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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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朝焼けの珈琲と君の笑顔

一晩中の練習が終わり僕は帰路についていた。休憩という休憩も取っていない為体がどっと重かったがそれでもただ自宅まで歩くしかなかった。

「…ダメだ…少し寄り道をしよう…そうだ喫茶店…喫茶店に行ってカフェインを体内に入れようじゃないか。」

僕はそう言いながら喫茶店の道のりを辿ることにした。店の前に着いた頃に僕の睡魔は限界を越えようとしていた。普通なら帰って寝る…これが定石なのだろうしかしここで帰路につき自宅で寝るとする。となると…昼夜逆転生活待った無しである…それを恐れていた僕はあのピアノが置いてあった喫茶店の中に入っていった。


中に入ると同時に チリーン と入店を知らせる合図の鈴が響いた。僕はそのままテーブル席にその疲れきった足で向かった。そうして席につきオーダーをとった。前来た時に、珈琲を頼んだが…こだわりが味に出てたので気に入った。

「オリジナルブレンドをブラックで…。」

僕がそう言った後スタッフの人は かしこまりました その一言を言い厨房に消えた。睡魔と戦いながら頼んだ品を待っていると…僕は、最近聞いた声をまた聞くことになった。

「あっれ〜?佐久間さんじゃないですか!?こんな朝早くから居るんですね!」

そう元気な声で発した声の主に僕は…自分の最大限明るい表情で言葉を返す。正直明るく返す気力は無いのだが…。

「えーと…あー…小夏君か…確か…君はここの常連客だったな…。」

とか細い声で僕が質問した。そんな僕とは逆に小夏君は、若さゆえの元気さがある声で僕の質問に返答した。僕とあまり年齢は変わらないが…。

「そうですよー覚えててくれたんですね!」

その元気さを…今少しでも良いから分けてもらいたいものだと心の奥にそっとしまい込み珈琲が来たと同時に顔をあげた。

「よし…飲んで家に帰ろう。」

そう言葉を零した直後小夏君が、僕と向かい合わせの席に腰を下ろしていた。小夏君は僕に太陽の様な笑みを見せ僕に言った。

「ご一緒させても?」

僕は殆ど回って無い頭で考え…答えを出しそれを言葉にした。正直に言うと…なぜあんな事を言ったのか…覚えていなかった。

「ん?…ああ…どうぞ…。」

そんな僕の答えを聞いた小夏君は、早速何かを頼んだ。まぁ…前回一緒行った時と頼んだ物は同じだったが…。

「ココアをお願いします!」


そうして珈琲を飲み終わらせ…小夏君がココアを飲み終えた後僕は会計を済ませた。会計をする直前小夏君にある質問を投げ掛けられた。僕はその質問にどのように答えようか悩んでしまった。

「あれ?ピアノ弾かないんですか?佐久間さんの演奏って…素敵なのに?」

その質問から恐らくだいぶ考え込んだ。そして出てきた答えはこれしかなかった。今思えば…少し言い過ぎた様な気がする。

「いつでも弾ける訳じゃないんだ…分かってくれ…。」

いつの間にか出てきていた回答に、僕は我に返り小夏君の方へ視線を向けた。小夏君は少しばかりガッカリしたような口調で落胆…していた様な気がする。

「えー…すっごく聴いてて「素敵」って表現が出来るのになー。」

その時の小夏君の表情は、僕に失望した様な表情では無く…次いつか聴けるのを楽しみにしている表情だった。僕は、その表情に申し訳なさを感じてしまい…小夏君にとある言葉を投げ掛けていた。

「……その…家まで送ってくよ…まだ朝焼けが出始めた頃合だ。夜でもそうだけど…そんな時間にあどけなさが残る少女が街角を歩くもんじゃ無い。」

そんな無意識に出た僕の言葉に、小夏君は笑いながら言葉を返した。多少僕の言葉にツッコミを入れて…。

「あ…良いんですか!ありがとうございます!…あどけなさ残る少女って…私もう二十なんだけどなぁ…。」

そうして僕ら二人は、喫茶店を後にした。なんだろう…自分と同じぐらいの年代の女性と一緒に歩くのは…多分…いや…初めてだと今になって気付いた。そいえば…中学生の時も…高校生の時も…彼女なんて存在が僕にはいなかった。となると…。

「彼女いない歴イコール年齢か…」

そんな言葉を僕はか細い声で言っていた。すると横にいる小夏君は…僕のそんな言葉を聞いていたのか…僕がそう言った直後クスッと笑い声をあげた後こんな事を言ってきた。

「いきなりどうしたんですか?まさか…遠江先輩の事ですか?」

僕は被っていたシルクハットを深々と被りながら…小夏君の質問に疑問を抱いた。

「遠江先輩…まだ会社にいた時言ってたんですよ〜「僕にそんな人は居ない…むしろ今まで出来たことなんて無い…というか今更必要の無い事なんだ。」って…寂しいと思うんだけどなぁ…って思いましたもん!」

質問をする前に、小夏君から僕らが知らない廻の事を聞いた。意外だった…廻なら作れると思うのに…としかし…よくよく思い出してみれば高校の時廻に告白をしてきた女子生徒が数人居たと聞いた事がある。聞いた話だとその数人全員を玉砕したとか…。

「あー…そうなんだ。それは知らなかったな〜…」

そんな僕のくだらない独り言から始まった会話を、朝焼けの登った時に話していた。珈琲の色と…小夏君の笑顔が実に綺麗なものだった。


喫茶店を出て恐らく三十分経過した頃。ようやく小夏君の家に着いた。

「いや〜ありがとうございます!一人だと道草くいそうだったので!」

小夏君のその言葉を遠くなっていく耳で聞きながら僕は、電柱にもたれかかりながら小夏君に言った。

「…道草って………するもんじゃ…な…い……。」

その後の事は覚えていない。しかし…しばらく僕の苗字が何回も叫ばれたのは覚えている。そこから先の僕の視界は…一時真っ暗になっていた。

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