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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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最初を忘れなんだ

琴葉ちゃんを家まで送り、俺は自分の働き口であるライブハウスへ足を向けた。 夜のライブハウスで俺は、ドラムの椅子に座り近くの写真立てを見た。そこには高校時代に馬鹿やったダチ公とふざけながら撮影した写真が写っていた。

「懐かしいなぁ…おい…もうあのメンバーは居ねぇけどよ。」

そう言葉を零した俺を誰かが呼ぶ声が聞こえた。ま…あらかた見当がついてるが…。

「何してんだ〜?裕二。」

そう言って俺に声をかけてきたのは兄貴だった。俺の兄貴はギター兼ボーカル担当で尊敬できる人だ。でもそれと同時に俺は兄貴が嫌いだ。だから兄貴と同じだった廻に嫉妬していた自分もいた。

「んだよ…翔…」

俺がそう言い不貞腐れると兄貴は笑いながら俺の肩を少し軽く叩きながツッコミを入れた。

「兄ちゃんと呼べ!兄ちゃんと!」

俺はそんな兄貴にキツくあたった。だって兄貴を嫌いになった理由は…兄貴の全てに嫉妬していたから。今になっては馬鹿馬鹿しい嫉妬だがな。

「うるせぇ!」

でも今は違う…尊敬出来る所も出来た。兄貴は何でも難なくこなすことが出来ていた。対して俺はそうでは無かった。出来ない事に一直線に向かって挙句失敗する事を繰り返していたのだ。それでも家族は笑って許してくれた。だがそれと同時に、その行為が俺の心を殺していった。

「あー!バンド活動が楽しいって思えるのが夢みてぇだ。」

兄貴がライブハウスから出そうなタイミングでそう言い写真を眺めながら過去の自分…まだ祐介が生きてて…バンド活動を開始するちょっと前…あの日を思い出していた。


今から四年前ぐらいだった気がする。恭太郎から「ギター弾いてて面白いヤツがいる。」と俺は恭太郎と一緒にソイツの所へ行った。

「やぁ!廻!えーと…コイツが言ってた友人の裕二だ。これから三人仲良くやっていこう。」

そいつはまるで氷みたいに冷ややかでまさに「冷静沈着」って言葉が当てはまるやつだった。

「……よろしく。」

ソイツはそう言い手に持っていた本に再び目を通した。俺は恭太郎に質問をした。コイツがどんな奴か知りたかったから…正直聞いて驚いたし…嫉妬もした。

「なぁ…恭太郎…コイツフルネームなんだ?」

恭太郎は俺に笑顔を向けながら…俺の質問に答えていた。

「えーっと確か…「遠江」だったけ?」

そう恭太郎が質問をした後ソイツは頷いていた。遠江…聞いた事がある。ここら辺出身のギタリストの苗字だ。俺はまるで恨む様にソイツを見た。でも返ってきた答えが余計俺をイラつかせた。

「そう睨んでも何も出ない…何?俺に何が言いたい?」

そう言ったアイツの表情は、まるで俺を馬鹿にするみたいなものだった。無表情貫きやがって そんな言葉が俺の心にしがみついてしまった。俺は無言でその場を後にし…そのまま授業に入っていた。それが 遠江 廻 との出会いだった。


廻と出会って恐らく一ヶ月は経過した時期だった。当時の俺は、良く喧嘩を吹っかけられていたのをまだ覚えてる。よく校舎裏に呼び出されていたっけ…でもあの時はマジで焦ったのと…「遠江 廻」って人間のカッコ良さを知れた日だった。

「校舎裏に来いって…「これ」の事かよ…。」

俺は目の前の状況を見て絶望した。いつもなら吹っかけられても一人か二人だ…しかし今回は三人…どうやら俺をしめたいらしい。

「轟…おめぇのその面も今日で終わりだ!あ!?」

一人の不良にそう言われた。俺は無謀だと分かっていたが…吹っかけられて逃げる事はしたくなかった。

「何時でもかかってきな!どうしようもねぇ馬鹿野郎共らが!」

そう言った後一人の不良…恐らくリーダー格のヤツが俺の方へ向かって走ってきた。恐らく殴り掛かるのだろう。俺は目を閉じ覚悟を決めた。

「とっととくたばれや!」

そう声が聞こえ走る足音が聞こえたが…一瞬だけ「ドカッ!」そんな音が聞こえた。俺は目を開け前を見ていると…先程殴り掛かって来ようとしたヤツが、膝を抱えてうずくまっていた。それだけではなく…すぐ近くにどういう訳か…テニスボールが転がっている。

「ってぇ…」

その後俺の背後から足音が聞こえ…聞き覚えのある声色が聞こえた。その声の主を見て俺は驚愕する。

「あーあ…お前ら…何してんの?三対一でかかってそんなに楽しいか?阿呆だな…お前らはさ。」

後ろを振り返るとそこには…廻がいた。だが…いつものような「冷静沈着」もあるが「狩る物」のような不敵な笑みを浮かべ三人組の不良に言っていた。

「んだ?てめぇ?何もんだ?」

三人組の内一人が廻に向かってそう言葉を吐き捨てた。廻の表情は「狩る物」から「仇討ちに必死な勇者」みたいになっていった。

「君達みたいな…大人数で一人の人間に勝とうとする者達に…名乗る権利なんて無い。」

そう廻が言った後一人の不良が廻の事を呼んだ。恐らく三人で廻をボコす為なのだろう。

「ほほう…おい!そこのヘッドバンド野郎!……面かせや。」

そう言われ呆れなから三人の不良の元へ行く…と思いきや俺に頼み事をしてきた。

「すまないが…コレ持っててくれないか?」

そう言い俺は廻からヘッドバンドを貰い…廻は不良三人組と体育倉庫の方へ足を向けた。しかし十分経っても二十分経っても…廻は帰ってこなかった。

「アイツ…大丈夫か?」

確かにアイツ…廻の事は好きじゃ無かったが…それでも不良三人を相手にするとなると心配になった。俺は居ても立ってもいられずに体育倉庫に足を運んだ。一つだけ言わせてもらうと…俺が想像した結末では無かった。

「廻〜?大丈…おうふ…。」

廻は立っているが…他の不良三人は、気絶し倒れていたのだ。廻はこちらに振り返り俺に言った。でも頭に一発くらったのか…血が出ていた。

「ん?あー…コイツら始末しといたから。これで絡まれる事も無くなるな。良かったじゃん……んじゃ俺帰る。あ…ヘッドバンドありがとな。」

そう言い俺が差し出したヘッドバンドを握りしめ…廻は、その場を後にした。その日の廻は勿論問題になり…廻は…停学二週間の刑に処された。それからからか俺は廻と良く会話する様になっていった。


そして…今現在に至っている。俺は少し鼻で笑いながらまた 廻 祐介 恭太郎 俺 が写っている写真を見て一つ言葉を零した。

「やっぱり…俺は最初を忘れなんだ。」

そう言った後リズムにのった太鼓とシンバルの音がライブハウスの空間を支配していった。

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