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22話

 デートの場所は土曜にネットで調べてリサーチして、浅草寺からスカイツリールートに決めた。デートプランを自分で決めるなんて初めてなので、喜んでもらえるかドキドキしてしまう。世の男性はこんな気持ちでデートを迎えているのかと思うと、今まで何も考えずに待ち合わせ場所に向かっていた自分を叱ってやりたい。


 ちなみに、土曜には買い物にも行ってデートで着る服も買ってきた。我ながら浮かれていると思う、お恥ずかしながら。


 ディランも準備があるということで、前もって前日の夢には出られないことは聞いていた。翌日は直接会えるのだから構わないのだけど、余計緊張してしまうことは避けられない。


 そして、デート当日の日曜日。私はデート用に買った服を着て化粧もいつもよりもちゃんとして、家でディランの到来を待っていた。ちなみに、今日の服装は灰色の薄手セーターの中に白シャツを着て、下は空色のロングプリーツスカートを履いている。


 いつの間にかパンツスタイルばかりになっていたので、かなり久しぶりのスカートだ。なんだかスースーする……と、女装した男みたいなことを思いながら正座をしている。非常に落ち着かない。


 昨日、やっぱり初デートなんだからスカートがいいよね!? と、スカートを買いに行ったのだ。変じゃないといいのだけど。


 ディランからは昼過ぎに来るとは言われていたのだけど、正確な時間は聞いていなかった。どうやら時間の概念が日本とディランの国では違うみたいなのだ。お互いの国の時間についてしばらく説明し合ったけれど、どうにも理解できなかったので諦めた。


 だけど、いつも夢で出会えるということは、少なくとも夜はだいたい同じ時間だということ。ずれがあってもそう大きな時間ではないだろうと信じて待っている。


 時計が14時を過ぎてしばらく経った時。待つことにも飽きてぼんやりとテレビの再放送ドラマを見ていると、突然光に包まれた。


 もはや3回目ともなると慣れたもので「来た!」と、瞬時に理解できる。私はぎゅっと目を閉じてから冷静に目を開けると、そこには茶髪ディランが立っていた。


「お待たせ!」

「あ、うん」


 「あ、うん」ってなんだ! もっと可愛い挨拶があるだろう! そう思うが、どうにも気恥ずかしくてそんな挨拶しかできなかった。よいしょと立ち上がってディランと向かい合ってようやく、えへへと笑いかけることができる。


「いらっしゃい」

「今日はスカートなんだね、ルリ! とっても似合ってるよ」


 ディランは私の洋服に気がついてまず褒めてくれた。お世辞かもしれないけれど、待ち合わせてすぐ女性の格好を褒めるとは、なんとできた彼氏なんでしょう!


「ありがと」

「はい、これ!」


 ディランは手に持っていた箱を私に手渡してくれた。あ、忘れてたけどこれはまさか!


「お酒持ってきたよ」

「やったー!!!」


 どぎまぎしていたのも忘れて私は飛びついた。「開けていい?」と聞いてから箱を開くと、そこには瓶に入った液体が。お酒は赤い色をしていた。


「これは果実酒的な感じかな?」

「大正解! ルリの世界にもあるの?」

「うん、あるよ」


 私は中身をしげしげと眺める。向こうの景色が透き通って見えるくらいの透明度。赤ワインというよりはカシスリキュール的な感じだろうか?


「飲むの楽しみだ……」


 ヨダレが出そう。だけど、流石に初デート前に飲むわけにはいきません! ええ、我慢しますとも!


「早めに帰ってきて一緒に飲もうか?」

「え、ディランも一緒に飲む!?」

「うん、たまにはいいかなって」


 ディランは前にお酒は飲まないと言っていた。私に合わせてそう言ってくれたのかもしれないけれど、一緒に飲めるのは私としても嬉しいことだ。


「じゃあ一時間位早く戻ってこようか」

「そうしよう」


 私達はそう確認する。デートは6時間だから、余るほど時間があるわけではない。


「それじゃあ行こうか」

「うん」


 早速一緒に家を出た。ちなみに、家を出てすぐに手を繋がれて、嬉し恥ずかし初デートのスタートです!




 電車で30分かけて浅草へ。今日は休日だし、この前と違って車内には余裕がある。ディランにとっては前回乗った満員電車と別物に見えるようで、流れる景色を目を大きく見開いて見ていた。


「は、速い……!」


 先頭車両に乗ったので、ディランは運転手さんの後ろで食い入るように見つめている。まるで、初めて電車に乗った子供のような無邪気さだ。


「本当に人が操縦しているんだな」


 ディランは乗り換え駅に着くまでずっとそうして感心していた。ちゃんとした電車の姿を見せられてよかった。


 いよいよ浅草に着くと、ものすごい人だ。浅草寺の雷門の前は車道にはみ出てしまうのではと思うくらいの人、人、人! 外国人観光客が多いらしく、ディランが「うわぁー!」と、叫んでいても全然浮いていないので、ホッとする。


「これは儀式か何かなの!? こんなに大きくて赤いもの!」


 ディランがちょうちんを指しながら尋ねてくる。


「儀式じゃなくてオブジェ的な感じかなぁ。ここはお寺って言って、一応宗教施設なんだよ」

「宗教施設?」


 私が答えるとディランは目を丸くする。


「こんなに人がたくさんいるなんて、信心深いんだな」

「あーえーっと、みんながみんな信じてるわけじゃなくて、宗教施設なんだけど観光スポットにもなっているというか」

「へぇー」


 ディランは立ち止まって雷門と書かれたちょうちんの横にある風神雷神像に目を奪われている。


「ってことは、これは神の彫像?」

「まぁそうだね」

「こんなに怖い顔をした神、初めて見たよ……まるで睨まれているようだ」


 今まで私は雷門にある仏像になんて注目したことがなかったから、新鮮な反応だ。ディランは風神雷神像の睨みを真似して見せて、それがなかなか似ていたので笑いが止まらなくなってしまった。


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