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魔界最初の敵

雪山の最奥。ではなくふもとにたどり着くと結界の様子を確認した。


「まあ悪くは、ないな……」


 事前に駐屯兵と一般住民には連絡を済ませ、近くの村には警戒態勢をしてもらっている。


 今、結界を解いて、魔族が溢れかえったりしないかが心配だった。


 左手を結界にかざし、封印を解くと、数秒まった。


 特に何もなかった。十秒ほど待ち、何もにことを確認すると、人一人入ることのできるサイズの門をくぐった。


 白い景色かと思いきや、下から、引っ張られるような感覚に襲われた。


 いや、これが普通の感覚だ。私は今落ちている。魔界と私達の世界をつなぐ門が同じ場所に通じているとは限らない。その点を私は見誤った。だが、この程度のことは幾たびも経験してきた。


 空中で態勢を立て直すと、ついに地面が見え始めてきた。場所はちょうど火山あたりだろうか。


 熱気が私を包み込み、痛く熱く、そして苦しい。

 

 このまま落ちれば、マグマに落ちるが、その程度は問題ではない。


「展開」

 

 私にできる魔法はたった一つ。魔法強化。それだけだ。誰しもが最初に覚えることができ、誰しもが最初に学ぶ魔法だ。

 

 そしてみんなはほかの魔法を学ぶ。けれど、私にはそれができなかった。私には魔法強化しかできなかった。


 だから、その一点を極めた。


 そのおかげで、全身には膜を覆うことができ、弱い攻撃ならば、一切食らうことがなくなった。


 もちろん、それはマグマも同様だ。


 地面に当たると、マグマが自然に避けるような形を取った、とも見える動きでマグマが消えていた。


「不時着にしてはまあまあか。それより、帰れなくなったな」


 結界に関しては問題はない。私が魔界に行く瞬間に再び、駐屯兵にかけてもらうように頼み込んだ。そのうえで、私が十日かけても帰還しない場合はミカエラに連絡するように伝えてある。


「さて、どうしたものか。とりあえず、魔王城にでも……ん?」


 後ろから、強烈な殺気を感じる。何か起こしてはいけない何かを起こした気がした。


「汝は、何者か?」


 初老のような声が頭を響かせる。


 人影は感じ取れない。念じか何かで話しかけてくるのか。


「私はただの人間ですけど?」


「また、せめて来るつもりか?」


「いや、そんなつもりはないけど。そっちが危害を加えるつもりがないなら、私は一切加えるつもりはない」


「なら、その足元にあるモノはなんだ?」


 ゆっくりと足元を確認すると、赤い球体の生き物をつぶしていた。


「あっ」


 急いで足をどかすが、もうすでにかなり弱っている。


 非常にまずいな。返り討ちにするのは容易いが、それをしてしまうと攻め込むことになる。


「我はこの山なり」


「は?山が話すわけ……」


 山頂の方を見ると、火山岩が私の方に向かって降り注ぎはじめた。


「ああ、そうか。じゃあ、失礼する」


 私はただ、ふもとに向かって歩き始めた。


 火山岩は私にぶつかるが、ぶつかる直前に魔力の膜によって粉々に崩れ去る。


「何⁉」


「まあ、無理もないだろ……」


 ちょっと前まで、魔王と戦っていた人間だ。火山ごときに遅れをとっていては、勇者に合わせる顔がない。


「もう一度いうが、私は危害を加えに来たつもりはない」


 殺意で火山を黙らせると、私はふもとまで歩き始まめた。

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