俺が抱えた「後悔」お前がくれた「チャンス」
同窓会の会場の文化センターに着いた。俺はその会場の扉を、開けた。すると当時の友達やクラスメイト…同級生がワイワイと賑わいを見せていた。
「えーっと…あー…あそこか。」
俺はそう言い自分の名前が書かれたプレートが置いてあるテーブルに座った。しばらくするとクラスメイトの一人が俺の座っていたテーブル席に来て声をかけてきた。
「お!轟じゃん!お久!」
俺はそんなクラスメイトに昔ながらの挨拶を交わしあった。
「お!元気してたか?あ!久々の…ウェーイ!…」
そんな使い古しの挨拶をしてくる奴。当時お互い気にかけてたカップル予備軍。千尋の友人や…恭太郎のファンだったとか言ってる奴と…同窓会は多彩な奴らが揃っていた。しかし…千尋の姿が見えない。気になった俺は 千尋の友人 に声をかけてみた。だがその返答は…あまりにも曖昧だった。まるで何かを隠すかの様に。
「あー…えーっと…二…二次会には来るって…言ってた…かな?」
俺はそんな曖昧な答えに疑問を抱きながらも同窓会を楽しむ事にした。それでも心の何処かには引っかかっていたが…。
「うーん…来てくれても…良いのにな…なんで同窓会だけ…ま!二次会で会えるならその時に言ってやろう「ドラマーになったからまた一緒にジャズ演奏やろうぜ」ってさ!…まぁ…廻には申し訳ねぇがな。」
そう言って俺はビュッフェ等がある場所からコーラを持ち出し一口含んだ。そうやって同窓会を楽しんだ。
そうして同窓会が終わり会場になった文化センターの近くにある居酒屋で、二次会を行う事になった。俺は千尋が来るのが楽しみになっていた。なんて声をかけようか?どうジャズ演奏に誘おうか?どうドラマーになった事を言おうか?ずっとずっと…それだけが頭の中を駆け巡っていた。
「千尋…俺はお前に会えるのが楽しみだぜ。」
一人そんな事を言い居酒屋へ入店する。店に入り皆がいる所に行くと…同窓会ほどでは無いが賑わいを見せていた。それでもその場に千尋の姿は無かった。終わりらへんに来るんだ…そうだそうに違いない。そう自分に言い聞かせていたその時…ある一人の発言に俺は…現実そんな言葉に目を背けようとした。
「あー…夕月もあんな事が無ければ…今頃この会に参加できたのにな。」
その言葉に俺だけで無く…周りも凍り付いた。一瞬全員が無言になっていたが…その後一人はその言葉を言った奴を問い詰め…その周りはざわついていた。
「ちょっ!…おま…!馬鹿!何言ってんだよ!裕二がいる前では夕月の事関連の話はタブーだっただろうが!」
俺は、ざわついていた二次会参加メンバーを押しのけて喧嘩をしている二人の元へ行った。喧嘩の仲裁と…今の発言の意味を聞くために…。
「おい…何不毛な言い争いをしてんだ?あ?後…てめぇら…俺に何隠してやがる?おい…てめぇは知ってるんだろ?なぁ?」
俺はそう言い千尋の話題を出してきた奴の胸倉を掴んでいた。何も言わず怯えてるだけの奴を見て俺はソイツに殴りかかろうとしたその時…野次馬の中から一つ声が聞こえた。その声は千尋の友人の声だった。
「もうやめてっ!…」
そう響いた叫びに誰もが沈黙を通す。それは俺も例外では無かった。俺はそう叫んだ千尋の友人に近づき質問をした。さっきから…いや同窓会が始まってから感じている違和感を…。
「んならよ…何か隠してんだろ?それを教えてくれよ…夕月と…千尋と関係してんのか?…」
俺は感情的になりながら聞いていた。恐らく声色も何時もの感じじゃ無かった気がした。すると…千尋の友人は涙を見せながら俺に話してくれた。だが…その答えに俺は「聞かなければ良かった」と後悔した。
「…ちーちゃんはね…千尋はね…アメリカで…2年前に…事故で……死んじゃたんだ……よ…。」
その言葉を聞いた後俺の心の中は 無 ただそれだけになった。千尋が死んだ…そんなの出来すぎた冗談だと思いたかった。でもその言葉は、俺に理不尽な現実を伝えてきた。
「………本当だよ?…」
その後俺はどう家に帰ったか覚えていない。だが…手にはTHE BLUE HEARTSのアルバム「DUGOUT」を抱えていた。このアルバムは俺がこのバンドを知るきっかけになったもので…千尋が好きだったアルバムだった。そのアルバムの後ろにはビニールテープが貼ってありローマ字で「千尋」と書かれていた。
二次会を途中でバックれて俺は、千尋の家へ向かった。皆が言っていた事が事実かどうかを確かめるために…三十分ぐらいかけて俺は千尋の家に着いた。走っていた為息が上がっていたが…今はそんな事より千尋な死んだ…それが本当なのかを知りたかった。
「ごめんください。轟です。誰か居ませんか?」
そう言いインターフォンを押した。その十秒ぐらいたった頃…声と共に玄関が開けられた。その声は少し暗めなトーンの声だった。
「はーい…」
そう言って出てきたのは…三十歳位の女性だった。もしかして…この人が千尋の母親なのか?俺はそう思いながら言葉を絞り出した。
「あの!…ここって…夕月 千尋さんのご実家でお間違い無いでしょうか?」
俺がそう言った後すぐにその女性は答えを返してくれた。苦笑いを出しながら俺の名前も確認していた。どうやら俺の事が誰なのか…知っているらしい。
「あら…娘の事を知ってるの?…あれ?まさか…君が生前娘が言ってた…轟君なのかな?」
俺は千尋の母親の言葉に目線を下に下げて頷いた。その俺の反応を見た後千尋の母親は、少し待っててと言い…俺に一つのCDを渡してきた。
「これ…千尋が持ってたCD…あの子は何も言い残さず…この世を去ったけど…もし轟君と会えたら…これを渡すって言っててね…貰ってくれない…かな?」
そのCDを渡された後俺はお礼をしてその場を後にした。
家に戻り…すぐに自室に向かった俺の表情は…恐らく何処か暗かったのだろう。兄貴から心配している事を言われた。そんな声も冷たく返してしまった。
「……大丈夫だから…今は一人で居させてくれ…。」
そう言った後俺は自室のドアと鍵を閉め…そのCDをラジカセに、入れていた。そして…一番最後に収録された曲を選択し…それを聴きながら目を瞑った。すると…千尋との思い出がまるでビデオの様に瞼の裏で再生されている。上手く叩けなくて挫いた時や…帰り道に河川敷をひたすら歩いた時や…花火の上がる夏祭りの時も…千尋は傍にいた。そして…中学卒業と共に俺達は離れ離れになったのも…覚えている。確か…次会う時の約束をしていたっけな。
「次会う時は…俺はドラマーになった時だな。」
俺はそう言い約束した。そんな俺の言葉に千尋は、笑いながら約束してくれた。千尋自身が俺と会う時の約束を…。
「じゃ!私はサックス奏者になって帰ってくるよ!その時は…またジャズをやろっか!」
夕焼けに照らされながら俺は、目を隠す様に腕を顔に押し当てた。そして泣きそうな声で一人後悔していた。どうしてチャンスを掴んだ後に後悔が着いてくるのだろう…そんな愚痴を零しながら…。
「ああ…どうして…お前がチャンスをくれた後に…後悔が来るんだろうなぁ…なぁ?……千尋。」
そう言った日はちょうど廻が入院して一週間後の…夕方のことだった。




