サイン
それは呼び出しのサイン。
目立って速くもなく、かといって遅くはない。
だから意表を突かれるんだ。
美味しかった朝ごはんのことを考えてたら油断のサイン。
だからと言って、非難されることじゃない。
好きな娘のことが頭を離れないのは当たり前のこと。
だけど弱みは掴まれるんだ。
人に話せないことが増えるほど無口になるから危険のサイン。
それでも甘い秘密が捨てられないのは悪いことじゃない。
でも、いつばれても不思議じゃない。
遅かれ早かれ、甘い秘密は溢れ出す。
届きにくい信号に迷わされて、歩きと滑舌はコマ落としのように軋み出す。
それが脱出劇が始まるサイン。
幾つかの、甘い秘密を持って。
呼び出しのサインが届かない場所へ。
それが叶わぬ夢と知るのなら、それは生き地獄のサイン。