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[閑話]シュミット冒険者ギルド受付嬢のとある一日 その3

 彼のそういうところが私は残念だとつくづく思ってしまう。リューイの考え方に関して極端だと思う時がよくある。彼は自分の敵と判断したものに対して、かなり厳しく対応をする。本当は生かしておくのも嫌なのだろうが、そうもいかないから仕方なく了承している、そういう雰囲気が出てしまっていた。


「まぁ、記憶全部飛んでさ、息の仕方まで忘れちゃったら、その時はその時。運が悪かった、そういう運命だった、そう報告すればいい。ここではそういうルールで成り立ってるんだから。」

「相手が悪くないか?相手は一応カルーロイ子爵の人間だぞ。」

「相手が何であろうと関係ない。いくら仲のよかった友達であろうが、自分より位が高い貴族だったであろうが、うちのルールを破ったのなら、それなりの罰を受けなくてはならないんだよ。」


 リューイが一瞬私の方をみた。私は彼の目を避けるように視線をそらした。


「それに、向こうは知っていたはずだ、シュミットに関わったら面倒なことになることをね。もし何かあっても父さんが責任とってくれるさ。だから、カイさん、安心して奴らに『罰』を与えてよ。」


 リューイの圧の強い笑顔に、カイは顔を引きつらせながらレイン辺境伯の襲撃犯達に『記憶消去』を使用した。





「じゃあ、彼らをカルーロイ領に送る準備をするから、リューイ様の見送りはよろしく。」


 カイはそういうと気絶した彼らを荷車に乗せ、私とリューイを残して何処かへ行ってしまった。すると、リューイがスンっと冷めた顔で口を開いた。


「そうだ、リオ、さっき僕を呼び捨てにしていたけど、いつまで学生気分なの?さっきまでは人の目があったから何も言わなかったが、自分が罪人であることを忘れているのか?」


 私はやってしまったと身体が震えだした。


「リオ、君はあの日勝手にレイン領に足を踏み入れたときから大罪人なんだよ。牢の中に入れられていないから罪の意識が薄いのかもしれないれど、君は一生このシュミット領から出ることは許されていない、領民の監視の下、生かされているんだからね?自由だと勘違いしちゃいけないよ?」


 そう、シュミット領民であれば子供でも知っている、レイン領への無断侵入という大罪を、学校を卒業し王都から戻ってきた私は、自分の力を過信し、犯してしまっていた。私なら、リューイの力になれると、勝手に暴走して……。そして、過剰評価していた私は自業自得というべきか、レイン領の呪いにかかり、狂い苦しみ、自決しようとしたところをなんとかギリギリで解呪をしてもらい生き延びてしまった過去があった。


「今はシュミット領の冒険者ギルドの受付嬢、兼、サブギルド長として、職にも金にも困らず、生活できているのだろうから、その生活を壊さないよう気をつけないと。わかってる?」

「なら……、それならいっそのこと、私の記憶も彼らみたいに消してくれればいいのに。」

「リオ、それは罪の意識から逃げたいと言っているのと一緒だよ?それに、君はシュミットの領民への見せしめの為に、ここ、帝国一最悪の冒険者ギルドと言われているシュミット冒険者ギルドの受付嬢としてわざわざ働かせているんだ。頸に罪人の証である焼印を入れられて、どんなに陰口叩かれようが何をされようが耐えて一生を過ごさないとならないというのをね、みんなに見てもらわないとなんだよ。これで記憶を消すなんて、君を楽させることになっちゃうじゃないか。ちゃんと、自らの罪と向き合ってもらわないと。」


 私は、この罪から逃げたいのではない。未だに諦められずギュッと締め付けるように残るリューイへの想いを断ち切りたいだけ。だけど、この気持ち自体が罪であり、罰なのだろう。


「そうでした。変なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした。」


 私はリューイに深く頭を下げると、彼は小さく何かを言って、その場を去っていった。私もそろそろ仕事に戻らなくてはならない。そっと頸の焼印の痕を触り、しばらく目を瞑り、気持ちを落ち着かせる。


 最近、周りの領民の態度が軟化してきたことと、久々のリューイの姿を見て、少し調子に乗っていた。私はこのアンデットだらけのこの街で、この先ずっと、死んでもそのまま、この冒険者ギルドの受付嬢として働かなくてはならない大罪人だ。


 レイン領に足を踏み入れてしまったということはそういうことだ。


 今日もこれからまた私は笑顔の仮面を被って、メープルと共に仕事を再開する。

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