23話
参道を歩いて浅草寺の本堂へ向かう。外国人観光客が多いからか、外国人に受けそうな日本らしい土産物を売る店や、人形焼のお店などが並んでいる仲見世を見ながら。
気になるお店はたくさんあるのだが、いかんせん人が多い。空いている満員電車くらい人が密着している。
「ルリ、はぐれないでね」
ディランはにっこりと笑って手を握ってくれている。「あれは何!?」と、仲見世に目を奪われているディランの方がよっぽど迷子になりそうだと思うのだけど、それは言わないでおく。
途中でできたての人形焼5個を買って、ディランの口に放り込む。
「こ、これは……!?」
「美味しい?」
ディランはこくこくと何度も頷いている。
「これは焼き菓子!? まだ温かいけどできたてなのかな!? それに、中に入ってるのは何だろう。チョコレート……とはちょっと違うみたいだけど」
「あんこだよ。豆を甘く煮たもの」
「豆!? これが!?」
ディラン大興奮である。
「ディランって甘い物好き?」
「ううん、どちらかと言うとあんまり好きじゃないかな。甘ったるいクリームに胸焼けしちゃってさ。でも、これは全然胸焼けしないしとても美味しい……!」
数百円のものにそこまで喜ぶディランは可愛いなぁ。それに、可愛いだけじゃない、格好いい。よくよく見ると、すれ違う女性がチラリとディランを見る率、高い気がする。そりゃそうだよね、すごくイケメンだもの。
日に焼けていない肌、スマートな体型、甘い顔つき。モデルにスカウトされるんじゃないかと思うレベルだ。
そんな人と私が一緒に歩いているなんて、と我に返ると少し気が引ける。顔ですべてが決まるわけじゃないけれど、私なんかでいいんだろうか……なんて。
ディランの国では貴族じゃないとモテないらしいけど、日本は違う。もし、ディランが日本に住むことになったらモテモテになるだろうな。
それにしてもなんて幸せに人形焼を食べるのだろう。この可愛さを見ていたら、思わずスマホを手にとってパシャリと。
「ん?」
ディランが不思議そうに首を傾けた。
「ほら」
私がスマホをディランに見せると、ディランは唖然とした。
「お、俺がいる……!」
「写真って言ってね、記録に残しておけるんだよ」
「すごい」
ディランは自分の顔をまじまじと見ている。
「鏡みたいだ。上手く髪の毛の色素を変えられてるね」
写真を見てもディランは自分の魔術の出来を満足気に確認している。
「これってルリのことも写せる?」
「ああーうんまぁね。でも、自分の写真撮っておいてもねぇ」
自分に自信のある人間なら自撮りをするのかもしれないけれど、私は生憎自信はないし、流行りのSNSもやっていない。スマホの中にも自分の写真よりも酒の写真の方が多い気がする。
「俺はほしいけどな……」
ディランは伺うように私を見る。
「俺もその四角いのほしいな」
「スマホを?」
「うん。そしたらルリをいつでも見られるでしょ?」
「私なんて見たって」と、言おうとして口を閉じる。私がいくら自分の容姿に自信がなくても、ディランはこんな私のことを好きだと言ってくれている。ディランの容姿に引け目を感じてたけど、それじゃあまりに失礼だよね。
「じゃあ一緒に撮る? あとで紙に印刷することもできるし」
「そのスマホってやつを持ってなくてもルリが見れるってこと?」
「うん、そうだね」
「本当に!」
ディランはすごく嬉しそうに顔を明るくした。人に配慮しながら内向きカメラにしてスマホを構える。
「うわぁ! 俺が映ってる!」
「ここのボタン押せば記録できるよ。じゃ、いくよー」
自撮りに慣れていないので上手く二人を写すことに苦労してしまう。ディランに近づいてカメラに収めると「はい、チーズ」と言ってシャッターを押した。
写真を確認すると私は操作に気を取られて笑顔を作りきれていないし、ディランは画面を見ていたらしくカメラ目線ではない。そんな変な写真だが、私達の初めてのツーショット写真らしいなぁとくすりと笑ってしまった。
「これ、もらえるの!?」
「うん、印刷するよ」
「わー! 部屋に飾るよ!」
ディランは飛び跳ねんばかりにテンションが上っている。それは人形焼を食べた時と勝るとも劣らない喜びっぷりで、私は変なことを気にしていた自分が馬鹿らしくなって、余計に笑ってしまった。
浅草寺本堂前に着いて、お水舎で清めてから本堂へ。無難に外陣でお参りを済ませようかと思ったのだけど、ディランが気になっているようだったので内陣にもお邪魔する。外はすごい人なのに、内陣はスカスカなのが少し不思議だ。
ディランはまず靴を脱いで畳に上がる時点で「植物の絨毯か……珍しい。繊細だから靴を脱がないといけないのかな」と、分析しつつ驚いていた。内陣で参拝し、しばしその空気を味わってから外へ。いざ、おみくじ!
浅草寺のおみくじは凶が多いという話なのでびくびくしていたが、二人共小吉だった。書かれていることも悪いことはなくて安心。
浅草寺を後にしてから向かうはスカイツリー。方向音痴だから大丈夫かな、と心配していたのだけど、そんな心配必要ないくらい大きく見えた。存在感がすごいよ、スカイツリー! ディランもその大きさには驚いていた。




