◎皇帝と第五王子
帝都エクラディア中心部に建つ、白くて大きな美しい城・ヤシュム城。
その城の一角で、フィンルイス第五王子はリューフェレン・ブラウラン皇帝に学院で流れていた噂について報告をしていた。
「噂の始まりは、騎士団に所属する兄から王族が強大な力を持つ魔石を秘匿し独占的に使用している事実を聞かされたとカール・シュータルっていう生徒が学院内で話していたところから、ということで間違いないのかな?」
「はい、まちがいありません。」
皇帝は頭を抱えた。帝国騎士団、しかも、ラクリマネーロのことを知っているということは近衛騎士隊のごく限られた人間であり、つまり、それだけ優秀であるはずの、大勢の中から選ばれた人間のはずだった。にも関わらず、王族の秘密を平気で話してしまうような騎士が紛れ込んでいた。もう一つ言えば、シュータルの姓の騎士はいなかったはずなので、余計に頭が痛い。
「王ぞくがつよい力をもつことはわるくないけど、ないしょにしてるのがいけないって。こくみんをしんじてないことといっしょだっていうのもいってたって。」
「フィンはそれをきいてどう思った?」
皇帝の問いにフィンルイスは戸惑いつつも、しっかりと顔をあげ、こう答えた。
「ぼくは、へいかがないしょのほうがいいとおもったからこくみんにしらせなかったっておもいました。それに、つよすぎる力は、ぜったいにいいものかどうかわからないって。」
「そうだ、フィン。ラクリマネーロは幻とされていた空間魔法をも展開させる力がこめられているが、まだ分からないことが沢山あるから、公にはせず、研究所で調べているんだ。使い方を誤ったときや、壊れたとき、どういった作用が現れるかも不明なままだからね。これが分からないまま、公表して、万が一のことが起きたとき、私達王族が詳しく分からないから何も出来ませんじゃいけないんだよ。分かるかい?」
「わかるよ。……でも、ばれちゃった。」
「少し、油断していたんだろうな。」
ブラウラン帝国は三千年の歴史のある国だ。色々あったが、なんだかんだで乗り越えてきた。今まで異常なくらい、事件や災害を数年で解決してきていたので自分も例外なく何が起きても大丈夫な気がしていたが、どうやらそうではなかったようだ。
「ユーリとヨハネはまだレイン領に着いたばかりかな……。鳶便で今回のこと、伝えるべきだろうか。」
「いえ、おそらくアインスがもう把握しているかと思いますので、コチラが気にかける必要はないかと思います。」
それまで存在を消していた宰相のへリングは皇帝の呟きにそう答えた。
「さて、フィンルイス王子、そろそろ剣術の稽古のお時間です。学院でのお話、ありがとうございました。ここで陛下に話されたことは、レナさま、お母様にも内緒にしてくださいね。」
フィンルイス王子はヘリングの言葉に静かに頷くと、一礼し、退出した。
「さて、これから本当にどうするかな。」
皇帝は深く溜息を吐くと、書斎へと移動した。
頭ぱーんする。王族とか城とか全く興味ないから、言葉選びあってるのか分からない。