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26話

 その日の夢の中。2日ぶりに会ったディランはいつもと変わらぬ様子だった。久しぶりだから思わず抱きつきたくなるけれど、夢の中では触れ合うことができない。少しの切なさを感じながら、


「ディラン久しぶり」


 と、声をかける。


「魔力は大丈夫?」

『だいぶ減ってはいるけど夢に出てこられるくらいにはなったよ。昨日も来られなくてごめんね』


 申し訳なさそうに謝るその一言で昨日の寂しさが吹き飛んでしまうのだから不思議だ。


「そうそう、前に言ってた会社の同期の景子っていう友達だけどね、高達さんと付き合うことになったんだって」

『そっかー! よかった』


 報告すると、ディランはホッとしたように笑顔を見せる。私の友達のことをそこまで心配していたとは、ディランはなんていい人なんだろうか。


「それでね、流れでディランのことも話したら、会いたいって言ってきたんだよね」

『俺に?』


 ディランは目をくるりと丸くして意外そうな顔をした。


「そう、私の彼氏に興味があるみたい。嫌だったら断るけど、会う?」

『構わないよ。ルリのことを心配してるんだね』


 ほわっと優しい笑顔を浮かべる。


『でも、次にそっちに行けるのは魔力を考えると4日は経たないと無理かな』

「そんなに急じゃなくてもいいよ! だけど、結構魔力使っちゃったんだね」


 今までそんなに回復がかかることなんてなかった。ディランは言わないけれど、きっと今までになく魔力を使ってしまったんだろうと思う。


「今度は数時間で済むようにするから」

『ごめんね。俺の魔力量がもう少し多ければ』


 ディランは申し訳なさそうに笑った。そんな顔をさせてしまったことが辛くて、これ以上悲しい顔をさせないように、私は話題を変える。


「そうそう、はい! これ」


 私は手に持っていた封筒をディランに渡す。お腹に置いて眠ったので、折れ曲がってしまわないか心配だったのだけれど、大丈夫だったみたい。


『? ……あ!』


 中身を見たディランはパアっと顔を明るくした。


『この前の映像だね!』

「そう、写真ね。現像しておいたよ」


 浅草寺の仲見世で撮ったツーショット写真だ。ディランは嬉しそうに目を細めている。


『早速劣化しないように魔術で加工してから部屋に飾るね!』

「もし汚れたらまた現像するから大丈夫だよ」

『何枚でも作れるんだ?』

「データさえあればね」


 ディランは感心しながら写真を封筒に仕舞い込んだ。


『でも、大切にする!』


 そこまで喜んでもらえるとむず痒い嬉しさが湧き上がってくる。その写真に写っているのが私だからこそ喜んでくれているのだろうし。


 愛されてるってこういうことを言うのだ。私は満たされた気持ちで微笑んだ。


『ルリがロンド王国に来られるように準備も進めてるからね』

「ありがとう」


 ディランの生まれ育った世界。異世界とはいえ海外旅行もほぼ初めてな私。どんな世界なのか楽しみだ。


『どこを見て回るかも考えないとね。俺も王都に住んでいたことはあるけど、観光はほとんどしなかったからなぁ……』


 悩んでる様子のディランに「ここが見たい!」とかヒントをあげられたらいいのだけれど、いかんせん何があるのかもわからない。リクエストのしようもなかった。


『ルリは甘いものは好きじゃないの?』

「甘いもの?」

『この前食べた焼き菓子とか』

「ああ……」


 おそらく人形焼のことを言っているのだろう。だとしたら、スイーツは好きか? と、聞かれてるってことか。ここは女の子らしく「大好き!」と、言えたらいいのだろうけど、こういうところまで私はとことん女の子らしくない。


「嫌いではないよ」

『なるほど』


 その一言でディランは察してくれたらしい。


『じゃあお酒が飲めるところの方がいいかな。ロンド王国では女性はお酒をほとんど飲まないから洒落たお店はあまりないんだけど、落ち着いて食事ができるところを探しておくよ』

「ありがとう……! 女性がお酒を飲めないって法律で決まってたりする?」

『ううん。パーティとか家では飲むけど、外で食事をする時には飲まない人がほとんどなだけ。特に貴族はね』

「へぇ」


 外でお酒を飲むのははしたない、という風潮でもあるのだろうか。あんなに美味しいお酒があるというのに、もったいない。


『でも平民は飲むし、きっと探せばあると思う』

「お手数おかけします」


 前回ディランがもってきてくれたお酒もなかなか美味しかったし、いろんなお酒を試しに飲んで、気に入ったものがあればお土産にも買って帰りたい。そう思うと異世界旅行がますます楽しみになってきた。




 翌日のお昼。ディランが会うことを了承したと伝えると、景子は顔を輝かせた。


「やったね! じゃあ金曜の夜はどう?」

「急すぎじゃない?」


 景子はディランに会えることが楽しみな様子で前のめりだ。


「それに金曜は無理って言ってた。早くて土曜以降かな」

「じゃあ土曜でいいよ!」

「まじ?」


 よほどすぐに会いたいらしい。それは改めてディランに確認する必要があるので保留にしておく。


「高達さんも来るの?」

「ダメ?」

「いや、いいけど……」


 私の彼氏がいるのに景子が一人っていうのも変だし高達さんがいる方が自然だとは思う。だけど、今まで同僚でしかなかった二人が付き合ってから改めて一緒に話すのは照れくさい気もした。まぁ、いいんだけどね。


「ねぇ、瑠璃。ちなみに瑠璃の彼氏って外国人なんだよね? 日本語通じる?」

「ペラペラだよ」

「よかったぁ。あたし、英語全然だからさぁ。ま、瑠璃が英語喋れるとは思えないし、そうだよね」


 そういえばディランってあの顔で日本語ペラペラなんだよな。聞きそびれていたけど、これも魔術のおかげなのだろうか。


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