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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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親友からの手紙

次の日僕らは墓地にてある墓石に、手を合わせていた。誰の墓か?その答えは簡単だ。祐介の墓だ。今日は祐介の命日…メンバー総出で墓参りだ。

「なんで…先に逝っちまったかねぇ…」

手を合わせながら裕二がそう言葉を零していた。僕も思う事はあるが…僕や裕二…恭太郎より苦しいのは…もう目に見えていた。僕は琴葉に視線を飛ばして見ると、手を合わせながら瞳を閉じ言葉ににならないような声で

「……馬鹿…死のうとする前になんで……」

そう言い涙を流していた。僕はそんな重たい空気の中一人ただ一人…親友の冥福を祈った。手を合わせ終わり…寺を後にしようとした時、裕二からこんな提案をされた。

「なぁ…祐介の家行かねぇか?…まだ遺品整理とかしてねぇだろ?」

僕らはその言葉に沈黙しか、返せなかった。だけど一人だけ返答があった。

「行こう…だって祐がなんでああなったのか…理由があると思うから…」

琴葉のその言葉が無かったら…恐らく皆黙りこんでいたのだろう。僕も恭太郎も賛成の言葉を口にした。

「そうだな…行ってみるか。」

「何か分かると良いが……」

僕らはそう言葉を掛け合い寺を後にした。


恐らく三十分は経過しただろう。祐介の家に着いた僕達は、三年ぶりにその扉を開けることにした。ガチャ…そんな音がドアから発し僕らは、祐介の家へ入った。

「あまり…ドアの音変わらないな…」

僕がそう口にした後琴葉が苦笑いを、しながら僕に言った。でもその声は笑っていなかったが…

「そりゃ…私のお父さんが買い取ったし…掃除してるし…」

そんな会話をしながら僕らは祐介の部屋…だった場所に向かった。スライド式の扉を開けるとそこは今でもアイツが暮らしているような感覚がするぐらい物が残っていた。

「……懐かしいな…」

「ああ…そうだよね…」

僕と恭太郎がそう言うと後ろにいた裕二が僕ら二人の、肩を叩き言葉を吐いた。

「さ!想い出の品ってもんを…探そうじゃん!」

全員で祐介の部屋にあった物に手を触れ 懐かしい その言葉を口にしたかったに違いない。しかし僕らはただ単純に、祐介を感じていたかった。だからなのか祐介が遺していった物を整理する時は、終始無言だった。しかしある程度終えリビングに戻る前に僕が、手に取った写真の裏に書いてあった文章が気になり皆を止めた。

「待ってくれ!…」

僕はそう言い真っ直ぐクローゼットに向かう。

「どうしたんだよ?廻?」

裕二を中心に、そんな言葉を零していた。僕が写真の裏を見た時…もしかしたら祐介は、もう決心をして写真の裏にメッセージを残したのかもしれない。

「クローゼットに真実は隠されている。」

僕が、クローゼットを開け中身を確認する…そこには小さいなCDボックスが一つと…その上に封筒と日記帳が置いてあった。僕は裕二達を呼び中身を見せた。

「なに…これ……」

琴葉が震えた声で…僕に問いただす。僕は皆に例の写真とその裏を見せた。その写真は、僕らがまだ…高校時代に バンドをやろう そんな言葉を口にして間も無い時期に、撮影した物だった。

「もしかしたら……僕らにだけ伝えたかった物があるのかもしれないな。」

恭太郎はそう言いクローゼットの中を見た。CDボックスの上に置かれた封筒と日記帳を手に取りながら僕らに促す様に僕らに言った。

「僕らには何故祐介がその選択を取ったか…知る義務があるんじゃないのかな?僕はここで立ち止まったら…いけないと思う。」

恭太郎がそう言った後…僕も自分の意見を言った。まぁ…恭太郎とあまり変わらない意見だったのだが…

「見てみよう……アイツが伝えたかった事が…分かるのかもしれない。」

皆その意見に賛成し首を縦に振った。そして今から僕らは知る事になる。僕ら Theapplehuman のベーシストであり…僕の死んでしまった親友であり…今のベーシスト…琴葉の彼氏でもあった 石川 祐介 が最期に遺していった言葉を。


まずは…日記帳からだ。祐介は何を綴ったんだ?それがすごく気になって仕方が無い。僕らはその中身を…初めて見る事になる。そして…祐介の死後から三年ぶりにその中身が開かれる。パラッ…そんな音を立て今日記帳が開かれた。


十月十日 今日もバンド活動があった!めっちゃ楽しいからさ…生きてる辛さとか忘れられるぐらい楽しんでる!家に帰るってのが…また嫌だなぁ


十月十一日 一人でベースの練習してたら、琴葉がアップルパイ持って家凸してきた!差し入れが…嬉しいんだよなぁ…さすが俺の彼女!


十月十二日 もっと!もっと上手くなって…ここを出てメジャーデビューして…死んだら新聞に載るビックなロックスターになりたい!それが俺の夢!だから諦めたくない。


その後は他愛の無い日常…バンド活動の事…琴葉の事…日記帳には様々な事が綴られていた。だが…それからしばらくした十月頃の日記には自分の苦痛を日記に綴っていた。


十一月一日 文化祭が終わった…けどもうベースは弾けないや…なんで俺だけあんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ?もう…いっそ消えたい。


十一月二日 まただ叔母叔父に殴られ…蹴られ…罵倒され…俺の母さんと父さんが死んで遺産全部巻き上げてさ…俺に 自由 って権限はないのかな?


