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ばかって言う君が好き。  作者: 下駄
oneyear
8/38

Nov


ピンポーン

音と共に降りてきた、数人乗れるほどのエレベーター。

中に入って、6階のボタンを押す。



……緊張する。


私は今日彼の住むマンションに遊びに来た。

10階建てのマンション、茶色のレンガ模様なおしゃれな外装。

私のアパートからそれほど遠くなくて、2駅ほどのところにある。


今まで何度か彼の家にお邪魔させてもらったことはあるのだけれど、


彼の家が”デート場所”というのは初めての事だった。


ピンポーン

他の階にとまることなく、6階に到着。

エレベーターを出て、すぐ右に曲がる。

1つ、2つ、他の住人さんの部屋の前を通り抜ける。


3つ目を過ぎて、彼の部屋。

一番端っこの彼の部屋。



インターホンを押す。


「今開けるね。」

「うん。」


到着する前連絡しておいたからか、名前を言わずとも私だと分かったらしい。

ばたばたと彼の足音がかすかに聞こえてくる。


彼を待ちながらじっとその数秒が待っていられなくて、塀から顔をのぞかせ下の公園をのぞく。

ブランコと滑り台、それだけしかない本当小さな公園。



ガチャ


「いらっしゃい。」


「あ、お邪魔します。」


「何?また公園?」


すぐに振り向いたのにバレてしまったみたいで、彼はおどけた口調でそう言った。


「子供がね、ブランコ漕いでて。

直人とああやって、前ブランコこぎながらお話したなって。」


履いてきた黒のパンプスを隅にそろえる。

彼は相変わらずのスニーカー以外、玄関に出していなかった。


「倫子は公園好きだからな。」

 子供だなぁと私をからかいながら、


「もー」とすねた私を

「はいはい。」とさとすのだけれど、


彼はやっぱり優しい人で、


「また行こうね。」と笑った。





「どうぞ。」

リビングのドアを開けてくれた彼に、「座って」とすすめられた私は、黒のローテーブルの左前に座った。

私の家で彼といるときに座る、位置関係と一緒。



「お茶でいい?」


「うん。ありがとう。」

振り返れば彼の顔が見える、対面キッチン。


用意してくれている彼の顔を見て、優しいなぁと思ってしまう。


私の視線に気が付いたのか、見るなとばかりに彼がべーと舌を出す。

私もむっとしてべーと舌を出す。


「ぶさいく。」

「ひどい!」

いつものやり取りに、私は緊張が少しほぐれる。



「あ、映画見ない?」

用意してくれたお茶をテーブルに置きながら、彼はテレビ台から1本のDVDを取り出した。


「なんて奴?」

「ロボットが変身するやつ。」


「あ!好き!見よう!!」

「好きだと思った。」

 彼がデッキにディスクを入れる。

でかでかとタイトルの登場。


一瞬、真っ暗な画面がうつり、彼と私の姿がテレビに映される。


ローテーブルの前、同じ辺に座っているのに、隅と隅の感じ。


もうちょっと近くいってもいいかな、

なんて思ってしまう。


彼をちらっと見る。


「ん?」

気づいた彼が私を見返す。


「何?よっかかる?」

本日何回目?と聞きたくなるような彼のおどけた口調。


「もーうるさいなあ。」


「はいはい…」

 そういうと思ってましたとばかりの口ぶり。


「ってえ?」

彼が珍しくひょんな声をだす。



「もう、映画が聞こえない!

 しー!」


また一瞬画面が真っ暗になる。

私と彼が画面に映し出される。


彼の肩に頭をあずけた私。


彼をちらっとのぞく。

頭を抱えた彼。



「……一本とられました。」



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