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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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それでも生きたい理由

朝目が覚めるとここ二週間の定番になった健康チェックが始まった。特に問題が無ければ…ダルい日もあった。そして…それは今日も行われたが…今日は朝一番でこんな事を言われた。

「えっーと…あ!遠江さん…今日は朝一番で治療のほう入っていくので…そこのところお願いしますね。」

看護師は、そう言って病室を後にする。僕は身体を起こし…窓から見える景色を眺めていた。

「夜と朝じゃ…全然違うな…ここから見る景色はさ…。」

そう言葉を零し…ベッドの上に座り込みボーッとしていた。こう何も考えずに過ごすのも悪くないが…今の僕を思うとなんとも無駄な事なのだろう。

「じゃ…準備出来たんで…行きましょうか!」

看護師にそう言われるまで僕はベッドの上から動かなかった。僕は少しばかり驚いた後にこう言葉を返した。

「…!あー…はい…」


治療を終え…病室に戻った直後僕の居る病室に一人客人が入ってきた。しかし…裕二や琴葉…恭太郎でも無い別の人物だった。だが僕はその人の事を知っている。何故なら…その人は、元々働いていた会社の上司だった人物だったのだから。

「お久しぶりです…宮崎さん…」

僕はそう言い視線を上げると…そこには少し痩せた体型の三十後半位の男がそこにいた。

「久しぶりだな…遠江。聞いたぞ…今の状態を。」

その人…宮崎さんは…苦笑いを見せながら僕にそう言った。やっぱりこの人は変わらない…そう心に留め僕は…少し察しが付くような口調でこんな質問をした。

「アハハ…じゃあ…もう僕がどうなるかも…知っているんですね?」

僕がそう聞くと宮崎さんは無言を貫いた。恐らく自分の口から言いたく無かったのだろう…最終的には苦虫を噛み潰したような顔をして僕に言った。

「……ああ…知ってるよ…なんで俺に言わなかった?…馬鹿野郎が…言ってくれたら…社長や部長に言って…説得させてたのによ…。」

そう文句みたいな事を呟き…宮崎さんは椅子から立ち上がった。そして…

「なぁ?屋上で景色見に行かねぇか?お前…そういうの見るの好きだったろ?」

宮崎さんは そう提案をしてきた。僕はすぐにその提案の答えを返していた。まぁ…ここの病院の屋上は最高に景色が良い…それを見ながら話す事が今では日課になっている。

「良いですね。行きましょうか。」

そう言った後僕らは、屋上へと歩を進ませた。


屋上へ着いたと同時に僕は景色を眺めていた。なんと言うべきか…宮崎さんが言っていた事は本当の事だと…自分でも自覚している。

「おい!お茶買ってきたぞ。」

そんな言葉が僕の後ろから聞こえた。ふと振り返ると…そこには缶に入っているタイプの緑茶を二本持った宮崎さんだった。そのまま僕に近付き…緑茶を手渡しされた。

「すいません…わざわざありがとうございます。」

感謝を伝えた後缶のプルタブを起こした。カシュッ!と音を立てた。そして…プルタブを戻し缶に口をつける。ヒューヒューと風がなびく中宮崎さんがこんな事を言っていた。

「凄いよな…ここからの景色ってよ…なぁ…遠江?後わずかな時間しか無いと分かった今…辛い状況でも生きたい理由…ってなんだ?お前がただこの状況をのほほんと生きているだけ…それだけだとは思えないんだ。」

僕はその質問の様な言葉にどう返すか考える。その言葉を聞いた三十秒経った頃に僕はその言葉に答えを返した。

「…今僕には大切な人がいるんですよ。その人は長年の付き合いがある人でして…でもその人の気持ちを…こんなになるまで分かってやれなかった。だから今を生きてるんです。もし…最期にその人に看取られるなら…笑顔でさよならと言いたいから…それが理由です。後わずかな時間しかなのに…それでも生きたいいんです…今という時間を。」

そんな回答を、した後宮崎さんは少し微笑みながら僕を励ます様に言葉を綴った。

「そうか…お前ならやれると信じてるから…頑張れよ。遠江。」

僕はその言葉に対し二つ返事をしながら首を縦に振った。それと同時に自信がある様にこう言葉を紡ぐ。

「…はい。やってみせます…必ず…。」


病室に戻る際にも僕らは会話を続けた。今後の事や…今話題の事や…お互いの周りの事など…出せば話題は尽きなかった。

「あー…そいえば。」

そう言い宮崎さんは一つ話題を出した。その内容に僕は、少し驚いてしまったが…。

「お前にクビを言い渡してきたあの人…捕まったぞ。なんでも一人の女性にみだらな行為を繰り返していたんだとか何とか…」

その言葉を聞いた途端耳を疑ったが…そいえば朝治療室に行く時…診察棟のテレビでそんなニュース流れてたな…と思い出した。

「えっ…マジですか?そんな事をするようには思えなかったんですが……。まぁ…」

僕がそう言葉を出し最後ある言葉を言いかけた時に宮崎さんは僕の言いたいことを予想してこんな事を聞いてきた。

「ざまぁみろ…って言いたかったか?」

その質問に僕は笑いながらも必死に答えた。だって…本当にその通りの答えだったのだから…。

「そうですね!あー…本人の前で言えたらなぁー…。」

こんな感じに会話を続けながら歩いていくと…僕の病室までそんなに…かからなかった。名残惜しいが…面会時間が残って無いため宮崎さんは帰路につくつくことにした。

「ホント…お前ともう少し話したかったよ…今度いつ会えるんだろうな?遠江。俺はな…お前の事を最高な奴だと思っている。それはずっとだ。だから…お前の最期の願いが叶う事を祈っているよ。」

そう言って宮崎さんは後ろに振り向いた。その後どうやって僕のことを知ったのか分からなかったので…去り際に僕は少し離れた場所からこう聞いた。

「…あの!どうして僕の事が分かったんですか?」

その僕の質問に宮崎さんは少し首をこちらに向けながら言ってくれた。

「たまたまだよ…たまたま用事があってお前の名前見て…ナースに聞いただけだ。」

そう言った後宮崎さんは階段のある扉に消えた。僕は宮崎さんの背中を見送った後小さな声で呟いた。

「叶えてみせますよ…きっと…。」

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