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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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憧れから来る恋の終わり

真夜中の自室で、私はベッドの上で布団にくるまっていた。今日は一段と眠れない。でも…仕方の無いことかもしれない。理由はあんな所を見てしまったから…遠江先輩のと琴葉さんがあんな事をしているのを窓越しで見てしまったから。

「遠江先輩…琴葉さんが好きなんだな…私じゃ及ばない…か。」

乾いた声で笑い私は夜空を見上げた。携帯のメール通知が来たのはそんな時だった。相手は…恭君だった。

「今から会えないか?君の家の近くにいるんだ。…ね…」

私は画面に書かれている文章を見た後すぐに指が動いていた。何故すぐに指が動いていたのかは分からない。今そこで誰かを感じていたかったのか…それとも単にこの虚しさを誰かに吐露したかったのか…私は自分が打った文章を声に出した後布団から離れて玄関に向かった。

「今から行きますよ…っと。」


時刻は既に夜中の二時三十分…私は玄関のドアノブを捻り外に出ようとする。ガチャ…そんな音がドアから聞こえ…私は外に出た。こんな時間に外に出るような事をしたのは初めてだったような気がする。辺りを見渡しながら恭君を探していると…何処からか聞いた事のあるような声が私を呼んでいた。

「侑李…侑李!ここだよ。」

その声が聞こえた方向を見るとそこには恭君が、草木から顔を覗かせていた。私は恭君が居ることに安心し…すぐに家の柵から道路へ越えていた。

「恭君…どうしたんですか?まさか…夜更かし?」

そんな私の質問に恭君は気さくに笑い…シルクハットを外してこんな事を言った。

「あはは…まぁね。…さてと立ち話もなんだし…近くの公園に行かないか?」

恭君のその言葉に私は首を縦に振り…私達は公園に向かった。そうして公園に着いた後二人でベンチに腰を下ろし…恭君はビニール袋の中身を取り出しながら私にある物を渡してきた。

「ここに来る道中…肉まん買っていたんだ。もし良かったら…どう?」

私はそう言って渡された肉まんを手に取った。完全に私の手に肉まんが渡った後すぐに感謝の言葉しか出なかった。

「ありがとうございます…暖かいなぁ〜…」

そう言った直後…恭君はこんな言葉を口にしていた。その言葉に…私は戸惑いを隠せなかった。

「侑李は…今好きな人とか居るのかい?」

私は貰った物を口に含もうとしたが…その質問が来たその時手を止めていた。どう言えば良いんだろう…私は遠江先輩が好きだった。でもそれは叶わぬ事で…遠江先輩にはもう別に好きな人が居ると知った…いや…知ってしまったと言った方が良いのだろう。

「居ましたよ…」

そう言葉が出てきてしまっていた。それを聞いていたのか…恭君は地面を向いて深い息を吐いた後こんな言葉を漏らしていた。

「廻のことか…」

その恭君の言葉に私は戸惑いを隠せない。しかし…恭君が口にした言葉は事実で…私が戸惑い…言い直そうとするのも無理は無い。

「あっ…いや…そうじゃなく…」

そう言いかけた時恭君は私が言い切る前に止めていた。そして夜空を見ながら私にこんな事を言ってきた。

「確かに…廻はモテると思う。学生の時もそうだったよ。クラスメイトの女子に告られたりしてさ…でもその全てを…廻は断っているんだ。僕も理由は分からなかった。でも最近になって分かったんだ…廻は琴葉君のことがずっと好きだったってね。でも…琴葉君にはもう既に彼氏が居て…それも廻の親友で…だから中々言い出せなかったんじゃないかな。そして…君は恐らく廻と琴葉君が相見える所を見て…今の心情なんじゃないのかい?」

的確だった。私の心の中でモヤモヤしている物をこんなに早く言い当てる恭君は、やっぱり人を見ているんだな…そう思った。

「…凄いですね…全て当たってるのが…恭君って超能力者かなんかですか?」

私は苦笑いを浮かべそう答えるしか選択肢は無かった。すると恭君は私を見て静かに笑い…こう言った。

「…例え君が廻を諦めたとしてもきっとすぐに…好意を持てる人が現れると思うよ。だって…侑李は優しいもん…僕よりさ!」

私はそう言った恭君の手をベンチの上で握って肩を寄せた。何故だろうか…恭君のその言葉が…その言葉だけが今の私の心に響いていく。

「……その言い方は…その…ずるいですよ…恭君…」

そう言い私の頬は赤く染まっていった。


夜明けが来る少し前…恭君は私の家の前まで着いてきてくれた。

「んじゃ…また練習の時にね」

そう言い帰ろうとする恭君を私は、無意識に止めていた。そのまま私は恭君に一言感謝をする。

「あのっ!……ありがとうございます…色々と…」

そんな私の言葉に彼は、笑顔を浮かべては一言返す事だけしかしなかった。

「そんな…僕は何もしてないよ。」

そうして恭君が見えなくなった事を確認した私は家の中へ入っていた。玄関のドアを閉め終わったあと…目線を上げこんな言葉を口にしていた。

「よし!気持ち切り替えなきゃ!」

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