いつも貴方がいたから
廻の見舞いから帰る為に帰路についていた時。俺は、中学後半の思い出を思い出していた。中学に入る少し前から…こんな性格の俺でも 人を愛した時期 そんなものがある。
「懐かしいぜ…アイツ…今頃海外で活動してんだろうな…アーティストとしてよ…。」
俺は空を見上げ…中学の自分を懐かしんでいた。俺が今こうしてドラムを、やれているのは恐らくアイツがいてくれたからなんだ…と今になって思っている。それと同時に俺は、ソイツに思いを伝えていなかった事を後悔していた。だから…廻と琴葉ちゃんに言ったんだ。「思いを伝えれるのは…今のうちだぜ?」と…坂道を登っていた途中に…俺は薄暗くなった空を見上げ…俺の口からは出ないであろう臭い台詞を吐き捨てた。
「俺は…荒い性格ながら…お前を愛してたよな…。」
そう言い瞳を閉じて思い返すと…お前との出会いは実に奇妙なものだったのかもしれない。
中学一年の梅雨時…俺はこの時から、ドラムを叩きまくっていた。でも今のようにロックバンドの為とかでは無い。元々俺は一人でストレス発散の為にやっていた訳で音楽で使う様になったのは十四の時…つまり恭太郎が転校してきた辺りからだった。
「あー!スっとするぜ…」
そう言葉を呟きながら一人ドラムで使うバッチを、太鼓の上に置き昼休みを音楽準備室で過ごす事にした。と思ったが…五六時間目が面倒なので授業をサボる事にした。
昼休みもそろそろ終わりを迎える時。誰かが音楽準備室の扉を開けた。俺はその音に驚き…少しばかし寝ていた脳を叩き起した。ふと音のした方を見るとそこには…の女子がいるではないか。俺は 自分も人の事を言えんだろ と心で言っておきながらその女子に、説教じみた台詞を口にした。
「おいおい…サボりか?関心しねぇな…。」
その女子は俺を、見るなり安堵からなのかため息を吐いてからある言葉を口にした。
「あ…良かった〜…次の時間音楽室で大丈夫そうだ。」
俺はその言葉を聞き…困惑しか思い浮かぶものが無かった。そいつの言ったことに困惑しあたふたするしかない俺に、その女子は質問をしてきた。
「え?一年五組の人じゃないんですか?」
おっと…偶然なのか最悪な事にコイツは、俺と同じクラスだったようだ。俺はその質問に、ため息混じりにこう答えを返した。
「ああ…確かに俺は五組の奴だ。でもな!授業に参加する気なんてもっぱら持ってないもんでな。さ!分かっただろ?だったら音楽準備室なんかに居ないで…音楽室で待ってな。」
俺はそう答え椅子に座りかけたその時…そいつは声を大にして言った。正直…迷惑だったし…ウザかったのを今でも覚えている。
「すいませーん!ここにサボろうとしてる人が…居まーす!」
その言葉に俺は焦りその女子を黙らせようと必死だった。
「ちょっ!おまっ…やめろーっ!」
その俺の懇願を顧みず…何度も何度も大きな声で、その言葉を発するものだから俺はとうとう降伏せざるおえない状態になってしまった。
「だーっ…分かったよ…参加するよ…あぁ…めんどくせぇ…。」
俺がそう言うとその女子は、満面の笑みで俺を見てこう言ってきた。その時がお前との出会いだった。
「ふふっ…良かった!参加してくれて…あ!私…夕月 千尋!貴方は?」
自己紹介してきた夕月に俺は、少しばかし疲れた様にため息をついてから自己紹介をしておいた。
「はぁー…轟 裕二だ…よろしく。」
そんな思い出に浸りながら廻の見舞いから家に帰ってきた。家に入るなり速攻で自分の部屋に行き荷物を、置いた後ベッドに座り込みながら…机の上に置いてある十四の時の写真を見つめていた。その写真には俺だけでは無く…千尋も写っていた。
「あの日を思い出すぜ…なぁ?千尋?お前が居たから…いつもお前が居てくれたから…俺は今でもドラマーさ…。」
そう言葉を紡ぎ…この写真が取られた当時を思い返していた。
十四の夏。ちょうどこの日は、夏祭りで商店街はいつも以上に、賑わいを見せた。商店街の真ん中辺りで俺は、そいつを待っていた。
「裕二君ー!ごめんね!待たせたー。」
その言葉を聞いた瞬間俺は携帯を閉じて声のした方へ顔を向けた。
「そんな待ってねぇし…気にすんなよ…。」
そう言い二人で祭りを楽しんだ。射的やサメ釣りや…その他色々と…異性と居て楽しかった思い出は…千尋と過ごしたあの三年間しか無いだろう。
祭りの終わりら辺に…俺達は、山へ足を向けていた。理由はこの祭りの終わりがけに行われる…打ち上げ花火を、見るために…。
山の山腹辺りの休憩所にて、俺達は打ち上げ花火が上がって来るのを待った。その当時の空間は、打ち上げ花火が空に上がるまで「無音」が支配した。
「そろそろ…だな。」
俺が静まりかえる休憩所で、千尋にそう声をかけた。千尋は、その短く切り揃えられたショートヘアを靡かせながら…俺の方へ振り向いた。その時の服装もよく覚えている。夏らしく浴衣を着ていた千尋を見て俺は、その日よく照れ顔になっていた。
「うん!楽しみ!…あ!今上がった!」
そう言った途端…「ひゅーーーん…」と花火が上げられる音と共に…「ドーーーン!」と何かが空で破裂した音が聞こえた。その音が何度も…何度も…時には同時に聞こえる花火の、音の中で俺は千尋にある言葉を言った。その言葉は俺なりの告白だった。
「千尋…俺はお前が…好きだ!」
俺のこの言葉が聞こえたかどうかは…俺自信分からない。だが…千尋は花火の音が響く中俺の方へ顔を向け口を動かした。その時の言葉は、なんと言ったか分からなかったが…その後俺達は恋仲となっていた。
あの日から今まで色んな事があった。俺達は、その時の流れに呑まれながら…いつの間にか別れていた。あの夏が懐かしい…そう心にその言葉をしまい込んだ。
「…ふっ…今頃どうしんのかな?なぁ?千尋?俺が言った事…覚えてるか?いつかお前が帰ってきたら…もうお前を離さないって…だから俺はお前が帰って来るのが楽しみだよ…。」
そう言い写真から目を離し…ベッドの上に、寝転がっていたが…いつの間にか意識は闇の中に落ちていった。




