怯えた君の瞳と僕の決意
朝日が昇る少し前。僕は電車に乗って揺られていた。僕はバンド活動の他に「夜景撮影」をする事が好きだったりする。後二駅で自宅近くの駅に着くが…その前に繁華街の駅に停る。そのネオン街の明かりは、まだ太陽の光が完全に出ていない日の出前の街を明るく染め上げていった。
「眩しいな…やっぱりネオンの光は遠くで見るに限る。」
そう言ったその直後始発電車に乗ってくる人だかりに僕は見知った人物を見つけていた。そして僕はその見知った人物に声をかけていた。
「…あれ?こんな時間にこんな所で何をしているんだい?小夏君?」
そう言った僕の目線の先には、小夏君が居た。しかし…昼に見る小夏君と比べると…だいぶ服装が大胆だった。赤く色っぽいドレスといかにも高そうなカバンに…薄化粧までしているのだ。
「あっ……小夏?だ…誰の事ですか?」
そう言ってカバンで顔を隠す小夏君。人だかりが二連連結した車両に移ったタイミングを見計らい…顔を隠していたカバンを退けていた。
「ひゃっ!」
そうして退かしたカバンが車両の床に落ちてゆく。やっぱりそこに居たのは紛れも無く小夏君だった。
「あ…あ…あの…失礼しました…」
そう言い後ろの車両に行こうとする小夏君の腕を、僕は無意識に掴んでいた。まるで後には行かせない様にする為に
「あの…や…や…やめ…」
そう言っている小夏君は何かに怯えてるのは明確だった。そんな小夏君を僕は落ち着かせるように言葉を紡ぐ。
「小夏君。僕だ。佐久間だ。覚えているか?」
そう言った後小夏君は我に返ったかの様に僕の受け答えに応じた。しかし終始見せていた笑顔は心の底から笑っている…そう言えるものでは無かった。
「…あ…佐久間さん…アハハ。」
そんな小夏君を見た僕は、小夏君を連れ次の駅で降りることにした。これは…何かにあったに違いない…そう僕の勘は言っていた。
「次の駅で降りよう。」
電車を降りて…駅から出て十分間僕らはひたすら歩いていた。そして…学校終わりに小学生が集まりそうな雰囲気な公園に着いた。僕は、その公園内のベンチに小夏君を座らせた後すぐ近くにある自販機で飲み物を買うことにした。理由は何か飲んで落ち着かせた方が喋ってくれると思ったからだ。
「近くに自販機があったから…何か買ってくる。」
そう言い残し僕は自販機へ足を運んだ。しかし小夏君のあの怯えよう…恐らく何かよからぬ事に巻き込まれたか…それとも…その被害者か…そんな事を連想させるような表情だった。
「嫌な予感がする…あれは何かあったな。」
そう言い僕は缶コーヒーとココアを買った。そしてすぐに小夏君が居るベンチに足を急がせた。
「ん…君が好きそうなの…これしか無くてさ…すまないね。」
僕は、そう言い買ったココアを小夏君に渡して自分の缶コーヒーを開けた。今思えば…僕らはほぼ同じタイミングで飲み物を口に含んでいた。そして飲み終わりそうになった時小夏君はその重苦しい言葉を口にした。
「佐久間さん…その…多分もう会えないです。私は…馬鹿ですし…周り見えてないですし……ふしだらですし…」
声がだんだん小さくなっていく小夏君を見て僕は一つ提案をした。理由は至ってシンプルなものだ。恐らく…いや…確実に小夏君は、何かよからぬ事に巻き込まれている。正しくはその被害者の可能性が高い。そんな彼女を僕は放ってはおけなかった。
「今日も出かけるんだろ?なら僕と一緒に行こうじゃないか。」
しかしこの僕の提案に小夏君は中々頷いてはくれなかった。まるで僕を巻き込まない様にするように否定していたのだ。
「え?…いや…大丈夫ですよ。自分の事ですし…。」
それでも何度か同じ提案をしていた。色んな理由も付けた。だってもし何かあったらでは遅いから…それで一生会えないとなるのは寂しいから…だから僕は提案し続けた。
「いや…一緒に行こう。どちらにせよ…僕も繁華街に用があってね。」
そうして何とかして小夏君を一人にさせないようにする事が出来た。確かに小夏君と僕は、はたから見たら…一週間前に出会ったばかりの赤の他人だ。でも小夏君の笑顔を見ていると何故か僕も笑えてくる。楽しいという雰囲気になる。それが無くなるのが怖い…そう言われたら図星だったりする。それを防ぐための自己満足だが…それでも良かった。
「……分かりました。じゃあ…吉野駅に十八時集合で…それと…やっぱり……なんでもないです。」
そうして僕らは家路についた。僕は自宅に戻ると着替えながら決意する。小夏君を守ると…今の僕に出来ることはそれしか無いと。
「頼られた訳じゃない…でも…あの笑顔を失いたくない…」
着替えを終え…バックを持ち…僕はバイト先に行くため家を出た。そのまま僕はバイトが終わったら帰らないと決めた。そして…玄関のドアを開け家を出て…閉まりきる寸前のドアと同時に声を被せた。
「……行ってきます。」
ガチャン…そう言い終わった直後にドアがたてた音を背に僕はバイト先に向かった。まるで何かを決意したかのような顔つきで……。




