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狂ったものは元に戻らない

「あ、あ、俺の手が、俺の手がっ……。」


 千歳によって切り落とされた両手がさらさらと塵と化していくのをみた留萌はガタガタと震えだした。


「もう挨拶が済んだなら、その屑を連れて出てってくれ。大変不愉快だ。」


 ユーリは低く静かにそう千歳に告げた。千歳は何も言わず頷くと、留萌の首根っこをつかみ引きずり部屋を出ようとした。


「輝夜様、輝夜様、輝夜様!!そんな声で俺を否定しないでください!!!手を失おうが、俺は輝夜様のお側にいたいです!!輝夜様!!輝夜様ぁ!!」

「もうこの世に輝夜という女はいない。ここにいるのはユーリだ。そんな狂った人間がわんさかいる和幻にユーリが行くことは絶対にない。そもそも俺がユーリをそんな場所に行かせないが。」

 

 ラインハルトが静かにそうこぼしたが、わーわーと引きずられながらも喚き狂った留萌にその声が届くことはなかった。


「見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。我が国の恥です。これももう使い物にならないので、今期はこれにて帰国したいと思います。」


 千歳はそう告げ、数秒頭を下げたあと、留萌を黙らせることなく引きずったまま漆黒の間をでた。


「あの外交官、今期はって言ったね。こんな無礼を働きながらまた会いに来る気満々みたいだったよ。まぁ、次来るときにはもうあのゴミは処分されてるだろうけど。」

「もう30年経つのにまだあんなのが和幻にわんさかいるのか。」

「肖像画を見ただけであんなんになるんだから、輝夜は本当苦労しただろうね。」


 ラインハルトは遠い目をするとそう言った。

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