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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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下手っちょな愛し方。下手っちょな愛され方。

あの日…僕が入院した日から二週間が過ぎていた。キツい治療生活も今日で終わる…そう思うと長いようであっけなく終わった二週間だと僕は思う。診察室に入ると医師は、苦虫を噛み潰したような顔をして僕の方へ目線を向けた。そして…

「遠江さん…一応結果だけ言うと…まだ手術可能まで至っていない。だけど…余命を伸ばす事は出来てはいる…で後もう少し治療を続ければ…恐く手術可能になるまでは抑えることが…」

そう医師が言葉を口にしているのをよそに僕は言葉を挟んでいた。

「良いですよ。」

そう言った後診察室は静かになった。医師は理解したのだろう…そんな深く問いただす事はしなかった。

「つまり…治療はもう良いと?」

その言葉に僕は首を縦に降り…苦笑いを浮かべこんな事を吐き出していた。

「人はいつか死ぬ。それは誰でも同じで…僕はそれがたまたま早かった…ただそれだけだと思うんです。それに…もし仮に手術に挑んで助かったとしてもそれで終わりじゃないんでしょ?もしかしたら転移しているかもしれない…だったら…もういっその事この一回で割り切ろうと…ね。今なら楽しかったって言って最期を迎える気がするので…。」

その言葉に医師は無言だった。僕が言い終わると同時に医師は、否定も肯定もしないような言葉を僕に言った。

「そう…ですか。でももし…「まだ生きたい」そう思えてしまったら…早めに僕らを頼ってください。」

そう言って診察は終わった。僕はまとめた荷物を持ち病院を後にした。今思えばこの僕の判断は…我儘なのだろう…でも…それでも一種の覚悟はもう出来ている…ならもう大丈夫だと思うしか今の僕にはそれしか出来なかった。


病院を出てバス停でバスを待っていると…背後からいきなりどつかれた。それに反応して僕が後ろを振り向くとそこには…裕二がいた。

「お前こんな所で何をしている??」

そんな僕の問いかけに裕二はニヤニヤと笑みを浮かべ僕の退院を祝福した。素直に祝福出来る状況ではないが…

「お前!なーに言ってんだ!?お前の退院祝いをするためだっての!ってことで…おめでとう!」

そう言った裕二に僕は鼻で笑うように静かに笑い声をあげた。そんな僕の行動に裕二は少し不満げな顔をして僕に文句…というかツッコミを入れてきた。

「おいっ!何が不満なんだよっ!じゃねぇと俺わっかんねぇぞ!廻!」

そんな裕二を見て僕は苦笑いを浮かべこんな言葉を口にしていた。

「なんでもないよ…なぁ?裕二?もしもの事があったら…そんときはバンドを頼むな。」

そんな僕の言葉に真剣な顔をして裕二は、ある言葉を口にする。

「何言ってんだ…おめぇが居なかったら成り立たねぇだろうが。」

その会話をした後僕らは近くのレストランで食事をした。その後恭太郎とも合流してある場所に向かっていた。

「よう!恭太郎!待ってたぜ!」

そう言いながら恭太郎に近ずいていく裕二を見ていると高校時代を思い出す。僕ら四人は…どこの学生バンドよりも仲が良かった事を。それにしても…裕二も恭太郎も…僕が入院する前と後で比較すると少し大人になった様な気がしてならない。僕の見間違いなのか…それとも事実なのか…分からない。

「おい廻?おいっ!廻ってばよ!」

裕二のそんな声に反応したのはそんな事を考えている時だった。僕らが集合した場所は…僕らの原点になった…母校だった。裕二と恭太郎はこの場所になんの目的が?そう思っていると

