代理人との雑談
「アンデットの数は通年どおり、数体自然成仏しているとの報告はちゃんとまとまっていたが、密入国者に関しての報告が不完全だった。それに関しては・・・」
「なんていうかさ、ユーリは本当にもったいないというか、損してるよね。」
食事を交えつつ、領に関する報告の再確認をしていると、リューイは唐突にそう言い出した。
「急になんだ。」
「いや、ユーリは口を閉じてれば国トップクラスの美人なのに、声は男らしいというか、こう耳元でささやかれたら思わず惚れちゃいそうな感じの声じゃない。それぞれ素晴らしい特徴のはずなのにね、ちぐはぐというか、合っていないというか、もったいないなぁって。」
リューイが振った話であるにも関わらず、何だか歯痒そうにそう答えた。そんな彼を見て、ユーリは深くため息をついた。
「っで、つまり何が言いたいんだ。」
「ユーリはその見た目だから本邸に戻ってこないのかなって・・・。確かに身体から出てる魔力が人の生命力を奪うっていうのは知ってるけどね、それだけじゃないんでしょ?だって、この本邸には魔力の威力を弱める塗料使ってるから、ユーリはそんなの危惧しなくてもいいと思うんだよね。もし貴族の相手をしたくないだけなら、僕が代わりに対応するし。なのに、森にずっといて、年に1回しか会えないなんて・・・。僕はもっとユーリと一緒にいたい。」
リューイは目に涙をためながら、そうユーリに訴えかけた。ユーリは油断していた、リューイは魔道具の開発に打ち込んでいるようだったし、成人したのだから昔のように甘えてはこないと。しかし、彼はあまり見せないようにしていただけで、まだまだ子供なのだと。
「だから、前にも言ったように、この領にいるアンデッドは俺が殺した前領主の領民達だ。しかも、彼らは死んだことに気付かず、今も変わらず『生活』をしている。俺はそんな彼らの『生活』を壊したくない。彼らの『生活』を壊さないためにも、俺は全てのアンデッドが成仏するまで、森で待っているべきと考えてる。」
「だからって、わざわざ死の森の中で待たなくてもいいじゃないか。それに、ユーリ、別にそんなことしなくても、聖魔法の浄化なら、一瞬で、彼らを苦しめることなく、すぐに解決できることなんだよ!」
ユーリは静かに首を振った。
「これは俺が背負うべき罪なんだ。それに、俺は辺境伯だ。国境近くを守るのが仕事だ。死の森は広大だ。魔物も多いが、密入国者や犯罪者も紛れ込むことがあるからな。こんなところでのんびりいるより、中で目を光らせているほうが仕事になるんだよ。」
「そうは言っても、ユーリに」
リューイが何か言おうとした瞬間、食堂の扉がバンと開いた。
「いい湯だったぁ。あ、煮込みハンバーグだぁ!!俺、これ大好き!!あ、芋蒸かしたのもあるじゃん!!」
お風呂から出てきてホクホク顔のヨハネだった。
「あ、ヨハネさん、すぐ用意いたします。」
「うん、よろしく。」
リューイが慌てて食堂を出て行くのをヨハネは確認すると、ユーリに近づいた。
「いいタイミングだったか?」
「ヨハネ、いつから聞いていた。」
「そんなコワい顔するなよ、ユーリちゃん。あの兄弟はお前のこと心配して言ってくれているんだ。それに、あの森で生活することがお前の身体に一番負担がないなんてさ、信じてもらえないだろうし。あとは、雨の一族との約束だっけ?それもあるしね。さて、今晩中にはここでの用事は終わるんだろ?いつ出発する?」
ヨハネはニコニコと表面だけの笑顔でそう言った。




