Nov
「チケット1枚ください。」
「かしこまりました、1000円になります。」
お金を出して、チケットを1枚受け取る。
今日はレディースデー。
私は仕事帰りに家に帰らず、そのまま映画館へ足を運んだ。
9時30分からはじまるそれは外国の恋愛映画で、
30歳の女性の主人公が同い年の彼氏に結婚を求めるという内容。
ドロドロな恋愛ものではなく、
コミカルで笑いも一緒に楽しめると近頃評判になっていた。
上映5分前になり、私は受付を通ってシアターに向かった。
薄暗い通路を抜けて、3番シアターに入る。
レディースデーだからかいつもの夜よりは多いけれども、平日だからやっぱり少ない。
階段をずっと上って、私の席は一番後ろの席の奥から3番目。
スクリーンが少し斜めになってしまうが、同い年ぐらいの女性に囲まれていて、
比較的落ち着いて見れそうだった。
映画が始まる前に流れてくる広告。
マナーモードにしてくださいというテロップを見て、私は携帯の電源を落とし忘れていたことを思い出す。
携帯を鞄から取り出すと、携帯の通知のランプがピカピカと光っていた。
ごめん、3月の結婚式出席するの難しいかも……
その辺、出張多いらしくて。。
返事を送らないまま、私は電源を落とした。
電源早めに切っておけばよかった。
せっかくの映画を楽しむ気持ちが台無しじゃない。
映画が始まった。
コミカルで笑える場面がたくさんあった。
場内のみんなで笑った。
それでも私はたくさん泣いた。
なぜだか分からないけど、笑いながらたくさん泣いた。
涙がとまらなかった。
エンドロール。
女優さんや俳優さんの名前が、次々と真っ暗な画面に白い文字で流れていく。
他のお客さんがちらほら帰るのが見える。
「私あなたとだから恋愛してる。
あなたとだから結婚したい。」
映画の主人公が彼氏に言っていた。
近くで新しい出会いを探したほうが楽なのかもしれない、
そう思っていても
どんなに悲しくてもどんなにつらくても
遠距離恋愛やめたいと思っても、やっぱり彼に別れを告げられない。
そんな私だから、
彼女は、まさしく私だと思って、
そのセリフを何度も何度も頭の中で繰り返して繰り返して。
でも、彼は……?
彼もそう思ってくれているのだろうか?
映画の中の主人公は、そのセリフを彼に直接言っていた。
彼から俺もだよと言われる自信はあったのだろうか。
彼女とちがって、
今の私には
愛してくれているという自信も、
思いを伝えることも、聞く勇気も、もうなくて。
誰もいなくなったシアターの中、もう少しだけ私はそこで泣いた。




