旅の始まり
ガタガタと揺れる車内で顔色を青くした男が一人。
「芋、吐きそう…。」
「だから、食い過ぎるなって言ったじゃねぇか!!アホ殿下!!!」
もう一人はそんな男に呆れていた。
「ユーリ様、ヨハネには何を言っても無駄です。それが何年経っても学ばないのは今に始まった話ではありません。」
それと運転席に青髪の青年が一人、そこにはいた。
「学んでいないわけじゃないんだよ。欲望に忠実な身体なんだ・・・。」
「ほら、ヨハネに何言っても無駄そうでしょ?」
「ドライちゃん、酷い。ってか、俺に対して冷たくない?呼び捨てだし。何で?・・・うっ、芋が、出そう。」
情けない姿のヨハネに二人は深く溜息をついた。
「ユーリ様、ここで吐かれても困りますし、一度車を止めてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、まだ森の中だし、止めても問題ないだろう。それと、一応こんなのでもヨハネは俺の保護者だ。敬称をつけとけ。」
薄暗い森の中、静かに止まる車からヨハネは飛び出すと、草陰に駆け込んだ。
「あくまでユーリ様に仕えてる身であり、あんなゲロ吐き野郎に敬称をつけて呼びたくはないのですが。」
「あんなのでも、この魔導車を作り出した男だ。本来であれば馬車を使わなくてはならないが、一般的な馬だと俺の魔力に耐えられないからな。大量の魔石が必要とはいえ、かなり便利な乗り物だ。そう思えば、ゲロ殿下とはいえ尊敬できる存在とは言えないか?それに・・・。」
車内に残った二人はヨハネについて話していた。ヨハネは少し残念な部分があるが、ながいこと生きているだけあって色んなことが出来る。飽き性ではあるものの様々な事に挑戦してきたのだ。その経験は無駄ではなかったようだ。
「あはぁー!!!スッキリした!!」
出し切ったらしいヨハネは晴れ晴れとした表情で戻ってきた。
「ユーリ、まだ水筒に水残ってる?」
「いや、俺の飲む分しか残ってない。」
「わーけーて?」
「断る。」
ヨハネが車に乗り込んだのを冷ややかな目で確認すると、ドライは魔力を車に込め始めた。
「少し口の中が酸っぱいのが残ってるんだよー。ダメ?」
「ヨハネさ、死ねないのになんで体調は悪くなるんだよ。意味がわからない。」
「そんな何もかも失っちゃうような祈りを兄さんはしないさ。これだって、兄さんの想定外だったんだ。だから、この苦しみは兄さんの愛だと受け止めるさ。」
「じゃあ、水も諦めてくれ。これはおれのだ。」