十一月三日 やっぱ駄目だ…もう…なんか生きてて辛くなってきた。でもバンドは続けたいけど…やっぱ誰かに相談した方が良いのかな?でもさ…誰かが変えられるもんでもないし…俺もう分かっんねぇや…


そんな苦痛が綴られて…僕らは目を逸らしたくなった。だが最期まで見てやりたい…そんな思いが僕らの手を動かし目を光らせた。そして日記帳の最期にはこう綴られていた。


十一月二十日 ごめん。やっぱもう無理みたい…俺に関わってくれた奴ら…ごめんな。


その後の日記は綴られていない。これが最期の日記になるという事になる。僕らはその目線を床に落としながら後悔しことだろう。何故気付いてあげられなかったのか…と…しかも僕には後悔と罪悪感が同時に湧いた。何故なら 親友 とか言っておきながら何故気付いてやれなかった?そんな言葉が僕の脳内をループした。そんな時裕二が封筒を開け僕らに言った。

「そんなしんみりしてんじゃねぇ!アイツも不安がるだろぉ!?」

僕はそんな裕二に今の感情をさらけ出し言った。

「仕方ないだろ……!僕らは……アイツの苦しみを……痛みを…気付いてやれなかったんだ!…僕は…親友なのに……」

その言葉がまるで雷が落ちるような声で裕二に言った。でも裕二は既にその封筒の中身を見ていて…読み終わったのかと思うと僕と琴葉を指さしながら

「……………これは………おめぇら二人で読みやがれ……後……廻……悪ぃ……つい……頭冷やしてくる」

そう言い僕と琴葉にその封筒の中身を見せ裕二と恭太郎は部屋を後にした。僕らは渡された紙を見ることした。それは祐介が僕らに宛てた最期の手紙だった。


拝啓 幼馴染の二人へ 多分この手紙を読んでるって事は…俺が死んでからしばらくした後だろう。謝らないといけない事が沢山あってさ…まず廻…ごめんな。お前と「バンドやろうぜ!俺たち一生ロックンロールだ!」って約束したよな?あれ叶えられなかった。ほんとごめん。廻はさ優しいから「何言ってんだよ」とか言って笑ってくれるだろうけど…元を言えばさ俺が相談すれば良かったって後悔しかしてないよ。廻なら分かってくれて…俺を励ましてくれるかもしれないそう思った。だけどさなんか廻に頼ってばっかな俺って情けないなって思っちゃてさ…あえて相談しなかった。死ぬ前に「ああしとけばよかった」「こうしとけばよかった」とか思っちゃうと思うよ…俺の終わらせ方ってのは…でもさ…それをやってもし廻に迷惑かけたら…って考えてさ全然出来なかった。だからこんな酷な選択をせざるを得なかったんだ。だからこれは俺だけの問題!廻は…自分を責めないでくれ。「気付いてやれなかったんだ!」とか言って自分を卑下して後悔して…無駄な時間を浪費しないでくれよな。約束だぞ?

琴葉…ほんとお前には感謝と謝罪しか言葉が出て来ないよ。よく「大人になったら二人で暮らそう」って夢語ってさ…俺あの時間がバンド活動やってる時と同じぐらい楽しくてさ…社会人になるの楽しみだった。そんな時まで待てず先に逝っちまった俺を恨んでも良い。でも前だけは向いて生きてくれ。お前はよく落ち込んだりした後にそれを、ズルズル引きずるから…俺が死んだ…そうなると落ち込むどころじゃないところまで行くと思う。でも俺は死んでも…心の中で生きるから…琴葉の心の中で生きるから…前向いて生きろよ?約束だかんな!じゃあな…

最期に…俺は廻と琴葉がいたから楽しい人生を送れた。だからありがとう…そしてごめんな。

PS 廻よ…琴葉の事を頼む。


すすり泣く声が聞こえた。それは琴葉が泣いていた声だった。僕はなんて声をかけて良いか分からずに無言になっていた。

「……なん……で……こんなの……卑怯だよ……祐………祐ーーーっ!……」

祐介は…僕に 自分を責めないでくれ そう言った。だが僕がもっとちゃんとしていれば…祐介の事を気にかけていればこんな事にならずに済んだのに…でももうそんな後悔をしても遅い。だから僕は前を向く。後僅かな命でも…

「…でもさ………寂しいよ……祐介……」

僕はそう言い涙を流した。その涙が太陽に照らされ…黄金色に輝いたその日。僕は 石川 祐介 が最期に遺した想いを知った。不意に祐介が好きだったあの曲を口ずさんでいた。

「…回るジェットコースター乗りながら…君の手を握りたい…その後でちょっと乱れるくらい…唇奪いたい……あの……空……は…どこに……なぁ?…どこに続くんだよ…。」

僕がその歌を涙ぐみながら歌と独り言を言うと…琴葉が抱きついて僕の服に顔を沈めながら泣いた。僕も琴葉を抱きしめ…いつの間にか声にならない泣き声をお互いに発していた。僕の親友の三年目の命日は…辛く寂しく…でもどこか暖かった……

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