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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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後悔の無い選択を

練習が終わりライブハウスでの演奏も終わらせた俺は…夜ある人物を家に呼んだ。そいつを家に招待するのが少し懐かしく感じる。祐介が死ぬちょっと前以来だろう…。そんな事を思っていると…玄関の方からチャイムが鳴り俺は玄関へ足を運ぶ。

「よう!さっきぶりだな…廻。」

俺がドアを開け…そんな言葉を言うと…そこには気だるげに頭を掻きむしりながら無表情になった廻がいた。

「…ああ…んで…いきなり呼んでどうした?特に予定は入って無いが…」

そんな風に困惑する廻を俺は家の中に連れ込んだ。そんな俺の行動に更に困惑する廻は一つある言葉を俺に吐き捨てる。

「ちょい!ちょい!待てよ!一旦落ち着こう…どうしたんだ?」

そう言う廻の方を見て俺は…笑みを零しながら廻にこんな事を言っていた。

「まままま…ちとお茶でもしていけよ?な?せっかく呼んだんだしよ。」

廻はその俺の表情を見てその提案の返答を送ってきた。相変わらず辛辣な言葉もあったが…。

「…別に良いが…後その気味の悪い笑顔やめろ…嫌な寒気がする。」


そうして廻を家に入れた俺は…珈琲を入れていた。こうやって廻と同じ空間で珈琲を入れて飲む…それが少し懐かしく感じる。

「…よしっ!できたな。」

俺はそう言い少しくすんだ色をした白いマグカップに珈琲を注いだ。俺は、マグカップを両手に廻の居るベランダまで足を運んだ。

「待たせたな。ほらよ!珈琲だ。しっかりブラックだぜ?」

俺はそう言いベランダで街の景色を眺めていた廻に、珈琲の入ったマグカップを渡した。

「すまない…頂くよ。」

そう言った瞬間俺たちはマグカップに口を付け…珈琲を啜った。俺は人の目よそにオヤジ臭い事をしていた。

「かぁーっ!やっぱ珈琲はブラックじゃねぇとはじまんねぇな!廻?」

俺のその質問に廻は、珈琲を上品に飲みながら答えを返す。そんなやり取りがどこか懐かしさを甦らせる。廻の時もそうだが…千尋の時もそうだった。

「ん?…ああ…確かにな…でも今は夜だ…ブラックは朝にしといても良かったんじゃ無いのか?…それに…僕は今日二杯目だし…。」

そんな大人ぽく言う廻を、俺はからかうように笑いながらこんな言葉を吐いていた。

「おー?おいおい…あの珈琲大好き大人の舌な遠江 廻様がブラックの珈琲を 朝に飲む物と勘違いしてらぁ…」

そんなあまりにも幼稚な俺の言葉もいつもの事のように廻は平然を装い返事を返していた。それと同時にここへ呼んだ理由も質問された。

「人をカフェイン中毒させる気か?それと…本当の大人と言うものは素早い状況判断が出来て尚且つ想像力豊かな人間だ…んで…どうして僕をここに呼んだんだ?お前がわざわざ呼び出すって事は…お節介の過ぎる話しか無いと思ってるんだが?」

流石だと思った。確かに今から話す事は廻からすれば最大なお節介に過ぎない。

「ふふっ…お節介か…別にそんなつもりは無いんだがな…まぁ…今日のはそのお前さんが言うお節介だな。その…今日来た小夏とかいう可愛い子とはどんな関係なんだい?」

俺は小言を挟んだ後本題を口にした。 その時廻は困ったような表情をして俺に質問の回答を投げかけた。

「…お前もその話題を振って来るか…まぁ良い…そうだな。元々働いていた会社の後輩…ただそれだけだよ。」

俺はその言葉を聞いた時一つ疑問が浮かんだ。それは その子とは何も無かったのか? そんな疑問しか浮かばなかった。

「元カノとかじゃないくて?とか思ってんだろ?残念だが…僕は誰かに告白されたことも無いし…した事も無い人間だ。分かるだろ?」

どうやら俺の疑問符は顔に出ていたらしく…廻がそんな事を俺に言ってきた。そんな廻にまた違う質問を投げかてみた。前言っていた事は今でも変わっていないかの確認をするために…。

