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21話

「そういえばさぁ、景子。東京で外国人が行って楽しい定番観光スポットと言えばどこだと思う?」


 高達さんの話題も落ち着いたところで、私は目下の悩み事を相談してみる。ディランとのデートのことだ。スマホで「東京 デート」と検索して「東京でおすすめのデートスポット10選!」などというページをいくつも見ているものの、どこがいいか決めきれない。


「何、瑠璃って外国人の知り合いでもいるわけ?」

「うん、まぁねぇ」


 素直に彼氏だと言えばいいのだけど、何となく恥ずかしくてはぐらかしてしまう。


「東京の有名どころと言えば浅草なんじゃん?」

「あー、浅草寺だよね」

「そうそう。あの赤ちょうちんの前で写真撮るの! よくテレビで見るよね。それか、鎌倉とか? やっぱ寺が珍しいんでしょ」


 景子は深く聞かずいろいろと提案してくれる。確かに鎌倉も魅力的だが、ちょっと遠いのが不安要素だ。前回は二時間の滞在だったので、そのくらいだと考えると行って帰ってくるだけで終わってしまう。


「浅草いいかもなぁ」

「何の話?」


 突然低い声で割り込まれて見上げると、そこには笑顔で立っている高達さんがいた。


「あ……」

「うわ」


 景子はわずかに頬を赤らめて口を噤んだが、私は嫌そうな顔をしてしまった。そんな反応をする私にお構い無しで高達さんは「俺も、いい?」と、聞きながら答えも聞かずに椅子を引いている。


「喜多川さん浅草行くの?」

「あ、いや、瑠璃が外国人を案内するらしいんです」

「へぇ、外国人、ねぇ」


 あっさりと答えた景子の言葉を聞いて高達さんが目を細めた。これ、絶対デートだってばれてるパターンだね!?


「浅草いいね。近くにスカイツリーもあるし」

「スカイツリー、ですか」

「意外と浅草から近いんだよ。歩いて2、30分くらい。隅田川も越えるし、雰囲気いいよ」

「……そうですか」


 スカイツリーと浅草がそんなに近いとは思わなかった。確かに東京を一望できるスカイツリーだったらディランも喜ぶかも?


「浅草だけだと浅草寺か花やしきになると思うけど、それだと一日潰れないからさ。ちょっと足を伸ばして築地で海鮮丼を食べるっていう手もあるけど、生魚が苦手っていう外国人も多いみたいだからね。それに、スカイツリーの方がデートっぽいかな。水族館もあるし買い物もできるよ」

「え、デート?」

「だ、誰もデートだとは言ってませんから!」


 景子にも食いつかれて、私は慌てて否定した。だけど、そうか、スカイツリー。時間によってはありかも。


「どうもありがとうございます。それで、高達さんは何のご用ですか?」

「ああ、うん。喜多川さんを飲みに誘いに」

「え、えぇ!?」


 強引に話題を逸してみると、高達さんがさらっと景子を誘った。お、早速ですか。手が早いですなぁ。


「明日の夜とか、どう?」

「あ、はい……空いてます」


 景子の乙女モードが加速していて、見ているこちらが恥ずかしいくらいだ。見てはいけないものを見ているような。


「じゃあ駅で待ち合わせしよう。それじゃあお邪魔しました」


 高達さんはそれだけ言うと去っていった。


「はぁ……急すぎる」


 そう息を吐き出す景子は言葉に反して嬉しそうだ。私は言っても無駄だろうと思いながら、


「気をつけてね。嫌だと思ったら逃げてくるんだよ」


 と、忠告しておいた。それにしても高達さん、前回の飲みから期間を空けないのも、さりげなく金曜夜に誘いを入れてくるのも抜け目ない。三連休前だし景子が無事だといいのだけど、と叶いそうもない願いを心の中で唱えた。




『ルリ』


 その日の夜。ディランは一段と機嫌が良さそうだ。いつもと同じ笑顔なのだけど、見えない尻尾が左右に振られているような、そんなウキウキ感を感じ取った。


「何かいいことあった?」

『あ、わかる?』


 ディランはパァっとさらに顔を明るくさせる。


『あのね、ルリの世界に行くための魔法陣の改良が成功しそうなんだ。一つ気がついたことがあってさ、これから描き直すんだけどね』

「……つまり?」

『ルリといられる時間が長くなりそうってこと!』

「! 本当に!」


 それは私にとっても朗報だった。ディランはコクコクと何度も頷く。


『ちょっと時間がかかるから、行けるのは3日後になっちゃいそうなんだけど、その日は長い時間いられそう!』

「長いっていうと、どれくらい?」

『俺の計算だと6時間くらい!』

「おおー!」


 デートをするには少し物足りない気がするけれど、前回の2時間から大幅に伸びたことを思うとすごいことだし、近場なら十分に回れる時間がある。浅草も行けそうだ。


『しかも、魔石を大量に持っていく必要もなさそう!』

「おおおー!」


 それも朗報だ。前回、ディランのジャケットの裏に大量に付けられていた魔石、抱きしめられる度に邪魔だなぁって思っていたから。


『楽しみにしててね』

「うん!」


 言われなくても楽しみになってきた。今はこうして二人で向き合ってはいるけれど夢の中では触れることができないので、顔を見る度に寂しい思いにもなるし。恥ずかしいけれどちょっと甘えたい気持ちが芽生えているみたいだ。


「そうそう、質問なんだけど」

『うん』

「ディランの世界って観光スポットってあるの?」

『観光かぁ』


 ディランは答えを探すように視線を彷徨わせる。


『女性に人気なのは庭園かな? 立派な庭園はいつも混んでいるみたいだし、王族の私有地が年に一度解放されると遠くから見に行く人もいるみたいだから』

「へー、花が綺麗なんだね」


 それじゃあデートに公園はなしだな、ふむふむ。


『あとは王都にいろんな店が集中してるから、女性は買い物するのも楽しいみたいだよ』

「へー、お店かぁ」


 洋服のお店とかだろうか? ファンタジーの世界の洋服といえば……ドレスとか? そこでも私はウィンドウショッピングになりそうだ。


 せっかくだからデートは日本でしかできないことをしてほしいので、買い物もなしかなぁ。物はディランの国とは違うものが多いだろうけど、同じ買い物ジャンルだし。


 そう考えるとますます浅草スカイツリー辺りは良さそうだ。高達さんの意見を採用するのも癪な気がするが、ディランに楽しんでもらえることが一番。もうちょっとリサーチして最終的に決めようと思う。


 とにかく、ヒントがもらえてよかった。私はディランにお礼を言った。

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