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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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良い奴ほど

昼下がり。病室のベッドで横たわっていると…誰よりも懐かし来客が、僕の元を訪ねてきた。病室のドアが開き…その人物が顔を出すなり僕は透き通った様な薄い笑顔でその人を歓迎した。

「お久しぶりですね…翔さん。」

僕がそう言うと裕二の兄…翔さんの姿があった。裕二の兄は、様々なバンドにギタリストとして参加していた人だ…現在は独立してライブハウスを経営している。そもそも裕二と翔さんの父親がライブハウス経営者だったため起業にそんな手間をかけなかったらしい。実は、僕も何度か行った事があるため…裕二に兄が居るのは知っているし…その人物がギタリストなのも知っている。

「昨日裕二に聞いてね…見舞いしに来た。」

そう言い翔さんは僕がいるベッドの横にある椅子に座り込んだ。

「裕二から聞いたって事は…僕の様態も知って来ているってことですよね。」

翔さんが座り込んだと同時に僕は口を開き…翔さんに質問をした。しかしその質問の答えは…今の僕の事を知っている者はすぐに返ってくるものだった。

「ああ…知ってるよ。もう長く無い事も…全部…裕二から洗いざらい聞いたよ。」

そう言って翔さんは視線を床に落とし…肩にかけていたショルダーバッグからエナジードリンクを、取り出しながら…ある言葉を零した。

「…良い奴ほど……早く逝くもんだ。祐介君もそうだった。なんでこんな理不尽で不条理なんだろうな…この世の中はさ…」

そう言って翔さんはエナジードリンクの缶を開けそれを口に含んだ。その時の翔さんの顔は笑っていなかった。そんな翔さんに僕はバカバカしい質問をしていた。今思うとなんであんな事を質問したかは分からない。

「あの…翔さんは…この世に神様とかいると思いますか?」

僕のこの質問に翔さんはエナジードリンクを口に含みかけた所を止め…ある提案をしてきた。

「…屋上で答えを言いたいんだが…大丈夫か?」

僕はその提案に首を縦に振り…僕らは屋上へ足を運んだ。


屋上に着き柵にもたれ掛かりながら翔さんは、さっき僕がしたくだらない質問の答えを返してくれた。

「さっきの質問なんだが…俺はあえてどちらでもないとしか言いようがない。いるか…いないかのどちらかで…と言われたら…居るには居るんだろうな。としか言えん。だって…神様ってのは時に悪魔みたいにいじめるんだから。んで…じゃあ廻は神様なんて居るとおもうか?」

翔さんから返ってきた答えは…そんなものだった。確かにその答えは一理あるかもしれない。でも一つ…僕はその答えにある いちゃもん の様なものを言いそのまま会話を続けた。

「確かに神様なんているか分かりませんよね…でも僕がこうなったのも…ある意味罰が当たったんじゃないかなって思ってます。だって…祐介が死んで僕は「どうして祐介が死ななきゃいけなかったんだ?」それしか頭に入ってませんでした。でも最近祐介の部屋から日記と手紙が見つかりました。日記を読んだ時「なんでもっと気にかけてやれなかかったんだ」とか「親友なのになんでそんな事も分かってやれなかったんだ」って言葉が心の中で出てきたんです。要は…後悔という奴ですね。でそれを知る少し前に…こうなりました。だから…僕がこうなったのも…きっと罰が当たったからなんだと思いますよ。だから僕は…例え神様がいたとしても「良い奴」って呼べないです。」

僕はそう言い空を眺めた。その後翔さんが鼻で笑うように僕の回答に笑い声をあげた。

「ふっ…「罰が当たった」か…まだまだ考えが少しお子様だな。ま!それが君らしい…。」

そう言った翔さんは煙草を取り出し火を付けた後僕に言った。その言葉はどこか僕の考えに水をさす様なものだったが…あくまでも翔さんと僕の考えは一緒じゃ無い為聞き入れる程度に聞いた。

「確かに神様なんているか分からないな…でもねさっき君は自分の事を「良い奴じゃない」と言っただろ?それは違う。本当に良い奴じゃ無かったら…祐介君の事で後悔なんてしないはずだよ。だから廻君…君は「良い奴」っていう部類に入ってるんだよ。だから今の廻君の状態になったのは「罰が当たった」そんなものでは無いと思う。」

僕はその言葉にある疑問を抱えた。じゃあ…罰が当たった訳じゃないならなんなのか…それは恐らく誰も知らない事なんだろう。

「じゃあ…誰が僕をこうしたんですかね?…もしそうだとしたら…誰が?なんの為に?って思います。」

僕が静かな声でその疑問を言った時翔さんは、煙草を口から外しながら僕に言った。

「…分からないなぁ……誰がそうしたかなんてさ…」

そう言われた後僕は空を見上げた。その青い空には煙草の煙が、絵を書くかのように描かれていた。


そうして僕らは病室へ戻っていった。僕がベッドで横になると翔さんは、僕に缶コーヒーを渡して帰っていった。帰り際翔さんは僕にこんな頼み事をしてくれた。

「もう永くないのは分かってる…だけど…俺のライブハウスに少しは来てくれよ?」

そんな言葉に僕は、二つ返事で首を縦に振った。

「はい!」

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