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25話

 翌日の月曜日はデートのほどよい疲れと幸福感を感じながら目覚めた。たくさん魔力を使ってしまったディランが夢に出てこられないのが寂しいけれど。しかも、今日も出て来られないかもと言っていた。


 昨日、今までになくたくさん一緒にいたあとなので余計に寂しい。自分がどんどん欲深くなっているみたいだ。


 いつか、ディランが日本に来たら飽きるほど一緒にいられるだろうか。ディランとの未来を望む気持ちもどんどん膨れ上がっていた。


 今日は来週末の友人の結婚式の二次会で軽い余興をする打ち合わせも兼ねて、大学の友人達との飲み会がある。寂しくなっていたところだったので、この予定はありがたかった。


 少し早い夜6時に居酒屋へ向かう。大学の友人達とはいつも同じ駅で飲んでいる。


 私が居酒屋に行くと、3人の友人が集まっていた。


「久しぶり~!」

「おー! 瑠璃!」


 賑やかな仲間に迎えられると、大学時代に戻った気分になるから不思議だ。二次会の打ち合わせは置いておいて、お互いの近況などで盛り上がる。そうしているうちに遅れてやってきた友人も増えていく。とても楽しい会だ。


 これは、大学時代のゼミのメンバーだ。20人くらいの苦楽を共にしたゼミメンバーは未だに仲が良く付き合いが続いている。今日は半分である10人程度が飲み会に参加するらしい。


 そうして1時間半が経った頃、また1人遅れてやってきた。


「お疲れ」


 その低い声を聞いた時、私の心臓がドクリと跳ねる。今日は祝日だから来ないと思っていたのに。


「おー、賢吾! 思ったより早く来たな!」

「ああ」


 米田賢吾。私と2年間付き合った、元カレだ。


「賢吾、痩せたか?」

「痩せてねーよ。お前、会う度にそう言ってんな」

「そうだったっけ? 大学の時のイメージがいまいち抜けきれてなくてさ。ほら、かなり鍛えてたろ?」

「賢吾ー、生でいいか?」

「おう、ありがと。で、二次会の話はどこまで進んだ?」


 賢吾は変わらない。私は視線を別の友人の話に耳を傾けているふりをしながらそっと目を伏せた。ゼミ長だった賢吾はみんなの中心で、まとめ役だ。


 今日だって、賢吾が来た途端に、いつの間にか話が逸れていた二次会の話が戻って、どんどんと決まっていく。賢吾自身も自分がいないとこうなることが目に見えていたから来たのだろう。


 ディランとは全然違うタイプだ。ディランはほんわかとしていて癒し系。対して賢吾と一緒にいるといつも気が抜けなかった。その空気感は嫌いではなかったけれど。


 ビールを飲んで笑う賢吾の横顔を盗み見る。私に彼氏ができた、って言ったら、賢吾はなんて言うだろうか。


 その日、私は賢吾と言葉を交わさずに帰ってきた。こんな日には夢でディランに会いたかったのに、ディランは今日も夢に出てきてはくれなかった。




 翌日のお昼。今日は会社じゃ話しにくいたぐいの話をすることになるだろう、と、近くの定食屋に入った。夜は居酒屋になるのだが、昼間は定食を出してくれる。そこで、私は野菜炒め定食を、景子は唐揚げ定食を頼んだ。


 話を聞くまでもなく、景子の恥じるような表情を見ただけで高達さんと何かあったのだとわかった。それも、恐らくいい方の。


「高達さんと付き合うことにしたの?」

「う、うん」

「よかったね、景子」

「……ありがと」


 展開が急すぎるとは思うが、そこは大人なのでそういうこともあるだろう。それに、不倫や浮気相手が続いていた景子にとっては久しぶりのまともな彼氏だ。友人としては祝福してあげたいと思った。


「上手くやっていけそう?」

「うん、たぶん」


 はにかむ景子は可愛らしい乙女と化している。景子が幸せそうで私もホッとした。


「それより、瑠璃! つ……高達さんに聞いたよ!」


 そういえば高達さんの下の名前は翼というんだったっけ、と思いながら「何が?」と、聞き返す。


「瑠璃、彼氏ができたんだって!?」


 食べていた野菜炒めが気管に入りそうになった。胸を叩いて飲み下してから、


「言いふらすなって言ったのに……」


 と、まず高達さんを恨む。


「あたしが無理に聞き出したのよ。話してくれなかったの、ショックなんだけど」


 景子に白い目で見られてまず「ごめん」と、謝る。しかし、景子はすぐに「いいよ」と、言ってくれた。


「失恋したあたしに気を使ってくれたんでしょ?」

「まぁ……それはそうだけど、でも言うべきだったと思う」

「本当だよ」


 頬を小さく膨らませた景子を見て思わずくすりと笑ってしまう。素直に非難してくれた方が私の気も楽だった。


「この前言ってた浅草デートの人?」

「うん、そう」

「外国人なんだ? 意外なんだけど」

「私自身も意外だよ」


 正確にはディランは異世界人なんだけど、まぁ外国人とも言えるだろう。私もまさか異世界人とお付き合いすることになるとは思ってもみなかった。


「浅草デートしたってことは日本にいるの?」

「うーん、まぁ割と頻繁には会えるかな」

「じゃあ、あたしも会いたいんだけど」

「えぇ!?」


 高達さんみたいに「写真見せて」となら言われるかもとは思ったし、今はディランの写真もあるから景子になら見せてもいいかと思ったのだけど、その提案は意外だった。


「本気?」

「だって、どんな人か気になるもん。会えないの?」

「まぁ、会えないことはないかもだけど……」


 ディランも景子の恋愛について心配していたし、この前くらいの時間こっちの世界にいられるなら、人に会うことくらいできるだろう。ディランがなんて言うかはわからないけれど、たぶん「会う」って言ってくれるような気もする。


「じゃあ、聞いてみてよ」

「うん……一応聞いてみる」


 友達に彼氏を紹介するなんてしたことないので、緊張してしまう。だけど、隠していた後ろめたさもあるし、素直にディランに聞いてみようと思った。


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