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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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弾き語り

目が覚めるとそこは見覚えの無い天井だった。寝起きの僕がふと辺りを見渡すと僕を背に向け小夏君がアコースティック・ギターを弾いていた。その弾いてる曲は、今でも思い出してしまう程鮮明に僕の記憶の中に入っていた。

「はっきりさせなくてもいい。あやふやのまんまでいい。僕達はなんとなく幸せになるんだ。何年経ってもいい。遠く離れてもいい。ひとりぼっちじゃないぜ。ウィンクするぜ。」

小夏君の歌声と共にアコースティック・ギターの透き通った音色が響く。僕が小夏君の方へ首を向けると僕に気が付いたのか…いきなり演奏を辞め後ろを振り返った。

「あっ…起こしてしまいましたか?すいません!でも少しでも練習したくって…。」

そう言った小夏君に僕は、起き上がりながら一言声をかけた。何故なら懐かしい思い出が心を潤わしてくれていたから。

「良いよ…むしろ続けてくれ。」

僕がそう言うと小夏君はニコッと笑みを浮かべ…僕の期待に応えるかの様に返事をした。

「はい!そうさてもらいますね!ありがとうございます!」

そう言われた僕はそんな小夏君の演奏を耳に入れた。目を閉じて聞いているとふと…瞼の中で中学生の頃の時が映画の様に僕に思い出させた。


中学二年の時僕は、たった一人下校中の河川敷でくつろいでいた。一人ため息をついていると左側から誰かを呼ぶ声が聞こえる。

「おーい!そこ!お前だよ!そこでくつろいでるお前!」

その声が、する方向へ目線をやるとそこには…僕と同じ位の男女ペアがいた。僕はそのペアと共に行動することが多くなっていき…いつの間にか得意な、ピアノ演奏を聞かれていた。その時あの二人からこんな事を誘われた事を今でも覚えている。

「なぁ?佐久間…だったけ?ジャズ演奏とか興味ねぇか?もしあったら俺らとやろうぜ。」

そう質問された当時僕は少し躊躇っていた。だって頼られたくなかったから。だから僕はその誘いを何度も断っていた。

「生憎と…僕は誰かと一緒に演奏出来るほどの腕は持っていない。他を当たってくれ。」

そう言っても彼は何度でも僕を誘ってきた。そんな彼の根気強さに僕は根負けしてしまい…その誘いにいつの間にかのっていた。

「そんなに僕が欲しいか?僕なんて仲間に入れてもメリットなんて言葉は付かないぞ?」

そう言った後彼は、笑いながら僕に言った。その高らかな笑い声はどこか僕のピアノの腕前等関係無くやってみたい…そう言っているようなものだった。

「何言ってんだ!メリットデメリットなんざ関係ねぇ!お前…面白そうだし!な?どうだ?やるか!?」

そんな言葉に僕はため息をついて…軽く自己紹介をした。単に名前を言っただけだが…

「恭太郎…よろしく。」

僕が自己紹介を終えた後二人は交互に自己紹介をしてきた。今思えばこれが…僕の原点だった気がしてならない。

「俺は…轟 裕二だ!よろしくな!恭太郎!」

「夕月 千尋!お互いよろしく!」

そんな二人の自己紹介の後僕は少し笑いながら…二人の言葉に答えるかのように一言声を出した。

「ああ!」


また瞼を開けると小夏君の演奏は終わっていた。小夏君はベッドに座り込んでいた僕に目の高さを合わせながら質問してきた。

「どうでした?まだまだアマチュアですけど…お気に召しましたか?」

僕は少し考え込みながら…演奏に対しての感想を言った。個人的に言わせれば…路上ライブが出来てもおかしくないぐらいの腕前だった。

「うん…良いんじゃないかな…君…素質あるよ。」

そう言った後小夏君は照れながらも僕に質問してきた。

「えへへ…あー…でもこの曲遠江先輩が口ずさんでた曲なんですよね…確か…THE BLUE HEARTS…だったけ…どんなバンドなんですか?」

そんな小夏君の言葉に僕は答えを返した。しかし僕もそう詳しい訳じゃなかったため答えが曖昧になってしまった気がした。

「そうだな…パンク・ロックってヤツだったと思う…もう十年前に解散してるからなぁ…廻に聞けば話は早いんだろうけど…」

そう不確定な答えを言ったとしても、小夏君は笑顔を崩さない。むしろ聞くのを楽しみにしているような表情を僕に向けた。それと同時にある言葉を僕に言ったのだ。その言葉に僕はどう返して良いか分からなくなった。

「はい!聞いてみる事にします!後…佐久間さんのピアノ演奏…また聞いてみたいです。」

あー…これは期待されているかどうか…けんとうも付かない。僕は少しだけ考え込みその願いに対する答えを言っておいた。

「ああ…そのうち…近いうちに…演奏する日が来るかもな。」

そうして僕は小夏君の家を後にする。でも当の本人に僕は引き止められてしまった。

「あ!待って下さいよ!また倒れてしまったら困るので…ね?ご同行します!というかそうさて下さい!」

僕はそう言って来た小夏君に苦笑いをしながら…その言葉に答えを返した。

「ああ…まぁ…ありがとう。」

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