シュミット領への道中
レイン領からシュミット領への移動はリューイの召還した首の無い馬が牽く馬車を利用だった。
「もっとゆっくりしていけばよかったのに。」
「既にヨハネのせいで予定に遅れが出ている。」
馬車の中にはユーリ、ヨハネ、そして、二人を送るついでに里帰りするリューイがいた。
「それにしても、相変わらずドライさんはよく仕事が出来ますね。」
「ドライはリューイ達が管理してもらう前にあそこの管理をしていたからな。まぁ、森でやることが増えてから、今、リューイが本邸の管理してくれているはとても助かっているよ。」
「えへへ、ユーリにそういわれると照れるなぁ。って、ちょっと待って。ドライさん、今いくつ?」
「そんなことより、こいつ、叩き起こしていいか?」
そう不機嫌な顔して言うユーリの肩によだれを垂らして寄りかかって寝るヨハネを見て、リューイは苦笑した。
「こんなんでも王家御用達魔導具技師なんですから不思議だよ。でも、問題起こしすぎてユーリとの行動を義務付けされるってどうしてそうなったんだかね。」
どうやら、ヨハネの現在の設定はリューイにちゃんと伝わっているようだ。
本当はというと、ヨハネ、いや、ラインハルト・ブラウランは昔、病弱だったらしい。しかし、愛する病で弟を死なせたくなかった兄は熱心に神に祈ったそうだ。その祈りが届き、ラインハルトは健康となり、生きながらえることができた。しかし、強すぎる祈りは呪いと化した。彼は死にたくても死ねなくなり、年も取らなくなった。そのため、数十年ごとに名前を変えつつ、しかし、王族であったため静かに王城で過ごしていたらしい。死ぬための研究を続ける異端の存在、『死にたがり殿下』。関わらなければ無害の存在。それが、ユーリと出会ったことで変わってしまったのだが。
「おい!ヨハネ、起きろ。そろそろシュミット領に着くぞ。」
「・・・ん、もうそんな?」
「あぁ。」
「いやぁ、リューイの馬車は揺れが心地よくって熟睡できるね!」
「お前が作った魔導車も揺れないようにすりゃ、行きもっと快適なんだがな。」
「いやいや、ユーリちゃんや、無茶言わないでくださいな。あの森の中を快適に走るなんざ無理だって。」
「おい、ちゃん呼びやめろ。というか、いっそのこと車を少し浮かせたりとかさ、工夫の余地あんるんじゃないのか。」
「ユーリさんや、車体を浮かせるとかそんな・・・いや、アリかも。」
「いやいや、二人とも!どれだけの魔石が必要になると思っているんですか!」
そんな話で盛り上がっているとピタリと馬車が止まったのを感じた。
「着いたのか?」
「いや、まだあと少しあるはずなんですが・・・。」
「馬車の前をふさいでるヤツがいるみたいだな。」
「え、ヨハネさん分かるんですか?」
「あぁ、なんとなくな。」
ヨハネの意外な特技にリューイが驚いていると、外からしょうもない声が聞こえてきた。
「俺はカルーロイ子爵の嫡男、デイビット様だぞ!その不気味な馬車ってことはシュミット男爵家の者だろう?俺が通ろうとした道を使っている罰として500銀貨支払ってもらおうか!」