「よし!先公から許可貰ったし!校庭行くぞ!」

そんな事を裕二が言ってきた。その言葉に従うがまま僕と恭太郎は裕二の後を追う。そしてたどり着いた場所は…校庭の片隅に置かれた倉庫の目の前だった。

「こんな所に何かあるのか?」

僕がそう質問しても二人は無言のままスコップを手にすると穴を掘り始めた。

「まぁ見てなって!」

裕二がそう言い掘り進めること十分…何が金属が当たる音がスコップから響いた。

「恭太郎!ちょっと助けて。」

裕二が僕に見えない様にしている為何を掘り出しているのかは、分からなかった。でもそれから裕二が掘り出している物の正体を知るのに…そう時間はかからなかった。

「これって…」

僕がそれに手を触れさせた瞬間…裕二はこんな事を言った。

「もう…こうして皆で集まるのも…もう無いからよ…だから…な?こうして集まってタイムカプセルを掘り起こして眺めようぜ。」

そうして僕らはタイムカプセルの中身を覗いた。中には、ギターのピック…ドラムのバチ…ピアノの楽譜…そしてCDが入っていた。

「GOLDEN YEARS SINGLES…もしかしてTHE YELLOW MONKEYか?」

その色褪せたCDのジャケットを見てすぐに祐介の物だと分かった。そんな僕に恭太郎がこんな質問をしてきた。

「車の中で聞いてみる?」

そんな質問に僕は首を縦に振った。その直後裕二が僕の肩を叩き恭太郎の車に誘った。

「決まりだな。」

そうして僕らは学校を後にし…恭太郎の車に乗り込んだ。そして…カーオーディオにそのCDを入れる。色んな曲が流れてきた。僕らがバンドで演奏した曲だったり…僕と祐介が帰り道に聞いていた曲も収録されていた。そして…家に着く頃には最後の曲になっていた。

「あがり目とさがり目のモヤモヤを束ねいて残さずに捨てることは抱えるよりそれよりもねぇ?」

その曲を聞くなり僕らは学生時代を思い出す。僕にとっては最初で最後の同窓会であり…少し早めの同窓会になった。恐く裕二と恭太郎が友としての僕に出来る愛の表現方法なのだろう…そんな不器用な二人に僕は

「…下手くそだな…」

そう小さく言葉を吐露していた。


あれから少し経った現在。辺りは夕暮れのせいで薄暗かったが何処か暖かった。

「さてと…二週間ぶりの帰宅だな。」

そう言い鍵を回してドアノブを回したが…ドアが開かない。確かに鍵は琴葉と裕二に託したはずだ…もしかして…そう頭の中で考えまたドアの鍵を回した。その直後にドアノブを捻りドアを開ける。すると…

「あ!ただいまーっ!お風呂にする?ご飯にする?それとも…わ・た…」

と何故か家に居る琴葉がそう言いかけたと同時に…僕はドアを閉めた。きっと僕は治療に疲れて家を間違えたんだ…そう思い家のネームプレートを確認する。…間違いだったらどれだけ心が楽だっただろう。

「まぁ…僕の家だわな…アイツ。」

そう言ったその直後…ドアが開き琴葉が僕の所へ駆け寄り僕に抱きついた。

「…ただいま…ずっと待ってたよ…廻。」

その言葉に僕は無言を貫いた。それから僕らは家に入った。

「シャワー浴びてくる…入ってくんなよ。」

そう琴葉に念押しし…僕は洗面所に向かう。そうして服を脱ぎ…スボンを脱ごうと手にかけた時だった。後ろから琴葉に抱きつかれた。しかし…琴葉の暖かさは…服越しで感じるものでは無いとすぐ分かった。

「おい…服と下着脱いで何抱き着いてんだ。」

僕は振り向かず…琴葉に問いかける。そんな僕の質問に慌てながらも琴葉は答えた。

「振りほどかないで!…今は…廻を…廻を…感じてたいの。」

そう焦りながらも言葉を零す琴葉を感じ…僕は瞳を閉じて琴葉の言葉に抵抗しなかった。昔もこんな事があったな…そんな事を今になって思い出す。

「……好きにしろよ。」

そう言った途端抱き締める力が少し強くなった。全く…琴葉も裕二も恭太郎も…皆愛し方が下手っちょで愛され方も下手っちょみたいだ。

「まぁ…それは僕も同じか…。」

そう言葉を吐露したその日は…秋なのに何処か暖かった。

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