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愛された異国の末姫と新たな外交官とその護衛

 まず、ワカンについて、説明をしなくれはならない。この帝国から遥か遠く海を渡った、文化も人種も言葉すら違う自然豊かな島国、ワゲンという国がある。その国の王は絶対的な権力を持っており、複数の妃を迎え、多くの子宝に恵まれるのが良いとされている風習がある。ワカンというのはその風習をそのまま体現したような王様の名前であり、また、王の三親等までが使用できる姓である。沢山の妃と子供に恵まれたワカン、いや、和神王。そんな和神王が一番溺愛していた娘というのが、ユーリの母親だった。

 ユーリの母、和神輝夜は和神王の末娘で、大変愛くるしい容姿に誰からも愛され育てられた。中には嫉妬で彼女を憎む兄弟も最初はいたが、彼女の優しさに触れるとひとたび毒気を失われ、彼女を崇拝するようになっていた。気付けば、彼女は次期女王を望まれていた。若く、美しく、可憐で、優しく、非の打ち所がないとして崇められていた。それまで次期王として育てられていた彼女の兄たちですら、彼女が望むならと身を引くつもりでいた。

 しかし、彼女は鳥籠の中にいることを拒んだ。自分に対して盲信的な周りが怖くなったので、自ら王位継承権を手放し、世界各国を旅することを13歳の時に決心し、数少ない信用できる護衛と従者を連れて国を出た。その後、海を渡り、さまざまな土地を巡り、そして、運命の人と出逢い、結ばれた。しかし、とある事件のせいで、息子の成長を見ることなく死んでしまう。


「前のフラノとかいう男もユーリの従兄弟と名乗って威張り散らしていた。信用も信頼も出来ない。そして、許すことも厳しい。とっとと部屋から出てってくれないか?」

「確かに彼はかつて和神の人間でしたが、今や和神の姓を失った、ただの平民です。アレは和神王の血縁者というだけで権力を振りかざしていた。アレは度を超えたのだ。今まで何も知ろうとせず、野放しにしていた我ら和神の責任はある。今回の件ももっとこちらで調べればよかったことを省いた我々の非であることは間違いない。どうか、謝罪する機会をいただければ。」

 

 千歳はその場で深く頭を下げた。その姿をみて、ラインハルトは困惑した顔をしユーリの方を見た。ラインハルトに助けを求められたユーリはめんどくさいと感じながらも頭を上げるようにアイコンタクトで伝えるが……。


「千歳さまっ!!!こんな蛮人に何故頭を下げる必要があるのです!!貴方様は偉大なる和神の血統者なんですよ?いくら和神王の愛した輝夜姫様の子とはいえ、異民の血が混じっているんですよ?いや、そもそも輝夜姫様の本当の子であるかどうかも疑わしい。確かにそこの男、書物に残された輝夜姫様の面影がありますが、似ている人間は探せばいるものですしねぇ。それにさっきから出しゃばってるそっちの男、部外者のくせに口を挟みやがって。我々は輝夜姫様の血をひく者と接触し、和幻の国へと一度訪問する様にと交渉しろという現王であられる神葉王からの使命を頂いている身である。蛮人となんか、そもそも話すことなどないのだ。その口を塞がないか!」


 扉を開けたとき転んで倒れていた護衛らしき男がいきなり起き上がったかと思えば、ペラペラと怒鳴りつけるようにそう言い始めた。千歳は膝から崩れ落ち、頭を抱えた。


「この、バカ……。」

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