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異国の外交官

「なぁ、こんなタイミングで来るなんて、アレしかいないよな?」


 ユーリは扉の方を見て、そうラインハルトに尋ねる。


「ユーリちゃんさぁ、自分の親族に対して『アレ』はないんじゃないか?」

「アレを親族だなんて一度も思ったことはない。俺の家族は……お前らくらいしかいないんだよ。あんな奴は知らん。俺はユーリ・レインだ。『輝夜姫の形見』でも『異国の王位継承者』でもない。だから、この国、いや、あの森から離れる気はさらさらない。それなのに、アレは……。」

「ユーリちゃん、いや、ユーリ。俺も君を手離す気はさらさらないんだよ。彼らが何を言おうと俺には追い払う力も権力もある。最悪、俺はこの国を犠牲にしてでもユーリとお別れする気はないんだ。せっかく見つけた逸材を簡単に失うわけにはいかないんだよ。」


 ラインハルトはそう言いながらユーリの手をそっと両手で握った。


「そうだよな……。お前にとっちゃ、俺は手段でしかないよな。」


 ユーリはラインハルトの手を強く払った。その時彼はラインハルトの手を一瞬見たが、いつも通り何ともない様子にユーリはチッと舌打ちをした。


「ちゃんと可愛い息子だとも思っているさ。ふふっ…、なんていうかいつものことっちゃいつものことなんだけど、ここに来るといつもユーリは弱気になるなぁ。魔力と一緒に自信まで吸われてしまうのかね?」

「うっせー!からかうんじゃねぇよ!くっそ、こういうとこ、嫌いなんだよな……。」


 コンコンコン!!と強く何回も扉を叩く音がする。


「どうせ挨拶しなきゃならないんだ。なんとかすぐおかえりいただくよう俺がするから、ユーリ、それでいいか?」


 ユーリはソファーにドサッと偉そうに座り直し、


「あぁ、どうしたって面倒なことになるのは変わらないんだ。奴等を通していいよ。」


 その答えにラインハルトは溢れんばかりの笑顔となり、ぱちんと指を鳴らした。


「いい加減開け……、うわぁぁぁぁぁ!!」


 ノックを何度もしていたであろう男がいきなり開いた扉にすぐ気付けず、体勢を崩し、部屋に倒れこむようにして入ってきた。


「返事もなしに扉を開けるとは『不変の聖人』殿もいじわるじゃの。」


 その後ろには落ち着いた色合いながらも品位を感じる異国の民族衣装に身につけたロマンスグレーの男が立っていた。


「漆黒の間は完全防音されているから、こちらから返事をしたところであなた方には声が届くことがないのですが……、ところでどちら様ですか?いつも突然やってきては無礼な態度で俺に罵声を浴びせてくる非常識な外交官のフラチだかフジヲだかいうジジイは?あ、ちなみにそのイタい呼び方で呼ぶのはやめていただけません?俺にはラインハルトというちゃんとした名前がありますので。」

「ちょっ、富良野は何をやらかしているんだ……。申し訳ない、ラインハルト殿。富良野からはこうするのが礼儀だと言われてな。変だとは思っていたのだが、『自国の常識は異国の非常識』という場合があるからのぉ、すっかり富良野を信じてしもうたわ。そうだ、自己紹介が遅れた。ワシは富良野の後任で来た和神千歳だ。あぁ、チトセ ワカンと名乗った方がよいかの。そちらのユーリ殿の従兄弟に一応あたるんだが、まぁ、いままであったことがないからピンとは来ないだろう。さて、此度の無礼はどうしたら許していただけますかな。」



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