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死神辺境伯は飽きる

 この外交官が頭を抱えている時点で、この考えなしな発言をしている護衛と外交官とがそれぞれこの国とユーリに対して持つ印象が違っていることがうかがえた。


「お前こそ、口を慎め!5年前魔素不足で飢饉が起きていた我が国を助けてくれた帝国になんという暴言を!それに神葉王はユーリ殿を和幻へ招待したいという話であって、強制ではないのだぞ!!」

「うるさい!うるさい!うるさい!黙れ、売国奴ジジィ!こんな蛮人にへこへこしやがって!そもそも魔素なんてなくても和幻は成り立っていたんだ!なんかよく分からないブラウラン帝国の留学生とかいう女が来たせいで魔法技術が急速に発達して……。あの女が来なければ、この国に借りを作ることなんてなかった。いや、そもそもソレが狙いで女を我が国に送り込んだに違いない!!」

「はぁ、留萌(るもい)、その女性は君のお祖母さんだろう。」

「あの女を血縁だと思ってねぇ。親父も言っていた!!あの女が和幻の国を狂わせたんだ!!輝夜様もそうだ。こんな国に来ていなければ、幸せになっていたはずだった。あぁ、輝夜様、なんで死んでしまわれたのですか。何故、貴女様が殺されなければならなかったのですか。」


 正直、ユーリはいまいち何を考えているのかわからない老獪外交官と輝夜狂信者っぽい護衛の言い争いをみるのに飽きていた。というか護衛の名前、留萌って変な名前だなぁとか、ってかここで言い争う必要あるか?とか思っていた。


「ユーリ、こいつら挨拶もう終わっているみたいだし、追い出しとく?」


 ラインハルトは千歳と留萌を指差してそう言った。ユーリは少し考えた後、静かに頷いた。しかし、発狂していた留萌がいつの間にかすごい速さでユーリに近づいていた。


「やはり、似ている!!いや、輝夜様の姿絵をそのまま出したようだ!!異民の血が流れようとも美しい。輝夜様、輝夜様、輝夜様!!何故、こんな国で命を落としてしまわれたのか!!そして、何故、忘れ形見が男なんだ。俺は、輝夜様が生きている間にお会いできなかった。貴女を知ったのは全て宮殿に飾られた輝夜様の肖像画でした。でも、俺の心を占めるのには十分だった。あぁ、輝夜様。」


 ユーリは和神王と神葉王の間に王位にいた室蘭王に母親と間違われたときを思い出し、酷い寒気を感じた。しかし、丁度いいとも思った。ここで特定の魔法以外が発動することはないのだが、この呪われた身体の特徴に関しては別だ。留萌はユーリの身体特徴を知ってか知らずか、彼の手をとり、手袋を外すと自身の両手で包むように触れた。そう、直接ユーリの手を触れたのだ。


「留萌、すぐにその手を離せ!!」


 千歳はちゃんと知っていた。ユーリの魔力に触れると身体が塵のように崩れ去り、その塵をきちんと浄化させないとアンデットという魔物として蘇るということを。そのため、ユーリが『死神辺境伯』と呼ばれていることを。


 ユーリから離れようとしない留萌の手を千歳は自身の背に隠し持っていた刀で切り落とし、浄化の符で傷口をふさいだ。


「ほぉ、お見事お見事。」


 一連の千歳の動きを見て、ラインハルトは彼を拍手をし、称えた。

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