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28話

 とりあえず生を頼み、ディランに景子と高達さんを紹介ている内にお通ししと共に生がやってきて、乾杯!


 ゴクゴクとペース早く飲む。だって、そうしないとすごく恥ずかしいし! 早く酔いたいのだ。


「ディランさんって今何歳ですか?」

「23です」

「へぇー若い!」

「俺より7歳下だね」


 ディランが二人と話しているのは不思議な気分だ。私は何を言っても恥ずかしい気がして、珍しく見守ることしかできない。


「瑠璃のどこがよかったんですか?」

「ちょっと、景子!」


 思わずむせそうになりながら景子を止めようとする。しかし、ディランは、


「初めは一目惚れだったんだけどね、話している内に可愛いところとか優しいところを知れて、もっと好きになったんだ」


 と、照れながら答えた。


「わぁお」

「ちょっとディラン!」


 強いお酒を一気に飲んだ時みたいに、かーっと身体の内が熱くなる。そんな恥ずかしいことを真面目に!


「いけなかった?」

「え、っと……」


 幸せそうに微笑むディランを見ると「ダメ!」と、頭ごなしに怒れなくなってしまう。だけど、二人に仲の良さを見せつけてるみたいで、もう穴があったら入りたいくらい恥ずかしい!


「ふふふ、瑠璃が可愛い」

「乙女だね、吉岡さん」

「からかわないでください!」


 もう、恋人となった景子と高達さんを見て恥ずかしいと思うどころじゃなかった。彼氏を友達に紹介するって初めての経験だけど、こんなに恥ずかしいものだとは。


 それとも、相手がディランだから?


「瑠璃が愛されててよかった。外国の人だって聞いて、イメージになかったからびっくりしちゃったけど」

「どこの国の人なの?」

「あー、えーっと、ヨーロッパです」


 まさか異世界人だなんて言えないから適当に誤魔化す。この飲み会、いろいろと疲れる。


「それより二人も仲が良さそうで」

「それは別にいいのよ。今日は瑠璃とディランさんの会だから!」

「良くないよ! お二人の方が最近付き合ったわけだし」

「だけど、翼さんのことは前から知ってるわけでしょ? あたし達はディランさんのこと何も知らないんだから、いろいろと聞きたいじゃん!」


 テンションが上っている景子はディランに興味津々な様子だ。


「日本語ペラペラだけど、日本には長く?」

「長くはないんだけど、日本語は昔から勉強してたんだよ、ね?」

「そうだね」

「もう、全部瑠璃が答えるんだから」


 景子は不満そうだけど、変な回答しちゃったらまずいし! ボロ出しても大丈夫なように、お酒を飲ませておくか。と、早くも2杯目を注文する。


「日本は慣れた?」

「うん、だいぶ。マンインデンシャにはあまり乗りたくないけど」

「あー、特に東京の満員電車はえげつないよねぇ」


 ケラケラと笑う景子はお酒が回りはじめているのか、上機嫌だ。


「そういえば、ディランさんのお仕事って?」

「研究職だよ」

「へぇ、イケメンなのに頭もいいんだ!」


 景子は目を丸くする。彼氏を前に別の男をイケメンというのはまずいんじゃないかと思うんだけど、高達さんは特に気にしている様子はない。景子は素直な性格だから、すべて受け入れてくれる相手っていうのはいいのかもしれないなぁ。


「じゃあ、ずっと日本で暮らすの?」

「それはまだ決めてないんだ」


 ディランは私にチラリと視線を合わせる。私がディランの国に行く可能性もあるんだもんね。今度の旅行で行ってみて考えるって話だ。


「じゃあディランさん海外に行っちゃうかもってこと? そしたら瑠璃と遠恋じゃん!」


 実は今も遠距離なんだけどね。あまりにすぐに会えるから、私自身もそんな感じはしてないけど。


「エンレン?」

「ああ、えーっと、恋人が離れちゃうことだよ。ほら、ディランの国と日本って結構離れてるでしょ?」


 言葉の意味をディランに説明すると、わかってくれたようだ。


「もし向こうで暮らすとしたらルリも連れて行くよ」

「え、瑠璃がヨーロッパに?」


 景子は唖然とした。


「大丈夫なの? 瑠璃。あんた、英語全然ダメじゃん!」

「あー、うん。でも、ディランもいるし……」

「吉岡さんも承知してるんだね」


 高達さんまで驚いた様子だった。それが意外で、


「変ですか?」


 と、思わず聞き返す。


「吉岡さんって、海外で暮らしたいタイプには見えないからさ」

「遠恋が辛いのはわかるから、行く気持ちはわかるけどね……浮気だって怖いもんね」


 経験のある景子は何かを思い出したのか眉尻を下げる。


「だけど、瑠璃が会社辞めて遠くに行っちゃうのは寂しいなぁ……」


 景子の言葉にドキリとする。会社を辞めて景子や友達、親とも別れて単身、異世界に。移住したらそう簡単に戻ってこられないだろう。


 その事実を、愚かながら私は初めて突きつけられた気がした。考えていたつもりだったけれど、私が異世界に行くっていうことは、単純に住処が変わるだけじゃなくて、そういう人達とも距離が離れてしまうということなんだ。


 ディランとは一緒にいたい。特に年齢のこともあって、ディランとの将来もちゃんと考えているし、いずれはどちらかの国に行くことになると思う。


 魔術が大好きなディランの仕事を奪うのは辛い。それに、もしディランがこの世界に来たら、仕事はどうするのだろう。


 私の今の稼ぎだったら、二人で生活するのは難しい。だけど、よく考えたら戸籍のないディランが日本で仕事をするって難しくない?


 だとしたら、やっぱり私が向こうへ行くことが正しい選択だろう。でも、本当に私はやっていけるのかな? 知らない国で、知り合いもいないのに。


 景子のたった一言で現実を突きつけられた私は時を忘れて考えふけってしまった。一瞬で酔いも覚めた気がする。


 遠くで景子が「まぁ、まだすぐに決めるってわけでもないんでしょ? ゆっくり話し合いなよ」と、言っているのが耳に入った。


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