忍の国のものがたり
闇夜の森を全力で走る、走る、走る。
生い茂る木々の枝の上をまるで往来を走るがごとくただひたすらに走る。
黒装束の二人の男の名は八雲と柊。
肩には特殊な形状をした短い刀剣を携え、懐にも複数の武具を潜ませている。
二人の息づかいは次第に荒々しくなり、体力の限界を物語っていた。
なにせ二人はすでに70里を超えて走り続けていたのだ。
「だめじゃ、解!」
八雲は韋駄天の術を解き、自身の姿が丁度隠れる木の枝の影に身を潜めた。
「解!」
柊も韋駄天の術を解き、同じ枝に紛れ込んだ。
八雲は息を切らしながら、つぶやいた。
「すまぬ、ワシの忍力はすでに限界だ。韋駄天の術はこの老体には一番こたえる。」
柊はあきれ顔で八雲の顏を見つめた。
「師匠、あれが彩の国の陰謀だったとすると我々は敵国のど真ん中にいる、ということになりまするぞ。せめて柏木村のある、国境までは共に行きましょうぞ。」
「そうしたいところだがな、柊。既に追っ手は1里のところまで追いついてきておるぞ。強い気を感じる。相当の手だれと見て良いだろう。一つ、二つ、三つ。三人か。いや、それともう一匹。人ならざる者も追ってきておるな。この感じは…そうか、犬だな。忍犬まで出てきているとなると、これは相当きな臭いことになっておるな。」
(続く)