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[閑話]愚かな一族 その4

 


 あたしのせいだ。

 

 確かに数年前、あの土地を取り返すとデイビットは意気込んでいたが、まだそんなことをしているとは思っていなかった。そして、あたし達はまだ呪いが断ち切れていなかったのだと思い知らされた。


「おい、本当に君は何も知らなかったのか?」

「まだあの子が学生だったときにあの土地を取り返すと意気込んでいた姿を見たことがありましたわ。でも、もうあの子は成人して……。」

「そんな……、君がそそのかしたのではないのか?」


 夫はデイビットから聞かされていなかったのか少し動揺したが、すぐあたしにそう冷たく問いただした。


「あの地に関して一切関わらないと権利も何もかも放棄して、その上、もう二度と関わらないと貴方が王と約束までしているのに、あたしに何が出来るのです?それに、そもそもあたしは出来損ないだからっていう理由でレイブン家から追放された身よ。呪われてミイラにならなかっただけ万々歳。あたしは最早あの呪われた土地に未練も執着もないの。ただあの子が、こんな貧乏貴族の一家に生まれたせいで何事にもやる気を見出すことが出来なかったあの子が、あの土地をあたしのために取り返したいって言ったのよ。」

「君のためと言っている時点でおかしいじゃないか。あの子には君がレイブン家の血を引くものとは教えていなかったはずだ。」

「帝都に行けば、いくらでも情報なんて転がっているでしょう。この地に閉じこもっているあたしでさえ、『カールロイ子爵は運がなかった』という噂話をきくのですから。ご存知です?貴方が前レイブン侯爵の養子になる予定だったっていう噂話。かなり歪んだ形で伝わっているみたいだけど、レイブンの血を引くあたしがいたから余計に浸透したようね。」


 そう反論すると、夫は頭を抱えた。まさか、知らなかったのだろうか。


「本当に貴方はあの子やあたしだけでなく、周りに一切興味がなかったのね。いつも書斎にこもってこの領を切り盛りさせていくのか、そればかり。人のことも見れていないのに、この領地を上手く治められるはずなんてないのに。」

「おい、君、今、私の事を馬鹿にしなかったか?」


 うなだれていた夫は図星だったのか顔を真っ赤にして怒っていた。彼はこんなにもコロコロと感情が動く人だったのか。あたしは知らなかった。


「えぇ、そうよ。このちいさな領を治めるのでいっぱいいっぱいで、周りが全然見えていない情けない夫である貴方を馬鹿にしたわ。でもね、馬鹿なのは貴方だけじゃないの。自分の力じゃ何も出来ないくせに寂しさを紛らわすために浪費ばかりするお荷物なあたしも貴方とも愛息子ともちゃんとまともに向き合おうとしなかった愚か者よ。そうよ、あたしは愛息子を溺愛してたつもりだったけど、あたしはただ可愛がっていただけで、育児はほぼ使用人にまかせっきり、全く参加していなかった。あたしは両親に愛されてこなかったから母親になりたくなかった。でも、跡継ぎが必要だって統括執事のランゲが言ったから、貴方を酒で酔わせて……。」

「待て、どういうことだ。あの子は私の子なのか。」

「やっぱり、貴方はあたしのこと尻軽女だと思ってたのね。残念ながら二人とも貴方との間に出来た子よ。」


 すると、夫はぶるぶると唇を震わせ、顔を真っ青にさせた。


「二人てどういうことだ?今、君のお腹に子供がいるのか?」


 あたしは大きなショックを受けた。あたしの代わりに呪いを受けてしまったあの子のことをこの男は知らなかったということを知ってしまったのだから。

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