したような顔をしていた。

「あー…はい…昨日。廻と一緒に…。」

そんな私の答えが道の端で声になったあと二人でその喫茶店に吸い込まれるように入っていった。大きな荷物を持ったシルクハットを被った青年と…ただバンドメンバーというだけの女子大生の二人が…。


喫茶店に入ると同時にドアの角に付けられた鐘が私達が入った事を知らせていた。その鐘が鳴り終わった後店の奥から一人の初老の男性が姿を見せた。

「おや…ピアノを弾くのが上手なお客さんと…錦山さん。」

その初老の男性はこの喫茶店のマスターで、私はよく廻と祐との下校途中に寄っていた店でもある。

「え?マスター…琴葉君の事を知っているのかい?」

マスターが私の事を知っている事に驚き恭太郎さんはそんな質問をした。マスターが答える前に私は恭太郎さんにこんな説明をする。

「ここはよく高校の時来てたんですよ…廻と祐と一緒に。廻は今でも来てるみたいですが…。」

そんな私の説明にまるで…納得するかのような反応を恭太郎さんは見せていた。

「成程…だからマスターも知ってるわけだ。」

そうして私達はテーブル席に腰を下ろしオーダーをとる。恭太郎さんが頼んだものを聞いて私は懐かしさを覚える。

「珈琲の…オリジナルブレンドを。」

恭太郎さんが頼んだ物…それは廻と祐が高校生の時にここに来た時よく頼んでいたものだった。私はその言葉に…懐かしさと切なさと何故か焦りが込み上げてきて…黙り込んでしまった。いや…焦りが出てきた理由はもう自分でも分かっていたりする。

「……琴葉君?」

恭太郎さんのその声に私は、はっと我に返り声を出す。その時の声が少しだけ裏返っていたのは恐らく気づいて貰えているのだろう。

「…あっ!な…なんでしょうか?廻程では無いですけど…ここの事なら…」

そんな事を言いかけたその時恭太郎さんはシルクハットを頭から外し…こんな事を言った。

「廻と祐介との思い出を振り返ったんだろ?恐らく僕が頼んだ珈琲…これは廻や祐介がオーダーしていた物…そうだったんじゃないのか?それで懐かしさと同時に…祐介が居ない切なさと…廻が居なくなってしまう焦りなんだろ?大人にならなきゃってさ…でも…君は君らしく居ればいい。だから…」

そう言い恭太郎さんはまるで木漏れ日の様な焦げ茶色の髪を少しかき上げこう言った。

「君らしい愛情の伝え方で廻に言ってやって欲しい。それが…君の愛を伝える歌になる。」

その言葉に私は何を考えていたのだろうと恥ずかしくなった。私はそれを隠しながら昔からよく頼んでいたものをオーダーした。

「……ココアを…ホットで。」

その私のオーダーに恭太郎さんは、少し笑いこんな事を言い出した。それにつられて私も少し吹き出してしまった。

「フフッ…君らしいな…なんか君らしい人を僕は知っている。」

そう言って微笑んだ恭太郎さんに私もつられて微笑みながらこんな事を言うしかなかった。

「…もう…何言ってんですか?そんな人居たとしたら…かなりの変わり者ですよ。」

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