◎死神との邂逅
引き続き、デイビット君回です。
俺様は帝都で手に入れたケントニス社の新商品・飛翔ブーツに履き替え、馬車から飛び降りた。
普段ならそんなことしないのだが、心の無い慰めの言葉や小馬鹿にした発言を浴びせられる恥辱の社交パーティを乗り越え、自分へのご褒美として、田舎では使いどころが無かった大金を使って買った流行の最先端のブーツを誰かに自慢したかった。それに、これはただのブーツじゃない、魔力をこめれば短時間ではあるが空を翔るかのごとく速く走れることが出来る魔導具だ。シュミット男爵家の人間に自分達の立場というのを分からせたかった。そして、あわよくば弱味を握ろうと思っていた。
神経を研ぎ澄ませ、ブーツに魔力をこめると足が浮いたような感覚がした。そのまま、冒険者共が向ける方向へと足を動かせば、自然に前へ前へと翔るように進んでいく。俺様のテンションは爆上がりだった。気付けばあっという間に偵察の能力を持つ冒険者を追い抜き、真っ黒な首の無い馬の馬車の前まで来ていた。俺様は強大な力を手に入れた気分に陥っていた。
「俺はカルーロイ子爵の嫡男、デイビット様だぞ!その不気味な馬車ってことはシュミット男爵家の者だろう?俺が通ろうとした道を使っている罰として500銀貨支払ってもらおうか!」
ただシュミットの人間を、自分より下の存在を困らせたかった。鬱憤を晴らしたかっただけなのに・・・。
「カルーロイ子爵の跡継ぎは盗賊同然の行いをするとは、感心しないな。」
その馬車から聞こえてきたのは俺様が思わず震え上がってしまうような低く圧のある声だった。そして、黒い靄が馬車から漏れ出たかと思うと人型に形成されていき、俺様の目の前に立ちはだかった。
「デイビット君だっけ?君、もうとっくの昔に成人しているはずだったと思うけど、記憶違いだったか?」
その謎の存在から放たれる魔力のせいか肌がチリチリと痛み、膝がわらっていた。
「そんなに震えて、俺がコワイか?恐ろしいか?」
嘲笑うかのように煽ってくるが、膝が耐えられなくなり体勢が崩れ、急に過呼吸に襲われた俺様は声を発することすら難しかった。
「フッ、こんな魔力にも耐えられぬとは小物だな。まだシュミットのとこのガキ共の方がマシだ。」
シュミット、そうだ、コイツはシュミットの馬車から出てきた。この強大な魔力と威圧感、そして、シュミット家に縁のあるやつなんて一人しか浮かばない。
「ユーリ・・・、レイン・・・辺きょ・・・は・・・か。」
やっと呼吸が少し落ち着き、絞り出すようにその名を呼んだ。
「ほぉ、一応俺のことは知っていたか。ならば、君のしでかした事は如何に愚かな行為か、理解できるな?」
理解できるなだと・・・、本当だったらあの地は俺様が治めていたはずなんだ。なのに、なんでこんな化け物が、こんな不気味な存在が領主になったんだ。言い返したい、睨みつけてやりたい。けど、この半端ない魔力に抗うことができない。いや、無理に抗ったら俺様の身体は壊れちまうんじゃねぇか?
「さて、君の迎えが来たようだが、どうやら俺に刃を向けようとしているようだ。何が言いたいか分かるか?」
分かりたくもない。そもそも、死神は森に引き篭もっているんじゃなかったのか?