「そうだったな…なぁ?前お前は琴葉ちゃんの事が好きって言ってたよな?あれは今でも変わらねぇのか?」

俺の唐突な質問に廻は夜空を見上げながら…珈琲の入ったマグカップで指を弾きながらこんな事を口にしていた。

「ああ…変わらないよ…今も…これからも。」

廻のその言葉に俺は一つ助言をする。多分余計なお世話だ…そんな事を言われるかもしれない。だが…今の俺だったらこの言葉を他人に言っても良いような気がした。

「廻よ…変わらねぇっていうんなら…生きてる間に「愛してる」だの「好きだ」だの言っとけよ。死んだらそれすら言えねぇんだぜ?」

廻はその言葉を無言で聞いていた。何も返さない廻に俺はもう一つある言葉を言った。自分がしてきた後悔をして欲しいくないから…廻には「後悔の無い選択」そんなものをして欲しいから…。

「お前は…俺みたいになって欲しいくねぇんだよ。好きな人に…「ずっと一緒に居よう」って言えなかった俺みたいにさ…。」

俺は空を見上げ…自分が抱えた後悔を廻に言っていた。しかしその言葉に何も返す事なく廻はベランダを後にしようとする。ああ…俺の声は届かなかったんだな そんな事を思っていた時だった。

「んなもん善処するに決まってんだろ…僕には裕二…お前や恭太郎…琴葉や小夏が居る。かけがえのないバンドメンバーが居る。だから…絶対後悔の無いように生きてやるよ。」

ベランダから出る直前廻は、そんな事を口から吐き出していた。その言葉に俺は少しだけ安堵して視線を下に落としていた。


珈琲が飲み終わり…俺たちはリビングに戻っていた。廻はタンスの上にある写真立てを指指しながらこんな質問を俺に投げかけていた。

「この写真に写っている人がお前の好きな人か?」

その言葉と同時に俺は、後ろを振り向き…廻の様子を伺いその質問の返答を返した。

「ああ…そうだな。でももう会えない。」

俺がそう言った後廻はまるで全てを悟ったかのように深みを帯びた声で一つ言葉を零す。

「……そうか…。」

廻が指さした写真には千尋が写っていた。この写真は…中三の時…確か遊園地へ遊びに言った時に、千尋には内緒でこっそり一枚撮ったものだった。

「でも…もう会えないけど…またいつか会える時まで今を生きるって決めたんだ!俺。だから…必死に生きるよ…今を…。」

そんな決意を俺は廻に向けて言葉にしていた。すると廻は静かに笑みを浮かべ俺に激励の言葉を手向けた。

「…じゃ頑張って生きてやれ。今っていう時をさ…。」

その言葉に俺は、一間置いた後笑いながら言ってみせた。廻を心配させない為に…。

「あたぼうよ!こんなクソッタレな世の中を生きなきゃやってけねぇぜ!」

マグカップを洗い終えると同時に廻は俺にこんな言葉を残しその場を後にした。その背中は、何処か覚悟が出てきた様な背中になっていた。恐らく入院中色々と考えたのだろう。

「んじゃ…僕は帰るよ。また練習の時に…あー…後裕二…あまり固くなんなよ。」

そう言い俺の家から廻は、去っていった。


廻がこの家を出ていってしばらく経った後。俺は廻が気にしていた写真を見ながら微笑んでいた。そして自然とこんな言葉が口から出ていた。

「なぁ?千尋?俺は今を楽しんでるよ…。」

そんな事を口に出しなながら俺は、写真の前に置いてある線香立てに線香を立てていた。そして…自分の部屋に戻りながら自分を鼓舞するかの様に廊下でこんな言葉を叫ぶ。

「よっしゃ!やってやるぜ馬鹿野郎!」

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