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20話

 「次は彼氏の写真見せてね」と言う高達さんと別れ、今度はナンパされることもなく私は無事に家に帰ってきた。すぐにシャワーを浴びてベッドに入る。


 今までだったらダラダラとテレビを見て時間を過ごしていたことを考えると、随分と健康的な生活だ。その理由は早くディランに会いたいからなんだけど、それを素直に認めてしまうのは恥ずかしいお年頃なので、考えないようにして眠りにつく。


『ルリ』


 夢の中でディランは変わらぬ笑顔で迎えてくれた。家に帰るよりもホッとするくらい、私にとってこの時間は大切なものになっている。


「今日ね、昨日言ってた人と飲みに行ってきたよ」

『もう!? 早いね!?』


 ディランは目を丸くした。どうやら覗き見られてはいなかった様子。


『どうだった?』

「うん、まぁ見守ろうかと思ったよ。二人のこと」

『そっかぁ、上手くいくといいね』


 本心からそう思っているような屈託のない笑顔を見せる。もし景子が傷つけられたら高達さんの社会的地位を奪おうと考えている私が恥ずかしいくらいの純粋さだ。


『今日はその男のことを聞いてもいい?』


 笑顔のディランにそう尋ねられた。


「あ、うん。いいよ」

『同じ仕事してる人なんだっけ?』

「そうだよ」

『普段からルリとはよく話すの?』

「いや、そんなにかなぁ。仕事で関わることも少ないし」

『同じ仕事してるのに?』

「同じ職場ではあるけど、チームは違うんだよね。フロアは一緒だけど」


 うちの会社は10人程度のチームで別れて仕事をしている。私と高達さんは営業さんが獲得してきた単発の新規案件を請け負う事業部だけど、別のチームなので案件が被ることがなく、関わりはほとんどない。


「ちなみに、友達の景子は別の事業部なんだ」


 景子の事業部は既存取引先を担当している。大きな会社が多いので私達とは違う苦労があるみたい。いつも愚痴を聞いているのでよく知っている。


『たくさん人がいるんだね』

「んー、まぁたしかに同じ仕事をしてる会社の中だと大きな方かな?」


 だからこそ、高達さんも転職するつもりは今のところないのだろう。他の社員さんも、転職する人は別の業界へ行く人が多い。


『それじゃあ、その男とルリは何で話すようになったの?』

「随分気になってるんだね!?」


 さっきから妙に高達さんに食いついている。いろいろと話しを聞いてもらっていたから気になっているのだろうか。


「一応同じ事業部だから、会社の飲み会とかは一緒なんだよね。そこで時々話してたからかな」

『ふーん。女好きだって言ってたもんね』

「いやぁ、私のことは女と思ってないよ、あの人。美人が好みみたいだから。まぁ、おじさんと話すよりはましだと思われてたのかもね」

『ルリは美人だよ』


 ディランは私の思いもしなかったところで、真面目な怖い顔で怒ってくれている。そんなこと言ってくれるのはディランだけだ。


『早くその男とケイコさんが恋人になってくれるといいけど。やっぱりちょっと心配』


 なぜだか妙に肩入れしている。だけど、私の友達のことを一緒に心配してくれるのは嬉しいことだ。


「また何か進展があったら報告するね」

『ぜひそうして! ルリは鈍いみたいだから心配だけど』

「大丈夫! ちゃんと景子本人から進捗聞くから!」

『そういう意味じゃ……まぁいいか』


 ディランは困ったように笑った。大丈夫、ちゃんと進捗は伝えるからね!


「じゃあ次は私の番ね! ディランって休みの日何してるの?」


 今週末に控えるディランとの初デートのプランを考えなくてはと思っている。そのために、ディランの趣向を少しでも聞いておきたかった。


『うーん、休みって考えがあんまりないんだよねぇ』

「……え? ほとんど休まないってこと?」

『別にいつ休んでもいいからさ、依頼さえ終われば。だから、風邪引いたりしたら流石に休むけど、そうじゃなかったらつい研究を……』

「なんて……なんてこと!」


 年間休日ほぼ0ってこと!? 恐ろしいブラックだ! だけど、ディランはそれを望んでやっていると言う。休みが生き甲斐の私には考えられないことだ。


「週末は思いっきり遊ぼうね!」

『ルリのところへ行った時? うん、楽しみにしてるよ』


 ディランの久しぶりの休日。何をしようか、これは責任重大だ!




「昨日、高達さんと飲みに行ってきたよ」


 翌日のお昼。私は昨夜のことを景子に報告する。


「彼女いないって」

「そっかー」


 景子は安堵したように机に突っ伏した。私が思っている以上に、景子は高達さんにのめり込んでいるのかも。たった一日で人って心が動くんだ。


「景子がその気なんだったら、二人で飲みに行ってきたら? 思ったよりも危ない人には見えなかったから。それに、何か変なことしたら、私が社内に酷い噂流すって宣言しといたから!」

「瑠璃……あんた、意外と面倒見いいよね」


 いつものクールさはなく、どこか情けない顔で景子は笑った。恋をした景子はこんな感じなんだな。


「ありがと。今はまだわかんないけど、ちゃんと考えてみる」

「何かあったら言ってね!」

「うん」


 景子は可愛らしいところもある女性だ。ちゃんと幸せになってほしいなと思う。ディランも心配していたし!


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