Sept
1年前は、
こんな時間でも頑張れば会える距離だったのに。
電車がパアーンと音をならして、私の横を通り過ぎる。
相変わらずのいつもの道。
夜ご飯を一人で食べ終わって、夜風に当たりたくなって。
夜の10時、私は当てもなくただ歩く。
ごめんね、、寂しい
朝そう送ってしまった彼へのメッセージ。
ごめんな、、今度は俺が忙しくなっちゃった。
連絡も遅れるかも。
お昼過ぎて送られてきたメッセージ。
「分かってるよ。」
私はつぶやく。
この時間のこの道は車の音が遠くから聞こえるだけだから、
声がちょっと響いてしまう。
でもどうでもいい。
誰かに聞かれてしまっててもいいの、もうとにかくいろいろ。
そんな風に投げやりになっているせいかな、
忙しいって言われると分かって、朝寂しいと送ってしまったのは。
私が忙しかった約1ヶ月、電話もままならなかった。
LINEも少なくなってしまっていた。
そんなタイミングで、
彼は少し仕事が上手くいかなかったらしく、落ち込んでいたようだった。
当然私は彼を元気づけたくて。
頼ってきてくれるなら、支えたいわけで。
どうにかやりくりし、彼との時間も確保していた。
そんなこんなでやっと私が落ち着いた頃、
今度は彼が新しい仕事を任されることになり、これからもっと忙しくなっていくみたいだった。
彼が上手くいくことは嬉しいことなのだけれど…
なんだかすれ違っているみたいで、もやもやしてしまう。
1年前のこの時期は、あなたと笑って、
電話して、仕事終わり会ってたのに……
別にどこかに連れていってほしいとか、そういうんじゃない。
何もいらない、何も言わなくてもいい、
ただ君のそばにいたい、会いたい。
それだけなのに、それもできない虚しさが心にぽつん。
そんな風に彼も考えてくれてるのかなと考えながら、
彼は忙しいからそんなことはないだろうと、なんだかまたまたぽつん。
歩くのも面倒になって、空き地の塀に腰かける。
ズボンのポケットから携帯を取り出して、開くトーク画面。
私が朝送ったメッセージに返事をくれたのは、送ってから約5時間後。
最初は分単位で返事しあってたのに、今ではすっかり時間単位。
返す気になれなくて、ほっておいたLINE、彼よりもかなり時間をあけてメッセージを今送る。
お疲れさま。
連絡無理しなくていいからね。私もがんばります。
「しらじらしいなあ~」
本心とは正反対の言葉に、私はふふっと笑ってしまう。
トーク画面をずっと見返していく。
お互い余裕があった頃の、彼とのやりとりとか。
大好きだよ。
俺も大好き。
ばかみたいに送りあってる、その言葉。
直人はちゃんと毎回、
「俺も」じゃなくて
「俺も好きだよ」って言ってくれてうれしかったっけ。
「はあ。」
携帯を少し見るのをやめて、空を見上げる。
生憎のくもり。星はすっぽり雲の中。
空は繋がってるから、
どっかで見たそんな言葉。
繋がってるけどさ、つながってるけど、
つながってるけど、だから、えっと、えっと。
「帰るか。」
考えるのも嫌になって、塀から降りて来た道を戻る。
携帯ももうしまって、音楽でも聴こう。
彼の事ちょっと忘れよう。
そう思って、トーク画面を閉じようとする。
「あ。」
でも、変なところに当たって、一気にまた履歴をさかのぼらせてしまう。
9月12日
そう示された日付。
ちょうど1年前。
今の私が羨ましくて仕方がないころの私だった。
いいなあ、私いいなあ。
おかしな話だけれど、
でも、そう思ってるのは事実で。
でもそこで、
「……なんだあ。」
私は気づいてしまう。
9月12日から一気に、
日付は、
19日。
ごめん、忙しいわあ。
そんな彼のメッセージに
お疲れさま、おかえり。
気にしないで。
1年前の私もそう送ってた。
ガタンガタン―――、
通り過ぎた電車がパアーンと音をならした。




