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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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初めて抱いた恋心

侑李を送り届けて自分の家に着いた頃…既に朝日は昇っていた。僕は家の中へ入り…自室に着くなりベッドにその身を放り込んでいた。そして…何時もより長いため息を、吐いた後天井を見つめこんな事を呟いていた。

「言えなかったな…好きだって。」

もう隠すことも無いが…僕は侑李が好きだ。友達としてでは無く…異性として…でもそれをどう言おうか悩んでいるところだったりする。でもいざって時にその一言が言い出せずにいた。こんな気持ちを初めて抱く事になるから慣れないのも無理は無い。今までこんな事を思った事が無い理由は…当時僕はピアノを弾く事だけを理由に生きていたような気がしたからだった。だから基本自分から話しかける事はしなかった。

「よし…バイト行く準備するか。」

そんな恋心を抱きながら僕は今日を始める準備を進めることにした。


いつも通りとは何なのだろう…いつも通りにバイトに行き…いつも通りに働き…いつもに帰る…何ら変哲のない日常なのには変わりない…だが一つどうしても、引っかかって取れないものを僕は必死になって考えていた。

「一体どうすればこの引っかかったものが取れるんだろうか」

そんな事をボヤきながらレジの前で突っ立て居ると…いきなり後輩にこんな事を言われる。

「あれーっ!?いつも真剣にレジ打ちしてる佐久間ぱいせんが…めっちゃ考え込んでるぅ!?」

そう言って茶化してくるチャラい後輩に僕はいつものように言葉を返した。

「おい…静かにしろ仕事中だぞ。」

そうなだめるように言った後、朝ついたような長い溜息が僕の口から出ていた。

「なーんか…長い溜息ついちゃってるなぁ…そうだ!相談事ですか?ならこの僕に…」

そう言ってきた後輩に僕は、呆れたかの様な声で返答を返していた。

「いいからちょっと静かにしていてくれ。」

そう言い僕は倉庫に向かおうとする…しかし後輩に肩を掴まれ…気味の悪そうな笑みを浮かべこんな事を言ってきた。

「またまた…佐久間ぱいせん。多分ぱいせんは…恋のお悩みなのかなぁ?なーんてね!でも溜め込み過ぎは良くないっすよ。」

僕は少しばかし考えた。確かにコイツとは無関係な話なのは承知のうえだ。しかし…コイツの言う通り溜め込み過ぎなのもまた身体の毒になっていく…そうなるならいっそ話しても良いような気がした。

「…誰にも言うなよ?絶対だからな?」

「え〜?ぱいせん…それって…フリですかぁ?」

僕がそう言った後そんな事を言ってきたその後輩に、少しだけ圧をかけることにした。

「………は?」

するといつものようにケラケラした態度はどこえやら…いきなり真剣になりながらも僕の話を聞き出すようにこんな質問が飛んできた。

「んで…そんなに悩むなんて…ぱいせんらしくないですよ?嫌な事でもありましたか?」

そう質問してきた後輩に僕は、ことの事情をぽつりぽつりと…話し始めていた。

「…実はさ…お前の言う通り…好きな人が出来てね…どう接しようか悩んでるんだ。」

苦虫を噛み潰したような顔をしながら僕は説明していた。それを終始聞いていたヤツは首を傾げながら僕にこんなことを言う。

「なーるほど!もう何回か会って話してるんですね!だったら話は早いっすよ。」

飄々とヤツはそんな事を言った。それがどれだけ大変な事なのか分かっているのだろうかと…つい不安になってしまう。

「どっかに出かけようって誘えば良いんすよ。それで告ればズドンっす。」

そんな事を言った後輩に僕は慌てながらこんな言葉を返していた。

「お前…よくいきしゃーしゃーとそんな事が言えるな!?僕は恋愛未経験なんだぞ!難しすぎるだろ…。」

「え〜?じゃまさかぱいせん…童…」

僕は後輩が口にする言葉を急いで止めていた。理由は単純に言われたくなかったからだ。全く…此処が何処なのか分かって物事を言って欲しいものだ。

「おい待て…それ以上言うな。」

そう言葉を返した後ブツブツと小言を言う後輩を見て僕は、倉庫に行こうとする…その時後輩に呼び止められ…こんな事を言われた。

「佐久間ぱいせんって今日昼上がりですよね?ちょっとこの後付き合ってもらうっす。」

そう言われ僕嫌な予感がした。あー…早く昼にならないでくれ…と心の中で呟いていた。


昼になり帰り支度を済ませた僕は…従業員入口の前で待っていた。全くお昼はどこも混んでいるというのに…何をするつもりなんだと考えながら携帯を開こうとした。

「佐久間ぱいせん!遅くなりました!」

そう僕を呼ぶ声が聞こえた為僕は、その声のした方向へ視線を向ける。そこには私服で派手になったさっきの後輩が、僕の名前を呼び駆け付けていた。

「遅い…んで…どこに行くのかな?教えてくれなきゃ分からない。」

そんな風に質問を投げかけると…後輩は当たり前の様にこんな事を言ってきた。

「え?言ってませんでした?服買いに行くって…。」

その言葉を聞いた瞬間僕は呆れたような溜息を零し…強い言葉でこんな事を言った。強く言い過ぎと言われるかもしれないが…こればかりは聞いていなかったので無理もない。

「選手交代を希望する。」

「ええーっ!?なんでですか?」

後輩がそう言った後僕は、その疑問符に答えを返していた。

「当たり前だろ!大体…今のスタイルが僕は気に入ってるんだ…だから触らないでくれ。」

しかしそう言っても後輩がその考えを改める事は無かった。

「ぱいせん…その私服は流石に無いっす。だから買いに行きましょ!ね!」

不気味に笑みを浮かべながら僕の腕を引っ張るソイツを…僕は振り払う事が出来なかった。

「…諦めるしか…無いか…クソっ!」

そう言って僕は後輩に、腕を掴まれ服屋を目指して足を進めることになっていた。

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